【第2部】見えない選択を見抜く力:わかりにくいトレードオフを察知する“構造思考”の技術

目次

◆ なぜ人は“わかりにくいトレードオフ”に気づけないのか?

トレードオフの本質は「一方を立てれば、もう一方が立たない」構造にある。
しかし、現場には一見そのように見えない“わかりにくいトレードオフ”が数多く潜んでいる。なぜ、気づけないのか。その理由は主に以下の3つに集約される。

  • 遅れて表面化する:結果がすぐに出ない。影響が“ジワジワ”くる。
  • 数字に出ない:KPIや会議資料には現れず、現場感覚に依存する。
  • 慣れてしまっている:状況を当たり前と受け入れてしまい、見直しの対象にならない。

気づけないのは“鈍感だから”ではない。構造が複雑であり、言語化されていないだけだ。


◆ 気づきにくいトレードオフの典型パターン

では、どのような場面に“わかりにくいトレードオフ”が潜んでいるのか。現場でよく見られるパターンは以下のとおりだ。

  • 育成 vs 即戦力
     新人を育てる時間が取れず、即戦力ばかりを求める現場。しかし、結果的に属人化が進み、人材は育たない。
  • 改善活動 vs 通常業務
     改善提案や仕組みづくりの時間が取れない。目の前の業務に追われることで、根本的な非効率が放置される。
  • 成果 vs 心理的安全
     成果重視の文化が、萎縮や忖度を生み、挑戦や相談をしづらい空気をつくる。

こうしたトレードオフは、「表には出ない摩耗」「じわじわ広がる疲弊」というかたちで現れる。


◆ “危機察知能力”がある人は何を見ているか?

“気が利く”“先回りできる”と評価される人は、何が違うのか?
その答えは、「見えていないリスク」「言語化されていない構造」を察知する感度にある。

彼らは、次のようなフレームで現場を観察している。

  • リスクマネジメントの発想
     現象の背後にある潜在的な損失を想像し、未然に防ぐ。
  • SWOT分析の視点
     現場の強み・弱み、外部の機会・脅威を見渡し、どこにギャップやズレが生じるかを仮説立てる。

「判断力」よりも「察知する感度」の差が、行動の差を生む。


◆ 気づく技術と育て方:トレードオフを言語化・構造化する

感度の差は、センスではない。構造を見抜き、言語化する技術である。

  • 対立構造を描く:現象の裏にある「両立しない価値」を明確にする
     (例:効率 vs 丁寧さ、早さ vs 学び)
  • 影響範囲を把握する:目の前の選択が誰に、どこに波及するかを俯瞰する
     (例:人員配置の変更が、教育機会・負荷分散・顧客満足に与える影響)
  • 関係者の立場を繋ぐ:ステークホルダーの利害や期待を“橋渡し”する
     (例:現場の声と経営目線を翻訳する)

このように、見えにくい関係性を構造として描ける力が、「なんとなく違和感がある」状態を「だからこうすべきだ」に変える。


◆ おわりに:「気が利く」の裏には構造を見る力がある

「気が利く」「センスがいい」と言われる人の多くは、構造の言語化と調整を無意識に行っている。
これは天性の勘ではなく、観察・整理・仮説化・対話を通じて鍛えられる“思考技術”である。

つまり、“気づき”は才能ではない。
誰でも鍛えることができるスキルであり、“なんとなく”に頼らず、“なるほど”と説明できるトレードオフ思考が、それを可能にする。

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