このガイドは、ゼロから知識を積み上げるためのものではありません。
むしろ、すでにあなたが実務で積み重ねてきた経験――
現場での判断や対応、プロジェクトの中で「こうすべきだ」と感じてきたこと――
それらを言葉として再確認し、体系として整理するためのものです。
技術士(総監)の択一試験には、多くのキーワードが並びます。
ですが、実際には「知らなかったこと」よりも、「言葉としては使ってこなかったけれど、やってきたこと」が大半ではないでしょうか。
たとえば…
- 「利益は出ているのに、今使えるお金がない」
- 「人は足りているはずなのに、なぜか回らない」
- 「リスクは共有したはずなのに、意識がばらばらになる」
そんな現場の違和感に、名前を与えるのがキーワードであり、
それを「試験の問題でどう聞いてくるか」を合わせて確認するのがこのガイドです。
構成はすべて共通です:
- 背景にある問い(実務でよくある違和感からスタート)
- キーワードで整理する(「あの感覚」は、こういう言葉で説明される)
- 実際の問われ方(試験でどう聞かれるか)
- 試験での留意点(間違えやすいパターン・迷いやすいペア)
つまりこのシリーズは、
知識を“覚える”というより、「自分の中にあることを、言語と構造で納得する」ための読み物です。
現場の実感とキーワードをつなぐ視点で、これから一つずつ見ていきましょう。
- 令和6年度_背景から学ぶ「総監択一問題・キーワードガイド」
- 令和5年度_背景から学ぶ「総監択一問題・キーワードガイド」
- 令和4年度_背景から学ぶ「総監択一問題・キーワードガイド」
- 令和3年度_背景から学ぶ「総監択一問題・キーワードガイド」
- 令和2年度_背景から学ぶ「総監択一問題・キーワードガイド」
経済性管理
I-1-1:PQCDSME(生産管理の評価尺度)
背景にある問い
「最近、現場の品質は上がっているが、納期遅れが目立つ」
「設備稼働率も悪くないはずなのに、コストが下がらない」
──こうした職場でのモヤモヤとした感覚は、管理尺度がバラバラであったり、そもそも共通言語としての評価軸が曖昧であることに起因します。
たとえば、現場の改善活動では「品質」や「コスト」だけでなく、「安全」「モラル」「環境」などの指標も含めて、バランスよく全体最適を図る視点が欠かせません。
こうした視点を共有するために、総合的な評価軸として使われるのが PQCDSME です。
「工程表どおりに進んでいても、どこか現場の雰囲気が悪い」「トラブルはないのに、顧客満足が低い」といった状況に直面したとき、この7つの評価尺度で現場を見ることで、見落としていた課題が浮かび上がってくることがあります。
キーワードで整理する
このような複数の視点を体系化したのが、PQCDSMEです。これは、生産現場における代表的な評価軸を7つの英単語の頭文字で示したもので、以下のように構成されます。
| 項目 | 意味 | 管理指標の例 |
|---|---|---|
| P | Productivity(生産性) | 生産数・作業時間・設備稼働率 |
| Q | Quality(品質) | 不良率・工程内不良・顧客クレーム数 |
| C | Cost(コスト) | 材料費・加工費・原価率 |
| D | Delivery(納期) | 納期遵守率・生産リードタイム |
| S | Safety(安全) | 労働災害件数・ヒヤリハット報告数 |
| M | Morale(意欲・士気) | 離職率・提案件数・職場満足度 |
| E | Environment(環境) | 廃棄物量・エネルギー消費量 |
それぞれの要素は独立しているように見えて、実は相互にトレードオフの関係にもあります(例:生産性向上が安全性低下を招かないか)。このようなバランスの視点が、技術管理において重要とされています。
実際の問われ方
本問では、PQCDSMEの各要素とその意味、さらに代表的な管理指標の組合せを選ばせる形式となっています。
具体的には以下のような出題構造です:
- 「頭文字」→「意味」→「管理指標」という3点セットで構成された選択肢から、適切な組合せを選ぶ
- 選択肢には意図的に似た語(例:収益性と生産性、保全性と意欲)が混在し、言葉の意味の取り違えを狙ったものとなっています
試験での留意点
- **Productivity(P)とProfitability(収益性)**は混同しやすいため注意が必要です。Productivityは「生産効率」に関する指標であり、利益率とは異なります。
- **Morale(M)**は「保全性(Maintainability)」ではなく「意欲・士気」である点がひっかけポイントです。
- **Efficiency(効率)とProductivity(生産性)**も混同しがちですが、PQCDSMEの中のEはEnvironment(環境)です。
- **リードタイムはDelivery(納期)**に関わる指標であり、Qualityではないことも出題されやすい誤りです。
このように、単語の意味と評価指標を正確に対応させる力が求められます。
I-1-2:製品開発における設計・評価プロセスの用語整理
背景にある問い
「開発の終盤で仕様変更が入り、納期が1カ月遅れた」
「量産段階で初めて製造現場から設計上の矛盾を指摘された」
「部門間の調整不足で何度も設計がやり直しになった」
──こうした開発現場の混乱は、実は設計初期の検討不足やプロセス設計の不備が原因であることが少なくありません。
製品の市場投入までのスピードと品質を同時に高めるには、単なる個別対応ではなく、開発全体の進め方そのものを見直す必要があります。
「どこで、誰が、何を、どのように検討するか」という視点で開発プロセスを俯瞰する力が求められます。
開発工程を構造的に捉え、適切な用語と概念を使って改善活動を進めることは、品質・納期・コストの全体最適につながるといえます。
キーワードで整理する
このような開発プロセスの課題に対応する考え方として、以下のキーワードが活用されます。
- フロントローディング
設計の初期段階で、後工程に影響を及ぼす要因を先取りし、早期に問題解決を図る考え方。結果として手戻りの低減や品質向上、開発期間短縮が期待できます。 - デザインイン
顧客ニーズや技術要件を製品設計へ反映するため、部品メーカーや取引先の技術者を開発初期から巻き込み、設計に統合する活動です。単なる「デザイン思考」や「企画段階の検討」とは異なります。 - デザインレビュー(DR)
設計・開発の各フェーズで実施される評価活動で、仕様妥当性や設計の完成度を確認します。「市場投入直前」に行うものではなく、節目節目で繰り返されるのが特徴です。 - コンカレントエンジニアリング
設計・製造・調達・品質管理などの複数部門が、並行して設計に参画する手法。製品の工程ではなく、部門間の工程を重ねて時間を短縮します。 - VE(Value Engineering)
製品の機能に対する価値を向上させる手法。価値=機能÷コストという考え方に基づき、不要なコストを削減しつつ機能維持または向上を目指します。「限界利益÷時間」ではありません。
実際の問われ方
本問では、製品開発に関わる用語の定義と実際の活動内容について、最も適切なものを選ばせる形式です。
出題の視点は以下の通りです:
- 用語と定義の整合性を問う(実際の活動や概念の誤解を誘う記述に注意)
- 各用語の「タイミング」や「範囲」への理解がポイント
- キーワード同士の似た表現(例:フロントローディングとDR、VEと収益性)を正しく区別できるかを問う
試験での留意点
- デザインレビューは「製品完成後の検査」ではなく、「設計段階での審査」です。タイミングに注意してください。
- コンカレントエンジニアリングは「複数の製品」ではなく「複数部門・工程を並行する」ことが本質です。
- VEは「価値=限界利益÷時間」ではなく、「機能とコストのバランス」です。生産性指標と混同しないようにしてください。
- デザインインは「顧客ニーズの反映」ですが、主語は企画部門ではなく開発現場や技術連携が中心です。
選択肢は一見もっともらしく見える表現が多く、細部に紛れた誤解に気づけるかが重要なポイントです。
I-1-3:数理的・科学的手法の適用例と使い分け
背景にある問い
「勤務シフトを公平に割り当てたいが、希望者が偏ってしまう」
「アイデアはたくさん出たが、どこから手をつけるべきかがわからない」
「納期や費用を見積もったが、前提の不確実性に自信が持てない」
──管理業務を進めるうえで、こうした判断の難しさに直面する場面は少なくありません。
管理者は「経験則」に頼るだけでなく、複雑な現象や選択肢を構造的に捉え、比較・評価・最適化することが求められます。
そのときに支えとなるのが、数理的・科学的手法です。
ただし、それぞれの手法には得意な領域と限界があり、使いどころを誤ると逆効果となります。
大切なのは、「この課題に対してどの手法を使うのが適切か」を冷静に見極める視点です。
キーワードで整理する
複雑な状況を合理的に分析・整理するために、次のような手法が活用されます。
- 数理計画法(Operations Research)
限られた資源の中で目標(コスト最小化、効率最大化など)を達成するための最適解を導く方法。線形計画法、整数計画法などがあり、勤務シフト・在庫管理・生産計画などに応用されます。 - AHP(Analytic Hierarchy Process)
複数の評価項目に対して主観的な優先度を数値化し、意思決定を支援する手法。合意形成や代替案の評価などに適しますが、確率的な日数推定には不向きです。 - ブレインストーミング法
多様なアイデアを制約なしに自由に出すための発想法。アイデアの整理には使わず、発散型思考を促す場面に用います。 - 特性要因図
結果(特性)に対する原因(要因)を体系的に分類するための図解手法。因果関係というよりは、「何が影響していそうか」を見える化する整理法です。 - 連関図法
複雑に絡み合った事象や要因の因果関係を明確にするための分析手法。原因の深掘りや課題の構造分析に適しています。 - シミュレーション(離散型・連続型)
現実の仕組みをモデル化し、時間経過に伴う挙動を再現する方法。離散型はイベントベース(例:工場内の搬送、待ち行列)、連続型は微分方程式などを用いた連続変化(例:経済モデル、水位変動)に用いられます。
実際の問われ方
本問では、代表的な手法の使いどころと適用例の整合性が問われます。
出題の構造:
- 各選択肢は「手法名」と「その適用場面・効果」に関する記述
- 一見もっともらしい文脈でありながら、微妙に目的や効果がずれているものが含まれる
- 正確な使い方や、他の手法との区別ができているかが問われます
試験での留意点
- AHPと三点見積法を混同しないよう注意が必要です。三点見積法は「楽観・悲観・最頻値」による確率的な日数推定です。
- ブレインストーミングは「発散的思考の促進」であり、「分類・整理」にはKJ法などが用いられます。
- 特性要因図は「分類図」であり、因果関係の明示には適していません。因果を整理したいときは連関図法を使います。
- 離散型シミュレーションは「個別イベントベース」であり、経済モデルのような連続変化現象は対象外です。
正答肢だけでなく、**誤答肢の中にある“わずかなズレ”**を見抜けるかどうかが、得点の分かれ目です。
I-1-4:移動平均法と指数平滑法による需要予測
背景にある問い
「在庫が余って仕方ない」
「見込生産をしたが需要に追いつけなかった」
──需要予測の誤差が積み重なると、製造・在庫・人員・物流といったあらゆる工程に悪影響を及ぼします。
特に昨今の不安定な市場動向や短納期の要求の中では、直感や経験だけで将来を読むことに限界があります。
過去のデータを活かして、どのように将来の需要を見通すか。
季節変動や突発的な変化にどう対応するか。こうした課題に向き合うとき、数理的な予測手法の選択と理解がカギとなります。
キーワードで整理する
過去の時系列データを用いて、比較的シンプルに将来を見通す方法として以下の手法があります。
- 移動平均法
直近の一定期間のデータの平均値をとって予測に用いる方法。突発的な変動の影響を平準化できるが、傾向変動(トレンド)には追従しにくいという弱点があります。期間を長くすると変化の追従は鈍くなり、短くするとノイズの影響を受けやすくなります。 - 指数平滑法
最新の観測値に重みを置き、過去のデータに徐々に減衰する重みをかけて予測する方法。直近のデータに反応しやすく、加重移動平均法の一種と捉えることができます。平滑化係数(α)によって反応速度を調整できます。 - 季節調整(季節変動の除去)
移動平均を用いて、季節要因(周期的な変動)を取り除く処理に使われます。特定の時期に需要が増減する商品の予測などで有効です。
| 手法 | 特徴 | 向いているケース |
|---|---|---|
| 移動平均法 | 平準化に優れるが変化に弱い | 安定した需要が続く商品 |
| 指数平滑法 | 直近の変化に反応しやすい | 変化が頻繁な商品 |
| 季節調整 | 季節変動の除去 | 月別需要の比較など |
実際の問われ方
本問では、移動平均法・指数平滑法に関する説明文の正誤判定が求められています。
出題のポイント:
- 定義だけでなく、「使い方」「効果」「限界」といった実務に即した理解が必要
- 「どの条件下でどう変化するか」という因果関係を正しく捉えているかが問われます
- 特に誤った記述(②)は、直感的に逆のことが書かれている点に気づけるかどうかが鍵です
試験での留意点
- 移動平均法における「期間の長短」と反応速度の関係を逆に捉えないよう注意が必要です。
- 期間が短いほど早く反応する(=変化に敏感)
- 期間が長いほど反応が鈍くなる(=変化に鈍感) - 指数平滑法は「最新の値を強く反映する仕組み」であり、「古いデータはゼロになるわけではない」ことも押さえておくと混同を防げます。
- 季節変動の除去に移動平均が使われるという記述も、意外に知られていないが正確です。
選択肢のすべてがもっともらしく見える中で、「用語の定義+挙動の因果性」に対する確かな理解が求められます。
I-1-5:現在価値(NPV)と投資判断におけるリースと購入の比較
背景にある問い
「設備投資でリースにするか購入するか迷っている」
「初期費用は安く抑えられるが、トータルコストはどちらが得なのか分からない」
「長期的に見れば買い取りの方が安いかもしれないが、キャッシュフローが心配」
──企業の設備投資では、このような判断に直面する場面が頻繁にあります。
経理部や経営層からは「現在価値で比較して説明してほしい」と言われるものの、実務者にとっては、設置費や撤去費、リース料の支払タイミングなど多くの要素を整理しきれず、感覚的な判断に流されることもあります。
このような意思決定では、単純な「金額の合計」ではなく、「時間価値を考慮した費用評価」が求められます。
キーワードで整理する
このような場面で用いられるのが、**現在価値(Present Value, PV)**という考え方です。
- 現在価値(PV)
将来支払う(または受け取る)金額を、割引率を用いて現在の価値に換算する方法です。「お金の価値は時間とともに変化する」という考え方に基づきます。 - リース vs 買い取りの比較
購入は**初期費用+将来の売却価値(残存価額)を含めて比較する必要があります。一方、リースは定額支払い+付帯費用(設置費・撤去費)**を現在価値に換算して総額で比較します。 - 年金現価係数の活用
等額の支払いが続くリース料は、年金現価係数を使うことで計算が簡素化されます。
今回のような問題では、次のような基本構造で比較されます:
| 項目 | 発生時期 | 発生内容 | 現在価値での取り扱い |
|---|---|---|---|
| 購入費用 | 初年(即時) | 1000万円 | そのまま1000万円 |
| 売却収入 | 5年目末 | 100万円 | 100 ÷ (1 + r)^5 で現在価値化 |
| リース費用 | 毎年初 | X万円 × 5回 | 各年の頭に払う分を割引して合算 |
| 設置・撤去費 | 初年・5年末 | 50万円(設置)、20万円(撤去) | 同様に現在価値へ変換 |
実際の問われ方
本問は、数式の意味を理解しながら「リースと購入の現在価値が一致するリース額Xを求めよ」という応用型の設問です。
- 割引率と支払タイミングの違いを正確に整理する力が求められます。
- 細かな数式処理よりも、論理の組み立て方が理解できていれば選択肢から正解にたどり着けます。
構造は次のように表せます:
リース側の現在価値 = 50(設置) + 20/(1.1)^5(撤去) + X + X/(1.1) + ... + X/(1.1)^4
購入側の現在価値 = 1000 - 100/(1.1)^5
→ 両者を等式にして X を解く
試験での留意点
- 支払タイミング(初め or 末)により、割引計算の回数が異なる点に注意が必要です。特にリース料が「毎年の初めに支払う」場合、1年目の支払いは割引不要です。
- 「現在価値」の理解と「キャッシュフローのタイミング」に対する注意力が同時に問われます。
- 問題文に明記された「他の費用は無視」といった前提条件を読み落とさないことが得点のカギになります。
- 現在価値というと難解に思えますが、将来の金額を今の価値に直すというシンプルな発想を崩さずに読み進めると、複雑さは大幅に減少します。
この問題は、単なる計算問題ではなく、「費用比較をどのような考え方で行うべきか」という意思決定の視点が問われています。
I-1-6:原価計算と原価管理の役割と考え方
背景にある問い
「この製品、思ったより儲かっていなかった」
「価格を下げろと言われるが、どこを削るべきか分からない」
「新しい製造ラインを導入したけど、間接費が急増している」
──こうした現場の疑問は、コスト構造の見えにくさや、原価の正確な把握不足から生じます。
技術部門や設計部門では、製品の仕様や性能に意識が向きがちですが、事業としての持続性を考えるには「いくらで作れて、いくらで売れるのか」を常に意識することが欠かせません。
そこで重要となるのが、原価計算と原価管理の仕組みです。単に記録のためでなく、価格設定や利益計画、戦略立案にも密接に関わります。
キーワードで整理する
こうした経営判断や製造戦略の基盤となるのが、以下のような原価に関する考え方です。
- 原価計算
製品やサービスを生産するのにかかったコストを把握・分類・集計する会計手法。用途としては、財務諸表の作成(財務会計)だけでなく、販売価格の決定、製品ごとの採算管理、将来のコスト予測など多方面に活用されます。 - 原価計算の手順
原価は一般に「費目別→部門別→製品別」の順に段階的に集計されます。各費用の性格(材料費、人件費など)をまず分類し、それを部署に割り当て、最終的に製品へ配賦します。 - 活動基準原価計算(ABC)
間接費が多くを占める現代の製造業において、従来の単純な時間配賦では実態を反映できないとの問題意識から生まれた考え方。製品に直接関係する活動(例:受注処理、部品管理)を単位として、そこにかかるコストをもとに原価を算出します。 - マテリアルフローコスト会計(MFCA)
材料の流れと損失を「物量」と「金額」の両面から追跡し、廃棄やロス、リサイクル対象にかかるコストの見える化を図る会計手法。環境対応や資源効率化と結びつきます。 - 原価企画(Target Costing)
製品の設計・企画段階で、目標とする価格・利益から逆算して原価を設定し、それに合わせて仕様や製造方法を調整する活動。生産段階では原価維持や改善が中心となります。
実際の問われ方
本問では、原価に関する5つの手法・概念のうち、定義・目的・適用場面が正しいものを選ばせる形式です。
出題のポイント:
- 各用語の「目的」と「使われる場面(工程)」の整合性
- 定義が曖昧な用語を、具体例や対比を通じて理解できているか
- 知識を丸暗記ではなく、因果関係で整理できているか
特に②〜⑤の選択肢は、一部が正しくても手順や目的の順序が入れ替わっていたり、範囲が限定されていたりする点が誤りとして仕込まれています。
試験での留意点
- 原価企画は設計段階であり、生産段階では原価維持・原価改善に変わることに注意が必要です。
- **原価計算の順序(費目→部門→製品)**は頻出ポイントであり、「製品別→部門別」のような逆転に引っかからないよう整理しておくことが求められます。
- **ABC(活動基準原価計算)**は間接費の配賦に強みがあり、「直接作業時間」に基づく配賦とは目的が異なります。
- **MFCA(マテリアルフローコスト会計)**は廃棄・損失の可視化が主目的であり、「製品のコスト計算」が主眼ではありません。
この問題では、原価の概念を単に「コストを知る手段」ではなく、設計・生産・環境対応・経営意思決定をつなぐ情報基盤としてどう捉えるかが問われています。
I-1-7:財務諸表とキャッシュ・フローの構造的理解
背景にある問い
「売上は伸びているのに資金繰りが苦しい」
「決算書を見るように言われたが、どこを見れば実態が分かるのか分からない」
「財務諸表に載っている数字が、それぞれ何を意味しているのか曖昧なまま報告書を作っている」
──こうした現場の戸惑いは、経理部門以外の技術者や管理者でも多く見られます。
財務諸表は単なる数字の羅列ではなく、企業の経営状態や将来性を示す重要な情報です。
読み手の立場や目的に応じて、貸借対照表・損益計算書・キャッシュ・フロー計算書それぞれの役割とつながりを理解しておくことが必要です。
特に技術者や管理者に求められるのは、数字そのものではなく「何を把握し、どう活かすか」という視点です。
キーワードで整理する
このような判断力を支えるために、以下の3つの財務諸表とその関係性を正確に押さえておく必要があります。
- 貸借対照表(Balance Sheet)
ある時点における企業の財政状態を示す表。左側に資産(現金、売掛金、在庫など)、右側に負債(借入金など)と純資産(資本金、利益剰余金など)を記載し、「資産=負債+純資産」の関係が成り立ちます。 - 損益計算書(Profit and Loss Statement)
一定期間の収益と費用の差額としての利益を示す表。売上高から始まり、売上原価・販管費・営業外収益費用などを経て、最終的に当期純利益を算出します。 - キャッシュ・フロー計算書(Cash Flow Statement)
一定期間における現金の流れを営業活動・投資活動・財務活動に分類して示します。黒字でも資金繰りが厳しいという状況を把握するために不可欠です。
以下に主な構造を示します:
| 財務諸表 | 目的 | 表現内容 |
|---|---|---|
| 貸借対照表 | ストック(時点) | 資産・負債・純資産の構成 |
| 損益計算書 | フロー(期間) | 収益と費用による利益の構成 |
| キャッシュ・フロー計算書 | フロー(期間) | 現金の増減と残高の動き |
なお、キャッシュ・フロー計算書の期末残高(現金及び現金同等物)は、貸借対照表の「流動資産」のうちの現金及び預金などの一部項目に相当し、流動資産の全体とは一致しません。
実際の問われ方
本問では、財務諸表の基本的な構成と、それぞれの記載項目・関係性について、最も不適切な記述を選ばせる形式です。
問われているのは以下のような観点です:
- 表の構成と順序の理解
- 各表の目的と対象項目
- 連携性・対応関係の正しい把握
④は「流動資産」と「現金及び現金同等物」を同一視している点で誤りです。
試験での留意点
- **貸借対照表の「資産=負債+純資産」**は財務三表の中核構造。これを軸に各項目の意味を押さえることが大切です。
- 現金及び現金同等物は、キャッシュ・フロー計算書において「期首・期末残高」として扱われる項目であり、流動資産の一部にすぎない点に注意が必要です。
- 減価償却費は非資金支出項目であることから、キャッシュ・フローではプラス調整される。この視点は複数回出題されています。
- 損益計算書とキャッシュ・フロー計算書の違い(発生主義 vs 現金主義)を正確に整理しておくと、選択肢の読み分けがスムーズになります。
この問題は、財務諸表を「読み取る力」ではなく、「構造を理解し、誤解しない力」が問われています。
I-1-8:バスタブカーブと設備の故障率の推移
背景にある問い
「導入したばかりの機器が立て続けに故障した」
「5年目までは問題なかったのに、最近故障が目立つ」
「部品の寿命に応じた保守計画を立てたい」
──設備管理の現場では、時間とともに変化する故障傾向への対応が重要なテーマとなります。
とくに保全計画を立てる際、「いつ・どのような故障が発生しやすいか」を把握できていなければ、無駄な整備や予期せぬダウンタイムが生じ、コストと信頼性の両面で損失を招くことになります。
このような問題を考える際に有用なのが、設備の故障率を時間軸で表した「バスタブカーブ」という概念です。
キーワードで整理する
時間経過に対する設備の故障率の典型的な推移を表すグラフを バスタブカーブ と呼びます。故障率の変化を風呂桶(バスタブ)の断面に見立てたこのカーブは、以下の3つの期間に分かれます。
| 区間 | 名称 | 故障の主な要因 | 故障率の傾向 |
|---|---|---|---|
| A期間 | 初期故障期間 | 設計不良・製造欠陥・操作ミス | 高→徐々に低下 |
| B期間 | 偶発故障期間 | 外乱・偶発的な要因 | ほぼ一定 |
| C期間 | 摩耗故障期間 | 老朽化・摩耗・疲労・腐食・経年劣化 | 徐々に上昇 |
- **初期故障期間(A期間)**では、設計や製造上の欠陥、導入時の不適切な取り扱いにより、初期的なトラブルが多発します。適切な立ち上げ点検や初期対応が重要です。
- **偶発故障期間(B期間)**は、設備が安定して稼働している状態。故障率は時間の経過に依存せず一定で、偶然的な故障が発生します。この期間が最も長く、運用の信頼性の中心期間といえます。
- **摩耗故障期間(C期間)**では、部品の疲労や摩耗、化学変化などによって故障率が上昇します。計画的な更新・部品交換が求められます。
このカーブは、保全戦略や設備寿命の設計根拠として、信頼性工学や設備管理において重要な視点となります。
実際の問われ方
本問では、バスタブカーブの3つの期間(A, B, C)に関して、名称・要因・故障傾向の関係を正確に理解しているかが問われています。
出題形式の特徴:
- 正誤判定形式(最も不適切な記述の選択)
- 用語の取り違え(例:偶発と摩耗)に誘導されやすい選択肢が含まれている
- 単なるグラフの形状理解ではなく、背景にある要因・保全の意味まで理解しているかがカギ
試験での留意点
- **B期間は「偶発故障期間」**であり、「摩耗故障期間」と誤記されると混乱しやすいため注意が必要です。
- 「老朽化=C期間」「製造ミス=A期間」など、原因とタイミングの因果関係を正確に覚えておくことが重要です。
- 故障率の形状(高→低→高)だけで覚えていると、名称や要因の取り違えに引っかかります。
- 実務では、「A期間の短縮」「C期間の移行を予測する保全」「B期間の安定運用」などが目的になるため、設計・運用・保全の各視点との結びつきも意識しておくと理解が深まります。
この問題では、単なる用語記憶ではなく、「設備寿命をどう管理するか」という総合的視点が問われています。
人的資源管理
Ⅰ-1-9:無期転換ルールと労働契約の基本
背景にある問い
「契約社員の部下が、そろそろ5年目を迎えるのですが、うちの会社で正社員にする必要はあるのでしょうか?」
このような問いは、管理職や技術者が人員配置や予算計画を進める中で、しばしば直面する現実的な課題です。
契約社員や派遣社員が一定期間を経たときに
「無期雇用へ切り替える義務があるのか」
「誰がその責任を負うのか」という点は、単なる法知識ではなく、組織運営における判断の要となります。
とくに外部労働力(派遣社員など)を活用する企業では、「派遣先の責任範囲」「契約年限の限界」「転換申し込みの主体」など、表面上の感覚と異なる点が多く、誤解されやすいテーマです。
キーワードで整理する
この話題の要点は、無期転換ルールおよび労働契約法第18条の規定、そして**労働契約申込みみなし制度(労働者派遣法第40条の6)**です。
- 無期転換ルール
有期労働契約が通算5年を超えて反復更新された場合、労働者からの申込みによって、使用者(契約主体)に無期転換義務が発生する制度です。これは「契約更新を繰り返すことで不安定な雇用が継続する」ことを防ぐために設けられたルールで、申込み権者は労働者本人です。 - 派遣労働者の場合の申込み先
派遣労働者にこのルールを適用する場合、**無期転換の申込み先は派遣先企業ではなく派遣元事業主(派遣会社)**です。派遣先には無期転換の義務は原則として生じません。 - 例外・特例
派遣元で無期雇用されておらず、特定業務にのみ従事している場合などでは、雇用安定措置の選択肢の一つとして「派遣先での直接雇用の申し込み」が推奨されますが、法律上の義務ではなく選択肢の一つです。
実際の問われ方
本問では以下のような形式で問われました:
派遣労働者が通算5年を超えて同一の派遣先に派遣された場合、当該労働者の申込みにより、無期労働契約に転換することが派遣先の事業主に義務付けられている。
この記述は不適切です。
→ 義務を負うのは派遣元であり、派遣先に義務はありません。
この種の問題は、以下のように分類して押さえておくと整理しやすくなります:
| 対象労働者 | 無期転換申込み先 | 義務を負う者 |
|---|---|---|
| 直接雇用の有期契約社員 | 使用者(雇用主) | 使用者 |
| 派遣労働者 | 派遣元(派遣会社) | 派遣元 |
| 派遣先企業 | 対象外(例外あり) | 義務なし(選択肢) |
試験での留意点
- 「派遣元」と「派遣先」の混同に注意
実務では「一緒に働いている=雇用している」と錯覚しがちですが、労働契約の当事者が誰かという視点が問われます。 - 「申込みにより無期転換」が自動で義務となるかのような記述に注意
申込みがなければ無期転換は発生せず、「自動転換」ではありません。また、無期転換されても正社員とは限らない(労働条件は別途設定可能)点も混同しないようにしてください。 - 例外条項や特例措置に惑わされない
試験では「義務である」「禁止されている」などの断定的表現が正誤のポイントになりやすく、例外がある場合はその断定が誤りとなる可能性があります。
Ⅰ-1-10:働き方改革関連法と時間外労働の上限規制
背景にある問い
「うちは36協定で月45時間までにしてるけど、所定労働時間超えて働いてたらアウトなんですか?」
人事部門や管理職が「残業時間の管理」を行う際、最も混乱しやすいのが**“所定労働時間”と“法定労働時間”の違い**です。
特に「時間外労働の上限規制」に関しては、「法律違反なのか」「協定違反なのか」「単なる管理上の問題なのか」があいまいになりやすく、組織内でも判断が分かれるケースがあります。
背景には、2019年に施行された働き方改革関連法による法制度の大きな変更があります。
これにより、時間外労働に対する罰則付きの上限が導入され、**“何を超えると違法か”**を正しく理解していなければ、無意識に違反行為が生じかねません。
キーワードで整理する
この混乱の正体は、法定労働時間と所定労働時間の区別、そしてそれを規制する時間外労働の上限規制にあります。
- 法定労働時間
労働基準法で定められた労働時間の上限であり、原則1日8時間・週40時間です。この枠を超える労働を「法定外労働」と呼びます。 - 所定労働時間
企業が就業規則や労働契約で定めた労働時間です。多くの場合、法定労働時間と同じですが、企業によっては短く設定されていることもあります。 - 時間外労働の上限規制(2019年施行)
36協定を結んでも超えてはならない上限として、月45時間・年360時間が原則とされました。特別条項を結んだ場合でも、月100時間未満・2~6か月平均80時間以内・年720時間以内という罰則付き上限があります。
この規制の**対象となるのは、あくまで「法定労働時間を超えた時間」**であり、所定労働時間を超えていても、法定労働時間内であれば時間外労働には該当しません。
実際の問われ方
本問では次のような誤りが含まれていました:
時間外労働の上限が罰則付きで法律に規定され、法違反の有無は所定外労働時間の超過時間で判断される。
この記述は不適切です。
→ 法違反の判断基準となるのは法定外労働時間です。
試験では次のような論点が想定されます:
- 働き方改革関連法の改正ポイント
- 時間外労働の上限の数値とその構造
- 有給休暇の時季指定義務
- 労働時間の客観的把握義務
- 勤務間インターバル制度(努力義務)
- 産業医制度の強化
試験での留意点
- 「所定」と「法定」の混同に注意
「所定外=違法」とは限りません。違法となるのは法定外の時間外労働を上限以上に行った場合です。 - 努力義務と義務の違い
勤務間インターバルのように「努力義務」として明文化されたものと、「義務(罰則付き)」のものを混同しないようにしてください。 - 制度の対象と労働者区分の確認
上限規制には一部の業種(建設、医師など)に適用猶予があるため、「全員に一律適用」ではない点も注意が必要です。 - 「タイムカード」「PCログ」などのキーワードは記録方法の問題としても問われやすい
労働時間の把握は「自己申告だけでは不十分」であり、客観的方法の原則を忘れないようにしてください。
Ⅰ-1-11:労働協約の拡張適用と過半数要件の誤解
背景にある問い
「ウチの職場は組合に入ってない人もいるけど、労働協約ってその人たちにも自動的に適用されるのですか?」
人事や管理職が労使関係を整理する際、「労働協約の効力範囲」について誤った理解をしてしまうことがあります。
とくに「組合員以外にも自動的に労働協約が適用される」と考えてしまう場面は多く見られます。
この誤解は、「労働者の多数派が協約の対象なら、残りも巻き込まれるのが当然」という感覚に起因します。
しかし、法制度上はより厳密な条件が定められており、「自動適用」とはいかない仕組みになっています。
このテーマは、労働法の中でも「労働協約の一般的拘束力」の理解と、**“労働者代表制”と“団体交渉権”の関係”**を問う上で重要な基礎知識となっています。
キーワードで整理する
この誤解に対して重要なのが、**労働協約の拡張適用(一般的拘束力)**です。
- 労働協約
労働組合と使用者(または使用者団体)との間で締結される書面による合意で、法的拘束力があります。通常は、組合員にのみ適用される契約です。 - 一般的拘束力(労働組合法第17条)
一定の条件を満たせば、組合員以外の労働者にも労働協約が適用される制度です。その条件とは、次のとおりです:
- 1つの事業場において
- 常時使用される同種の労働者の 4分の3以上 が
- 1つの労働協約の適用を受けていること
この「4分の3以上」が成立した場合に限り、労働協約は非組合員の同種労働者にも適用されるとされています。
したがって、「過半数で適用拡大される」というのは誤りです。
実際の問われ方
本問では以下のような記述がありました:
1つの事業場の常時使用される同種の労働者の過半数が1つの労働協約の適用を受けるときは、残りの同種の労働者にもその協約が適用される。
この記述は不適切です。
→ 拡張適用には「過半数」ではなく4分の3以上の適用が必要です。
このような設問では、以下のような視点で整理しておくと有効です:
| 適用対象 | 労働協約の効力 |
|---|---|
| 組合員 | 自動的に適用される(原則) |
| 非組合員 | 一般的拘束力が成立する場合に限り適用される(例外) |
| 適用条件 | 「同種労働者の4分の3以上が同一協約の適用対象であること」 |
試験での留意点
- 「過半数」と「4分の3」の数字の違いに注意
試験ではあえて「多数派」のイメージに誘導して誤答を選ばせる選択肢が出されます。協約の拡張適用における4分の3という条件は暗記すべき数字の一つです。 - 「組合員にしか適用されない」だけでは不十分
通常はそのとおりですが、「例外として非組合員にも適用され得る」制度があることを押さえておくことが重要です。 - 労使協定との混同に注意
「労働協約(法的拘束力あり)」と「労使協定(就業規則等への反映が必要)」は別のものです。労働協約のほうが優越的な効力を持つ点も踏まえておく必要があります。
このテーマは「労使関係の構造」や「集団的労使交渉の法的意味合い」にも関係しており、技術者であっても労務対応や就業規則運用に関わる立場では理解しておくべき内容です。
Ⅰ-1-12:パワーハラスメント防止義務と関連法体系
背景にある問い
「最近、部下とのやり取りが怖いんです。注意しただけで“パワハラだ”って言われることもあって…どこまでが適正な指導なんでしょうか?」
このような声は、マネジメントに携わる人々のあいだで年々増えています。
指導・指摘・叱責などの場面が、どこから「ハラスメント」になるのかは一見あいまいで、感情論になりがちです。
しかし、法律の枠組みや定義に基づいて対応しなければ、職場全体が混乱し、結果的に人材流出や訴訟リスクにもつながりかねません。
とくに近年、職場のハラスメントを対象とする法整備が進んだことで、**「誰に、何が、どう義務付けられているか」**を正確に理解する必要が高まっています。
キーワードで整理する
この問題を読み解くうえで重要なのが、パワーハラスメントの定義と防止義務を定める法体系の正確な把握です。
- 職場のパワーハラスメント
厚生労働省が示す定義では、以下の3要件を満たすものとされています:
1. 優越的な関係を背景にして行われること
2. 業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動であること
3. 労働者の就業環境を害すること
上司から部下に限らず、先輩・後輩、正社員と派遣社員、技能の上下など多様な優位性が該当する点が重要です。
- 行為類型の6分類
代表的なハラスメント行為には、次のようなタイプがあります:
- 身体的な攻撃
- 精神的な攻撃
- 人間関係からの切り離し
- 過大な要求
- 過小な要求
- 個の侵害
- パワハラ防止措置の法的位置づけ
2020年の法改正により、労働施策総合推進法(いわゆるパワハラ防止法)に基づき、事業主に対して雇用管理上の措置義務(相談窓口設置・再発防止など)が明記されました。
一方で、男女雇用機会均等法は主にセクシュアルハラスメントやマタニティハラスメント等の男女差別に関する措置を定めた法律であり、パワハラについての義務規定は存在しません。
実際の問われ方
設問⑤では以下のような誤りが含まれていました:
職場のパワーハラスメントについては、事業主に雇用管理上必要な措置を講ずることが男女雇用機会均等法において義務付けられている。
この記述は不適切です。
→ 正しくは、労働施策総合推進法において措置義務が課されています。
試験では、以下の観点からの整理が有効です:
| 分類 | 法律の根拠 | 義務の対象 |
|---|---|---|
| パワーハラスメント | 労働施策総合推進法 | 事業主に防止措置義務 |
| セクシュアルハラスメント | 男女雇用機会均等法 | 事業主に防止措置義務 |
| 妊娠・出産ハラスメント | 男女雇用機会均等法、育児・介護休業法 | 事業主に措置義務 |
試験での留意点
- 法律名の取り違えに注意
ハラスメント対策に関する法令は複数あり、**「どのハラスメントが、どの法律で、どのように規定されているか」**を正確に区別することが求められます。 - 「主観的な不満」と「違法なハラスメント」の違いを区別する記述に注目
適正な指導はパワハラに当たらない、という整理ができているかが問われやすいポイントです。 - 「個別労働紛争解決促進法」や「あっせん制度」などの制度名を問う設問にも注意
相談・解決手段の選択肢として、労働局によるあっせんや労働委員会による仲介などの制度を正確に把握しておく必要があります。
この問題は「法律名の記憶」だけでなく、実務上の判断やリスク管理につながる重要なテーマです。
Ⅰ-1-13:人事評価における評価誤差とバイアス対策
背景にある問い
「部下の評価をするとき、どうしても“この人は優秀だから”と全体的に甘くなってしまうんです。でもそれって、公平性に欠けるんでしょうか?」
人事評価は組織運営において不可欠な仕組みですが、「主観」や「印象」が評価結果に影響してしまうことは、誰にとっても避けがたい課題です。
上司である評価者が、被評価者に対して無意識のうちに偏った判断を下してしまうことが、評価の信頼性や妥当性を損なう要因となります。
特に技術職や現場マネジメントでは、「自分だったらこうやる」といった自己基準を持ち込みやすく、意図せず誤差を拡大してしまうケースが少なくありません。
こうした事象を、心理的な傾向や構造的な視点から整理するのが「評価バイアス」の知識です。
キーワードで整理する
この問題の核は、**評価誤差(Rater Errors)および評価バイアス(Bias)**の理解です。以下、代表的なバイアスとその対策を整理します。
- ハロー効果(Halo Effect)
被評価者の一つの優れた特徴が他の評価項目にも良い影響を与えてしまうバイアスです。例:「プレゼンがうまい人は、仕事全体もできる」と感じてしまうような評価傾向です。 - 寛大化傾向(Leniency Bias)
悪い評価を避けようとする心理から、実態より高い評価をつけてしまう傾向です。「評価が人間関係に影響しそう」「好意を持たれたい」という感情が背景にあります。 - 中心化傾向(Central Tendency Bias)
評価に対して自信が持てなかったり、対立を避けたかったりする場合に、評価が標準(中間)に偏る現象です。「とりあえず3点にしておくか」といった判断がその典型です。 - 対比誤差(Contrast Error)
評価者自身の能力や基準と被評価者を比較してしまうことによる誤差です。これは客観的な絶対評価とは異なり、相対的かつ主観的な評価になってしまうため、評価の妥当性を損ないます。 - 多面評価(360度評価)
評価者を直属上司だけでなく、同僚・部下・他部門・顧客などに広げることで、評価の偏りや主観を抑制する手法です。バイアス軽減と納得性の向上に寄与します。
実際の問われ方
本問では以下のような誤った評価方法が不適切とされました:
各評価項目について、評価者が自身で被評価者の業務を行ったとした場合の想定される実績と被評価者の実際の実績との対比に基づく評価を行うことにより、評価誤差の低減に貢献できる。
この記述は不適切です。
→ 評価者自身との比較は、対比誤差を招く典型であり、絶対評価の原則に反します。
表にまとめると以下のようになります:
| 誤差の種類 | 内容 | 防止策の要点 |
|---|---|---|
| ハロー効果 | 一つの印象が他項目の評価に波及する | 評価項目ごとに事実ベースで判断 |
| 寛大化傾向 | 実際以上に高く評価してしまう | 評価基準に基づいた評価の徹底 |
| 中心化傾向 | 評価が平均に偏る | 評価者教育やフィードバックの強化 |
| 対比誤差 | 自分との比較で評価してしまう | 絶対評価を意識し、事実に基づく |
試験での留意点
- 評価は「本人の成果」で判断するという原則を忘れない
「自分だったらこうする」という観点は、一見合理的に見えても評価者基準の押しつけにあたります。総監では、制度や仕組みの整合性として問われている点に注意が必要です。 - “よさそうに見える記述”こそ要注意
選択肢④は一見、具体的で合理的に見えますが、評価の中立性と再現性という原則からは外れています。試験ではこうした“誘導的な良識”への警戒が求められます。 - バイアスは評価者個人の問題だけでなく、組織的教育や制度整備の問題でもある
「評価者研修」「評価フィードバック制度」「多面評価の導入」など、制度面からの対策が問われる設問にも対応できるよう、視野を広げておくことが重要です。
このテーマは、人的資源管理と組織の公正性確保という観点からも重要です。
Ⅰ-1-14:動機付け理論と人の行動モデル
背景にある問い
「いくら給料を上げても、うちの若手はやる気を見せない。結局、何が人を動かすのだろうか?」
この問いは、どの職場でも繰り返されるマネジメント上の課題です。
特に多様な働き方や価値観が共存する現代の組織において、「何が人を動かすのか」「どうすれば持続的な成果につながるのか」は、単なる経験論や精神論では解決できません。
こうした問いに体系的にアプローチするために登場したのが、人間行動のモデルや動機付け理論です。
古典的理論であっても、今なお評価制度・人材育成・組織設計の前提として活用されていることから、技術者や管理者にも正しい理解が求められます。
キーワードで整理する
人の行動や動機を説明するモデルには多様な理論がありますが、代表的なものは以下の5つです。
- マグレガーのX理論・Y理論
人間観を大別した理論です。
- X理論:人は本質的に働くことを嫌い、命令・監視・懲罰が必要であるとする悲観的な人間観。
- Y理論:人は本来働くことを自発的に求め、自己実現の手段として労働を捉えるとする前向きな人間観。
※選択肢①は両者の解釈を逆にしており不適切です。 - マズローの欲求階層説
人間の欲求は段階的に満たされていくという理論で、以下の5段階で構成されます:
| 段階 | 欲求の種類 |
|——|——————|
| 第1段階 | 生理的欲求(食事・睡眠) |
| 第2段階 | 安全の欲求(雇用・健康) |
| 第3段階 | 所属と愛の欲求(仲間・承認) |
| 第4段階 | 承認欲求(評価・自信) |
| 第5段階 | 自己実現の欲求(成長・挑戦) |
※選択肢②の「並行して追求する」は、段階的という理論の本質に反する記述です。
- ハーズバーグの二要因理論
- 動機付け要因(満足感に関与):達成、承認、職務内容、責任、昇進など
- 衛生要因(不満足の防止):給与、労働条件、対人関係、職場環境など
満足を得るには動機付け要因の充実が不可欠であり、衛生要因の除去だけではモチベーションは高まらないとされます。
※選択肢③はこの理論の優先順位を逆に述べており不適切です。
- メイヨーのホーソン実験
生産性に影響するのは物理的条件よりも、人間関係・承認・感情面などの社会的要因であることを示した実験です。
※選択肢④の「賃金が主因」という記述は、この実験の結論と真逆です。 - アッシュの同調実験
集団内で明らかに誤っている意見であっても、多くの人がそう言っていると、人は集団から逸脱しないように同調する傾向があるという社会心理学の研究です。
※選択肢⑤はこの理論を正しく述べており、最も適切です。
実際の問われ方
本問では、以下のような形式で問われました:
人の行動モデルに関する記述のうち、最も適切なものはどれか。
選択肢⑤(アッシュの同調理論)のみが、正確な理論内容を反映しており、それ以外は定義の逆転・誤解釈・本質の歪曲が含まれています。
このタイプの出題では、理論の要点と対比構造を正しく理解しているかが問われます。
試験での留意点
- 用語の「方向性」が逆になっていないかに注意
例:X理論とY理論/満足要因と不満足要因/欲求の段階と並行性など
出題者は「わかったつもり」になっている受験者を引っ掛ける構成をとることが多いため、言葉の裏返しに強くなることが重要です。 - 「人を動かす要因=報酬」と即断しない
現代の動機付け理論は、物理的報酬だけではなく、内発的動機・承認・裁量性・組織文化などの社会的・心理的側面を重視します。 - 表面上の正しさではなく、「どの理論の要素か」を確実に対応させる習慣を持つこと
「それっぽく見える選択肢」ほど危険です。図表や構造とセットで記憶しておくと誤選択を防げます。
このテーマは、組織マネジメントや技術者リーダーにとっての人材育成力に直結します。
Ⅰ-1-15:教育訓練の目的と技法の対応関係
背景にある問い
「新入社員向けの講義資料は整っているけれど、若手の“考える力”や“自発性”をどうやって育てればよいのか、迷っている」
このような悩みは、多くの現場リーダーや技術管理者が直面する教育設計の壁です。
**知識は与えやすくても、態度や創造性までは伝えにくい。
**それでも、現場の問題解決やイノベーションを任せられる人材を育てるには、単なる座学では不十分です。
そのため、教育の目的に応じて、適切な訓練技法を選択する力が必要とされます。
これは、単に「教える内容」を考えるだけでなく、「どう教えるか」という訓練設計の視点が問われる分野です。
キーワードで整理する
教育訓練にはそれぞれ目的があり、それに適した技法が存在します。主な対応関係を以下に整理します。
- (ア)知識、事実の習得 → 講義法、見学(D)
体系的な知識や事実情報のインプットには、一方向的で効率的な伝達手段が有効です。講義や資料提示、現場見学などが典型です。 - (イ)態度変容、意識改革 → 討議法、ロール・プレイング(A)
他者との対話や、立場の違いを体験することで気づきや価値観の転換が促されます。感情移入や対人関係を通じた変容がねらいです。 - (ウ)問題解決力・意思決定の向上 → ケース・スタディ、ビジネス・ゲーム(C)
実践的な場面を模擬的に体験し、自ら判断・分析する過程を経ることで思考力が養われます。疑似体験による応用力の強化が狙いです。 - (エ)創造性開発 → ブレインストーミング、イメージ・トレーニング(B)
自由な発想を引き出す技法が必要です。アイデアの量産や発想の枠を外す手法を用いることで創造的な思考が刺激されます。
実際の問われ方
本問では、以下のように「教育訓練の目的」と「教育訓練技法」の正しい組み合わせが問われました:
(ア)〜(エ)の教育訓練の目的に対し、(A)〜(D)の技法の組合せのうち、最も適切なものはどれか。
正解の対応関係(①)は以下のとおりです:
| 教育訓練の目的 | 対応する技法 |
|---|---|
| (ア)知識、事実の習得 | 講義法、見学(D) |
| (イ)態度変容、意識改革 | 討議法、ロール・プレイング(A) |
| (ウ)問題解決力・意思決定 | ケース・スタディ、ビジネス・ゲーム(C) |
| (エ)創造性開発 | ブレインストーミング、イメージ・トレーニング(B) |
試験での留意点
- キーワードの“目的”と“技法”をペアで覚えること
教育技法だけを覚えても、問われるのは**「いつ使うか」**という場面設定です。目的主語での記憶が効果的です。 - 「講義法」は“知識習得”に限定されるという原則に注目
逆に、「ロール・プレイング」や「ブレインストーミング」は、意識や思考の転換を求める場面でのみ有効です。 - “正解選択肢の中で1つでも明確な組があれば、それを軸に検討する”という戦略
本問では(ア)と(D)、(エ)と(B)が典型であり、**「選択肢①が明確に優れている」**ことに気づければ得点できます。
この問題は、単なる知識ではなく、「学習設計」の実践力が問われており、マネジメントに直結するテーマです。
Ⅰ-1-16:診断型と対話型における組織開発のアプローチ
背景にある問い
「現場がうまく回らない。誰かが悪いというより、組織そのものがどこかズレている気がする。でも、どこから手をつけたらよいのか分からない」
このような感覚は、組織に長く関わっているリーダーほど抱きやすいものです。
特定のトラブルや不祥事ではなく、チームの空気感、意思決定の停滞、対話の不在など、「目に見えにくい問題」が積み重なった状態。
これに対し、単なる改革ではなく「組織の在り方そのもの」を見直す手法が**組織開発(OD: Organizational Development)**です。
近年では、単なる制度設計や業務改善だけでなく、組織文化・信頼関係・対話の質といった非形式的な要素に着目したアプローチが注目されています。
キーワードで整理する
組織開発にはいくつかのアプローチがありますが、本問題で押さえておきたいのは以下の対比です。
- 診断型組織開発(Diagnosis-based OD)
外部コンサルタントや専門家などが客観的な立場から調査・分析(診断)を行い、その結果に基づいて変革プランを提案・実施するスタイルです。
特徴:
- データに基づく処方的アプローチ
- 組織外部からの介入が中心
- 組織内の課題抽出→改善提案という直線的プロセス - 対話型組織開発(Dialogic OD)
診断よりも対話そのものをプロセスとして重視し、関係性・意味づけ・ナラティブ(物語)の共有を通じて組織を自己変容させることを目的とするアプローチです。
特徴:
- 現場主導の変革
- 多様な声・価値観の可視化
- 「正解探し」より「共創・合意形成」に重きを置く
※本問の②はこれらの関係性を逆に述べており、「対話型から診断型が発展した」というのは誤りです。実際には診断型の方が古典的で初期のモデルです。
- コンテントとプロセス
- コンテント(Content):業務や目標などの「何をやるか」
- プロセス(Process):チーム運営や意思決定などの「どう進めるか」
この2つを切り分けて考えることで、成果の停滞が“関係性の問題”に起因することに気づくための視座となります。
実際の問われ方
本問では、以下のように「組織開発の考え方・アプローチの理解」を問う形式で出題されました:
組織開発に関する記述のうち、最も不適切なものはどれか。
誤りのポイントは②の記述にあります:
「診断型組織開発」は、「対話型組織開発」から発展して成立した手法である。
これは逆であり、診断型が従来型で、対話型はそれに対する新しいアプローチです。
整理すると以下のようになります:
| 種別 | 時代的背景 | 中心的特徴 |
|---|---|---|
| 診断型 | 古典的(1950〜) | 客観データと専門家主導 |
| 対話型 | 現代的(2000〜) | 内発的変革・関係性重視 |
試験での留意点
- 「どちらが新しいか」を問う逆転構造に注意
「〜から発展した」という記述は、時代順・理論の派生関係を誤認させやすいため、試験では意図的なひっかけとして頻出です。 - **「診断=正解あり」「対話=正解をつくらない」**という本質的な違いを押さえる
両者の違いは単なる手法ではなく、「変革の捉え方そのもの」にあります。 - コンテントとプロセスの違いは、業務改善と組織改善の混同を防ぐ鍵
「やること」ではなく「進め方の癖」「関係性の質」が組織停滞の原因であることは、実務でも見落とされやすい点です。
この設問は、形式的な制度や分析では捉えきれない組織の“内面”と変容の方法論を問うており、技術者にとっても対話的マネジメントへの理解が求められます。
情報管理
I-1-17:新しい5タイプの商標
背景にある問い
新商品を開発したとき、その「ブランド」をどこまで守るべきかは、実務の現場でもしばしば議論になります。
ロゴマークや商品名はもちろん、近年ではパッケージの「色」や「音」、さらには「動き」までがその企業らしさを表現する要素になっています。
たとえば、「音」を聞くだけである企業のCMだとわかる、「動き」によって印象が決まるウェブバナーの演出、店舗の入り口で流れる香りなど、現代のブランド戦略は多様です。
しかし、それらは果たして「法的に守れるのか」、そして「どういう枠組みで保護されるのか」という疑問がつきまといます。
こうした問いに応えるのが、平成27年に導入された新しいタイプの商標制度です。
キーワードで整理する
こうした多様なブランド要素を守るために導入されたのが、新しい5タイプの商標です。具体的には、以下の5つが対象です。
- 動き商標:動く画像や変化する図形など、動画のような動きで構成される商標
- ホログラム商標:見る角度によって異なる見え方をする図形・文字など
- 色彩のみからなる商標:特定の色彩だけで構成され、図形や文字を伴わない商標
- 音商標:メロディやサウンドロゴなど、視覚ではなく聴覚に訴える商標
- 位置商標:ある標章が、商品等の特定の位置に常に配置されることで識別性を持つもの
これらはそれぞれ、「視覚・聴覚・位置・動き」といった“従来の枠を超える表現”を、商標権で保護するために制度化されたものです。
なお、「香り商標」は世界的に一部認められる国もありますが、日本では現時点で導入されていません。
実際の問われ方
この問題では、5タイプの商標として実際に認められているものかどうかを問う選択肢形式で出題されています。
| 選択肢 | 内容 | 実際の商標区分 |
|---|---|---|
| ① | 香り商標 | ×(導入なし) |
| ② | ホログラム商標 | ○ |
| ③ | 色彩のみからなる商標 | ○ |
| ④ | 音商標 | ○ |
| ⑤ | 位置商標(例:赤ラベルの位置) | ○ |
このように、「導入されたかどうか」が出題の軸です。暗記ではなく、「保護の対象が五感のどこに対応するか」という観点から整理すると理解が進みます。
試験での留意点
- 「香り」は実務的に識別力があるように思えても、日本ではまだ商標として認められていない点がひっかけになっています。
- 一方、「色」「音」「動き」などは、視覚・聴覚に訴える要素として商標登録が可能です。
- 「位置商標」は、「場所が識別力を持つ」という直感に反する概念のため、図形やラベルだけでなく“その配置場所”も識別要因となる点を押さえておく必要があります。
- 出題では、従来型(文字・図形・立体)との違いや、具体例との組合せで誤認を誘う形式が多くみられます。
I-1-18:平均値・中央値・第3四分位数の大小関係
背景にある問い
ある研修や試験の結果を集計したとき、「平均点は60点です」と言われて、あなたはどのような印象を持つでしょうか。
それは「多くの人が60点前後を取った」という意味とは限りません。
たとえば、極端に低い点や高い点が数名いるだけで、平均は大きく引っ張られてしまいます。
一方で、中央値(真ん中の人の点数)や四分位数(全体を4等分した位置の人の点数)は、そうした外れ値の影響を受けにくい性質があります。
「平均」と「中央値」「四分位数」は似たように思えて、実は異なる視点を提供してくれる統計指標です。
どの指標を使うかで、見える景色が変わるのです。
キーワードで整理する
このような視点の違いを生み出す要素には、それぞれ名前がついています。
- 平均値:すべての値の合計を個数で割った値。全体像をざっくり把握するには有効ですが、外れ値に弱いです。
- 中央値:値を小さい順に並べたときの真ん中の値。データが偏っているときに、より実態に近い中心値を示します。
- 第3四分位数:全体を小さい順に並べたとき、上位25%が超える境界の値。得点分布の上位層を把握する指標として有用です。
これらの値を並べたときの大小関係から、得点分布の「かたより(歪度)」を読み取ることができます。
- 平均値 < 中央値 < 第3四分位数:全体が下方に偏った(左に裾が長い)分布
- 平均値 > 中央値 > 第3四分位数:上方に偏った(右に裾が長い)分布
今回の設問では、この「大小関係」が問われています。
実際の問われ方
本問では、得点の度数分布表が与えられ、それに基づいて「平均値・中央値・第3四分位数」の相対的な大小関係を問われます。
以下のように計算・推定されます:
| 指標 | 計算・推定方法 | 結果の範囲 |
|---|---|---|
| 平均値 | 度数×階級値の合計 ÷ 総人数(150人) | 約58.8~67.8の範囲 |
| 中央値 | 累積人数が75人を超える階級:70~79点 | この範囲に含まれる |
| 第3四分位数 | 累積人数が112.5人を超える階級:80~89点 | この範囲に含まれる |
したがって、大小関係は:
平均値 < 中央値 < 第3四分位数(選択肢①)
このように、計算というより区間からの推定と大小比較が問われる形式です。
試験での留意点
- 「中央値」は単なる“真ん中の値”ではなく、累積度数から位置を探す点に注意が必要です。
- 「四分位数」は「全体の1/4, 1/2, 3/4位置」の累積度数を用いるという原理を理解しておく必要があります。
- 平均値は一見“代表値”のように見えても、外れ値に強く影響されるため、中央値や四分位数との比較が本質です。
- 計算式よりも、分布形状をイメージできるかどうかがポイントとなります。
I-1-19:標準化の種類と知的財産の取扱い
背景にある問い
新しい技術やサービスを市場に投入する際、最も厄介なのが「標準」が定まっていない状況です。
複数の規格が乱立してしまうと、製品の互換性が確保できず、ユーザーも混乱し、結果的に普及が妨げられます。
一方、誰かが決めた「標準」が業界全体に影響を与えることもあります。
特にIT業界では、技術的な優位性よりも「広く使われているかどうか」が生き残りを左右することが多くあります。
そうなると、企業としては「標準をどう見極めるか」「どの標準に乗るか」「自社技術が標準になった場合に、他社にどうライセンスするか」といった戦略的判断が重要になります。
つまり、標準化は単なる技術選択ではなく、事業のルールメイキングそのものなのです。
キーワードで整理する
こうした標準化にはいくつかのタイプが存在し、それぞれ形成の主体と知的財産の扱い方に違いがあります。
- デジュール標準:公的な標準化機関(例:ISO、IEC、JIS、ITU)によって制定される正式な標準です。多くの場合、合意形成に時間がかかるが、法的効力や国際性を備えることが特徴です。
- デファクト標準:公的手続きを経ることなく、市場競争の結果として広く使われ、事実上の標準となったものです。Microsoft WindowsやUSBなどが代表例です。知的財産のライセンスは任意であり、標準を握る企業が市場を独占することも可能です。
- フォーラム標準:特定の技術分野に関心のある複数の企業等が、自発的に集まって設立した**業界団体(フォーラム)**により合意される標準です。例としてはBluetooth SIGやW3Cなどがあります。通常、合理的・非差別的(RAND)なライセンスが求められます。
これらの違いを理解することは、戦略的な技術導入・知財管理の判断軸として極めて重要です。
実際の問われ方
本問では、以下のように標準化の3類型の特徴や知財ライセンスに関する記述から、不適切なものを選ばせる形式で出題されています。
| 選択肢 | タイプ | 記述のポイント | 正誤 |
|---|---|---|---|
| ① | デファクト標準 | 市場支配で定まる標準 | 正しい |
| ② | デファクト標準 | 知財を誰にでもライセンスすべき | 誤り |
| ③ | フォーラム標準 | 有志企業の合意による標準化 | 正しい |
| ④ | フォーラム標準 | 知財をリーズナブルな価格で誰にでも提供 | 正しい |
| ⑤ | デジュール標準 | ISO等の公的機関による標準 | 正しい |
②が誤りである理由は、「デファクト標準における知財のライセンスは義務ではなく、独占も可能」である点です。
試験での留意点
- 「標準のタイプとライセンスの義務」というセットに注目することがポイントです。
- フォーラム標準 → RAND条件(合理的・非差別的)
- デファクト標準 → ライセンスは任意
- デジュール標準は内容よりも「制定主体が公的機関か否か」で判断します。
- 「フォーラム標準」と「デファクト標準」はともに非公的な標準であり、どちらもISOなどの機関とは無関係です。ここで混同しないようにすることが大切です。
この問題は知識の羅列ではなく、「技術とビジネスの交差点」にある判断力を問う設問です。他の標準化やライセンス管理の問題と併せて理解を深めると効果的です。
I-1-20:生体認証と安全性・利便性のトレードオフ
背景にある問い
職場や公共施設でのセキュリティ強化が求められるなか、「パスワードでは限界がある」という声がよく聞かれます。
社員がパスワードを忘れてしまった、他人と共有していた、あるいはICカードを紛失した……そういったヒューマンエラーやリスクは日常的です。
そこで導入が進んでいるのが生体認証です。
指紋や顔、虹彩などの“人の特徴”を利用すれば、「忘れる」「貸す」「盗まれる」といったリスクを軽減できると考えられています。
しかし、生体認証にも「完全な制度」は存在せず、誤認識やプライバシー、利便性の問題が潜在しています。
つまり、どのような認証方法であっても、安全性と利便性のバランスをどうとるかが本質的な問いになります。
キーワードで整理する
このような文脈で問われるのが、生体認証とその周辺概念です。
- 生体認証:指紋・顔・声紋・虹彩・静脈など、身体的特徴や行動特性を用いた個人認証手段のことです。パスワードやICカードのように「知識」や「所持」に頼らないため、利便性が高いとされています。
- 生体認証に関する評価軸として、以下の2つが重要です。
- FAR(False Acceptance Rate):他人を誤って本人と認識してしまう確率(安全性の指標)
- FRR(False Rejection Rate):本人を誤って他人と拒否してしまう確率(利便性の指標)
- 生体認証は、FARとFRRのしきい値を調整することで、目的に応じたバランス設定が可能です。つまり、パスワードと同様に、安全性と利便性のトレードオフ設計ができる認証手法であるといえます。
実際の問われ方
設問では、「生体認証はパラメータ調整ができないため、運用者によるバランス設計ができない」とする②の記述が誤りであるかどうかが問われています。
| 選択肢 | 記述の要点 | 判定 |
|---|---|---|
| ① | 身体的・行動的特徴を利用する | 正しい |
| ② | 安全性と利便性のバランス調整ができない | 誤り |
| ③ | FAR・FRRはゼロにできない | 正しい |
| ④ | 忘れたり紛失したりしないので利便性が高い | 正しい |
| ⑤ | 銀行・空港などでの実用例 | 正しい |
ポイントは、②の「調整できない」とする記述が、**実際には調整可能である(パラメータ設定により可能)**という事実と矛盾していることです。
試験での留意点
- FAR・FRRの概念を押さえておくことで、生体認証に限らず、多くのセキュリティ技術に共通する評価指標が理解できます。
- 「パラメータがない=調整できない」という表現にひっかかりやすいですが、実際にはシステム設定のしきい値によって調整できることが重要です。
- 生体認証は「便利」「安心」という先入観を持ちやすいため、「安全性と利便性は両立しない」という視点を忘れずに持つことが試験対策上も有効です。
この設問は、生体認証技術を単なる便利な仕組みとして捉えるのではなく、設計者・運用者としての視点でリスク評価や制度設計を考える力を問うものです。次の問題でも同様に、キーワードを「思考の武器」として使えるよう整理していきましょう。
I-1-21:マーケティング分析手法の分類と適用場面
背景にある問い
「この商品がなぜ売れたのか」「次に狙うべき顧客はどこか」「うちの強みって何だろう」
──経営や商品企画、営業戦略を検討する中で、こうした問いに直面する場面は少なくありません。
特に、限られた資源をどこに集中すべきかを判断するには、思いつきではなく、客観的な分析フレームが不可欠です。
このとき重要なのは、「何を分析したいのか」に応じて適切な手法を選ぶ力です。
顧客の分類なのか、自社の強みなのか、市場の構造なのか。
それぞれに対応する“型”を理解しておくことで、より説得力ある戦略立案が可能になります。
キーワードで整理する
マーケティングや経営戦略でよく使われる分析手法を以下に整理します。
- RFM分析:**Recency(直近購買日)・Frequency(購買頻度)・Monetary(購買金額)の3軸で顧客を分類する手法です。過去の購買行動に基づき、優良顧客や離反顧客を把握することができます。主にCRM(顧客関係管理)**の文脈で使われます。
- SWOT分析:**Strength(強み)・Weakness(弱み)・Opportunity(機会)・Threat(脅威)**の4象限で、内部環境と外部環境の両面から自社を評価する手法です。汎用性が高く、戦略立案の第一歩としてよく使われます。
- 3C分析:**Company(自社)・Customer(顧客)・Competitor(競合)**の3視点で、マーケティング環境を分析します。特に、ポジショニングや差別化の方向性を考える際に用いられます。
- PPM分析(プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント):市場成長率と相対的市場シェアを軸に製品・事業を分類するフレームです。4象限(花形/問題児/金のなる木/負け犬)に分け、資源配分や撤退判断などに使われます。
実際の問われ方
設問では、各記述(ア~エ)に対し、どの分析手法が対応するかを問う形式です。以下のように整理できます。
| 記号 | 記述内容の要約 | 該当する分析手法 |
|---|---|---|
| (ア) | 購買日・頻度・金額で顧客分類 | RFM分析 |
| (イ) | 強み・弱み・機会・脅威の4区分分析 | SWOT分析 |
| (ウ) | 自社・顧客・競合の3視点での環境分析 | 3C分析 |
| (エ) | 市場成長率と市場シェアによる資源配分 | PPM分析 |
正解の組み合わせは②:RFM分析 → SWOT分析 → 3C分析 → PPM分析
試験での留意点
- 分析手法は目的が命です。「顧客を分類したいのか」「製品ポートフォリオを見たいのか」で手法はまったく異なります。
- SWOT分析と3C分析は、「自社の強みを考える」場面で混同されやすいですが、SWOTは外部環境も含めた定性的整理、3Cはマーケティング視点からの三者比較という違いがあります。
- PPM分析は数値軸(成長率・シェア)をもとに製品分類と戦略判断を行う点で特徴的です。「花形」「問題児」などの4象限を想起できるかがポイントです。
この問題では、「分析フレームの選択が戦略の出発点である」ということが問われています。覚えるだけではなく、「この状況で使うべきはどれか?」という目線を持つことが重要です。
I-1-22:デジタル・コミュニケーション・ツールの分類と機能
背景にある問い
テレワークやハイブリッド勤務が当たり前となった今日、オフィスで顔を合わせる機会が減る一方で、情報共有のスピードや正確性への要求はむしろ高まっています。
こうした中、社内の連絡が「メールだけでは間に合わない」と感じた経験を持つ人は多いのではないでしょうか。
「チャットで送ったつもりが見落とされていた」「ファイルの最新版が誰の手元にあるかわからない」「会議に入れなかった」
──こうしたミスやロスは、ツールの特性を理解せずに使っていることが原因かもしれません。
つまり、ツールの便利さは、その使い方と理解の深さに左右されます。
逆に言えば、用途に応じた適切な選定と運用設計ができれば、コミュニケーションの質は飛躍的に向上します。
キーワードで整理する
このような課題意識のもと、組織で使われる代表的なデジタル・コミュニケーション・ツールを整理します。
- ファイル共有:クラウドやオンプレミス環境を通じて、複数メンバー間でファイルを共同利用する仕組みです。バージョン管理やアクセス制御の機能を持つシステムが主流です(例:Google Drive, Dropbox Business)。
- テレビ会議(ビデオ会議):音声・映像・画面共有を通じて、リアルタイムで会議を行うツールです。テレワークにおける同期的な情報共有に有効です(例:Zoom, Microsoft Teams)。
- ビジネスチャット:チャットベースのリアルタイム・メッセージツールであり、電子メールとは異なる技術基盤(クラウド+Push通信)により、迅速な送受信が可能です(例:Slack, Chatwork)。電子メールより即時性が高く、軽快なやりとりを特徴とします。
- 社内SNS:投稿・コメント・リアクションなど、SNSに近い操作感で、業務上の情報共有や組織内コミュニケーションの活性化を目的とします。社内のつながりやナレッジの可視化にも有効です(例:Yammer)。
- グループウェア:スケジュール管理、ファイル共有、掲示板、ワークフローなど複数の機能を備え、組織全体の業務を一元的に管理・支援する統合ツールです(例:サイボウズ、Microsoft 365)。
実際の問われ方
この設問では、各ツールの定義・機能・技術的特徴に関する記述から、「最も不適切なもの」を選ばせる形式となっています。
以下に誤答となる③を中心に要点を整理します。
| 選択肢 | 内容の主旨 | 判定 | コメント |
|---|---|---|---|
| ③ | ビジネスチャットはメール基盤で、遅延がある | 誤り | チャットはPush型通信であり、メールとは基盤も応答性も異なる |
選択肢③は、技術理解の誤りが前提にある点が不適切とされます。
試験での留意点
- 「即時性・同期性・一元性」などの観点から、用途と機能を区別できるかどうかが問われるポイントです。
- メール vs チャットは混同されやすいですが、実務上でも「即応性」「通知性」「スレッド構造」の違いに注目することが重要です。
- グループウェアと個別ツールの違いも誤認されがちですが、前者は「統合環境」であり、後者は「特化機能」という位置づけです。
この問題は、単なるITリテラシーを問うのではなく、業務の設計者・管理者としての視点を持って、ツールを評価・選定できるかどうかを試す設問です。総合技術監理の文脈でも、情報の使い方を「道具の目線」から整理する視点が求められています。
I-1-23:情報セキュリティの脅威と安全な対応行動
背景にある問い
取引先からのメール、社外でのテレワーク、定期的なバックアップ
──これらは現代の業務においてごく自然な光景です。
しかし、そこには常に「情報セキュリティ」という落とし穴が潜んでいます。
特に巧妙化するサイバー攻撃や標的型メール、そして思い込みによる誤判断。
これらは技術だけでなく、「人の行動」がセキュリティの成否を分ける時代を象徴しています。
大切なのは、最新の脅威を知ること以上に、それに応じた正しい行動を取れるかどうかです。
「知っている」ことと「正しく対応できる」ことの差が、組織のリスクを大きく左右します。
キーワードで整理する
こうした情報セキュリティの行動指針を理解するうえで重要なのが、次の基本概念です。
- 機密性(Confidentiality):許可された者だけが情報にアクセスできる状態。主に暗号化などで保護します。
- 完全性(Integrity):情報が改ざんされていない状態。電子署名などで保証します。
- 可用性(Availability):必要なときに情報にアクセスできる状態。バックアップや障害対策が該当します。
加えて、具体的な脅威に対応する行動原則も重要です。
- ビジネスメール詐欺(BEC):信頼できる送信元を装い、振込先変更などを指示する手口。メール内の電話番号に連絡するのは逆効果となることがあります。
- 標的型攻撃メール:日常的なやり取りを装ったメールで、添付ファイルやリンクから不正プログラムを実行させようとする攻撃。
- 暗号化規格:WEPは旧式で脆弱性が多く、WPA2またはWPA3が推奨される。
実際の問われ方
設問では、現実にありうる5つの行動例のうち、唯一適切な対応を選ばせる形式となっています。
以下に選択肢の要点と判断ポイントをまとめます。
| 選択肢 | 主題 | 誤りの要点 | 判定 |
|---|---|---|---|
| ① | 電子署名と機密性の混同 | 電子署名は完全性の確保であり、機密性には無効 | × |
| ② | バックアップのタイミング | 常時接続のHDDはランサムウェア感染時に同時に暗号化される | × |
| ③ | BEC対策 | メール記載の電話番号が攻撃者のものの可能性がある | × |
| ④ | 無線LANの暗号化規格 | WEPはWPA2よりも暗号化強度が弱く使用非推奨 | × |
| ⑤ | 標的型メールへの対応 | 不審に気づき、開かず報告した適切な対応 | 〇 |
試験での留意点
- 「正しい知識」よりも「誤った判断の見極め」が問われる形式です。すべてを正解にするのではなく、1つだけを正解にする構造であることを意識する必要があります。
- 用語の意味を誤解していると直感的に間違える(例:電子署名=セキュリティ=機密性と思い込む)。
- WEPとWPA2の暗号強度の逆転など、直感と反するポイントを意識して整理しておくと混同を防げます。
- BEC対策では「送信元とは別チャネルで確認する」が原則であり、メール本文の電話番号を信じるのはNGです。
この問題は、日々のちょっとした判断が情報漏えいや業務停止といった重大インシデントにつながる可能性を示唆しています。総監の視点では、「技術・ルール・人の行動」が一体となってリスク対策が成り立つという理解が求められています。
I-1-24:ICTによる生産性向上方策の類型整理
背景にある問い
「ICTで業務効率化を」と聞く機会は多くても、実際にどこから手をつけるべきか、そして何が成果につながるのかは簡単には見極められません。
導入したロボットが現場に馴染まず、逆に業務が複雑化した。AIを使ったが結果の解釈に手間がかかった。こうした経験は多くの現場で共有されています。
そこで重要なのは、「ICT活用の目的と領域を明確に分けて捉えること」です。
ただの技術導入ではなく、どの経営課題を、どう解決するのかという視点から整理することで、戦略的な生産性向上につながります。
キーワードで整理する
図で示されているのは、「主な経営課題」と「ICTによる生産性向上方策」の対応関係です。ここでは次のように4つのタイプに分類されています。
| 区分 | 生産性向上の方向性 | 説明の要点 |
|---|---|---|
| (ア) | 業務の省力化 | 労働力不足・高コスト構造に対し、物理的な人手を代替する手段。例:ロボットの導入 |
| (イ) | 業務プロセスの効率化 | 同じ作業でも、ICTを通じて時間・工程を短縮する。例:ドローン×AIによる工程統合 |
| (ウ) | 既存製品・サービスの高付加価値化 | 既存の資産を活かし、顧客ごとの最適化や魅力向上を図る。例:保険料の個別最適提案 |
| (エ) | 新規製品・サービスの展開 | ICT活用によって得られた知見を新たな事業へ展開する。例:ロボット活用ノウハウの外販 |
これらは、それぞれ**業務の効率性を高める方向(ア・イ)**と、**顧客価値を増やす方向(ウ・エ)**に分かれます。
実際の問われ方
本問では、図中の(ア)~(エ)に、それぞれ該当する**ICT活用の事例(A~D)**を当てはめる形式です。
| 生産性向上方策 | 内容(抜粋) | 該当する事例 |
|---|---|---|
| (ア) 業務の省力化 | 手作業を代替するロボットの導入 | A:垂直多関節ロボットの導入 |
| (イ) プロセス効率化 | 測量~設計までの業務統合・自動化 | D:ドローン+AIでの自動設計 |
| (ウ) 高付加価値化 | 顧客ごとに最適なサービスを提供 | B:走行データに基づく保険提案 |
| (エ) 新規サービス展開 | サービスロボット導入の知見を活かした外販事業の展開 | C:ロボットノウハウの横展開 |
正解は①:A(ア)D(イ)B(ウ)C(エ)
試験での留意点
- ロボット=省力化、AI=効率化、データ活用=価値向上、ノウハウの外販=新展開という整理で選択肢を瞬時にマッピングできるかがカギです。
- **(ア)と(イ)**は混同されがちですが、(ア)は「代替(減らす)」、(イ)は「つなげる(合理化する)」という観点で区別します。
- 一見華やかに見える「ロボットの外販」は、(ア)ではなく(エ)であることに注意が必要です。
この設問では、単なる技術導入ではなく、**経営課題に対する「ICTの解決パターン」**を分類できるかが問われています。戦略・運用・現場技術を結びつける視点が、総監としての着眼点といえます。
安全管理
Ⅰ-1-25:労働安全衛生法と企業の対応責任
背景にある問い
ある現場で、数年にわたって軽微な事故が相次いでいた。
いずれも「重大ではない」とされていたが、職員の間では「いつか大きな事故につながるのでは」という不安が高まっていた。
加えて、ある社員が長時間労働の末にメンタル不調で休職したとき、上司は「個人の弱さ」として片付けようとした。
こうした事態を受けて、経営層に対し「現場の安全と健康管理に対する制度的な対応はできているのか?」という根本的な問いが突き付けられた。
このような場面で、法制度の理解を曖昧なまま放置すると、労災認定や企業名の公表といった社会的影響を招くおそれがあります。
問題の本質は「個人の健康や安全を守る責任が、どこに・どのように制度として位置づけられているか」という点にあります。
キーワードで整理する
こうした問いに答えるには、以下のようなキーワードの理解が不可欠です。
- 労働安全衛生法:職場の安全・衛生を確保し、労働者の健康障害を防止するための基本法。義務の主体は「事業者」であり、個人の努力では補いきれない構造的リスクを制度的に管理することが目的です。
- ストレスチェック制度:50人以上の事業場に義務付けられる、精神的健康リスクの早期発見を目的とした制度。医師・保健師などによる実施が必要であり、結果は労働者本人に通知される。事業者が無断で結果を入手・活用することはできません。
- 精神障害の労災補償:一定の心理的負荷(過重労働、パワハラ等)によって発症した精神障害についても、労災補償の対象となります。厚労省の「精神障害の労災認定基準」に基づき、因果関係は客観的に評価されます。
- 受動喫煙防止措置:労働安全衛生法に基づく措置であり、事業場の規模によらず、原則屋内禁煙等が義務付けられます。喫煙室設置は「義務」ではなく「例外措置」です。
- 企業名公表制度:重大な労働災害を繰り返す企業に対して、厚生労働省が改善計画の提出を求め、企業名を公表する制度。再発防止を促すための行政的手段として位置づけられます。
実際の問われ方
この問題では、「労働安全衛生法に基づく記述として最も適切なもの」を問う形式でした。各選択肢は以下のような構造で構成されています。
| 選択肢 | 観点 | 誤りのポイント |
|---|---|---|
| ① | ストレスチェックの対象範囲 | 全事業者ではなく、50人以上の事業場に限る |
| ② | 結果の取扱い | 労働者本人への通知が先であり、事業者が直接取得できない |
| ③ | 労災補償の範囲 | 精神障害も対象であり、認定基準がある |
| ④ | 受動喫煙対策 | 従業員数ではなく、施設区分と利用実態が基準 |
| ⑤ | 公表制度 | 実在する制度であり、正しい記述(正解) |
このように、各選択肢は「知識の正誤」に加えて、「対象の範囲」「通知の手続き」「義務の主体」「例外条件」などの細部が問われる構造になっています。
試験での留意点
- 「50人以上」と「全事業者」の違いは、選択肢で頻出する引っかけ要素です。数値規定は必ず確認しましょう。
- 本人通知か、事業者取得かといったフローに関する知識は混同しやすく、試験で狙われやすいポイントです。
- 喫煙室の設置義務など、「義務」と「許容(例外)」の違いにも注意が必要です。
- 精神障害の労災補償は、「因果関係が曖昧だから対象外」と誤解されやすい項目です。制度としては対象であり、基準に基づく認定が前提です。
このように、労働安全衛生法に関する出題は「一見もっともらしいが、正確性を欠いた表現」を見抜けるかが問われています。制度の構造、義務の主体、通知の流れ、例外条件の有無など、行政的な制度運用の視点が試されているといえるでしょう。
Ⅰ-1-26:危機管理法制と避難に関する権限・対応
背景にある問い
あるプロジェクトにおいて、拠点施設が洪水・台風・感染症拡大のいずれかの影響を受けるリスクが指摘された。
会議では「誰が避難や外出制限を命令するのか?」「国と地方で指示が食い違ったらどうすべきか?」といった混乱が生じた。
さらに「この地域は原子力施設も近いが、原子力災害時は誰が何をするのか?」という声もあがり、現場のマネジメント層は正確な制度の理解が求められる状況となった。
自然災害、感染症、テロ、原発事故
——それぞれ異なるリスクに対し、別個の法律と対応体制が整備されているが、それらを現場の実務者が混同しがちであることが、対応遅れや誤判断の一因となることがあります。
キーワードで整理する
こうした混乱を避け、制度的な正確さをもって対応するために、以下のようなキーワードを区別して理解することが求められます。
- 災害対策基本法:自然災害全般への対応を規定。避難勧告・指示は市町村長の権限であり、都道府県知事の許可を必要とせず、報告義務がある。災害対応の最前線は市町村です。
- 原子力災害対策特別措置法:原子力緊急事態の宣言権限は内閣総理大臣にあり、原子力規制委員会ではない。宣言後は対策本部が設置され、都道府県や市町村と連携した住民避難が行われます。
- 国民保護法:武力攻撃やテロ等に対する住民保護制度を規定。内閣総理大臣(対策本部長)は警報発令を行う義務があります。対象は自然災害ではなく「人為的脅威」。
- 新型インフルエンザ等対策特別措置法:新型感染症の拡大防止を目的とし、政府対策本部長(内閣総理大臣)は外出の「自粛要請」が可能であり、「命令」までは認められていません。
- 気象業務法:重大な自然災害が予想される場合、気象庁が特別警報を発出します。総理大臣の権限ではなく、行政機関としての気象庁の専門判断に基づくものです。
実際の問われ方
本問では、「危機管理に関する諸法制における避難等に関する記述として最も適切なものはどれか」が問われました。選択肢は似通った形式でありながら、それぞれ微妙に異なる制度的誤りが含まれています。
| 選択肢 | 法律 | 誤りのポイント |
|---|---|---|
| ① | 災害対策基本法 | 許可制ではなく、市町村長の自主判断(知事の「報告」で足りる) |
| ② | 原子力災害対策特別措置法 | 緊急事態の宣言は内閣総理大臣の権限 |
| ③ | 国民保護法 | 対策本部長が警報を発令する義務がある(正解) |
| ④ | 新型インフルエンザ特措法 | 外出自粛の要請は可能だが、「命令」はできない |
| ⑤ | 気象業務法 | 特別警報の発出は気象庁であり、総理ではない |
このように、出題では「誰が」「どのような権限で」「どのような行動をとるか」という三要素の正確な理解が求められます。
試験での留意点
- 誰が宣言・発令するかという点が頻出ポイントです。首相、知事、市町村長、官庁(気象庁など)の権限と役割の違いを押さえることが重要です。
- 命令と要請の違いに注意が必要です。感染症対応では「要請」に留まり、「命令」は原則として認められません。
- 自然災害・人為災害・感染症・原発事故というリスク種別ごとに、法律と権限の組み合わせが異なるため、一括で覚えるのではなく、分けて整理すると誤解が防げます。
- 通称法名と正式名の混同にも注意が必要です。選択肢の中には「通称」で出題されることもありますが、本質的な条文理解が問われています。
危機管理法制に関する設問は、制度の“正確な適用場面”と“権限の所在”を問う構成が多く、知識のあやふやさがそのまま誤答に直結します。日常的には意識されにくい制度の差異を、リスクごとの構造として認識することが理解の鍵となります。
Ⅰ-1-27:地震・津波防災と避難に関する法制度・運用
背景にある問い
ある沿岸地域において、自治体と建設コンサルが共同で防災計画の見直しを進めていた。
打合せで「避難は徒歩が原則か?」「車を使うことを前提にしてもよいのか?」「そもそも津波が来るのは30分後なのか、数時間後なのか?」といった基本的な議論が交わされた。
過去の訓練では自動車渋滞による遅延や、ハザードマップを無視した避難行動も散見され、実務と制度がうまく噛み合っていない実態が浮き彫りになった。
地震・津波対策は、ハード面の整備だけでは不十分であり、現実の避難行動や地域社会の特性を踏まえた計画・制度運用が求められます。問題の本質は「制度の定めと現場の実行可能性をいかに両立させるか」にあります。
キーワードで整理する
このような実務的な問いに対応するには、以下のような基本的知識と概念の理解が必要です。
- 津波避難の原則(徒歩優先):津波からの避難は原則として徒歩。これは、災害時の渋滞や交通事故のリスクを避けるためです。ただし、高齢者・障害者・地理的制約がある地域では、自動車の活用を含めた計画的避難が認められています。
- ハード対策とソフト対策の一体化:防波堤や堤防などのハード的整備と、避難訓練・避難路整備などのソフト対策は、補完的に組み合わせることが原則です。単独で対応しようとする発想は不適切です。
- 津波浸水想定の設定と公表:都道府県知事は、想定浸水区域を設定し、公表義務を負います。市町村の要請によらず、広く共有されるべき情報です。
- 南海トラフ地震の特徴:想定震源域が広域にわたるが、一部地域では数分で津波到達する可能性があるため、即時避難が原則です。1時間以上の猶予があるという理解は誤りです。
- 東海地震の予知と対応:従来は「地震予知情報に基づく警戒宣言」が制度化されていたが、現在ではその予知精度に限界があるとされ、予防的対応から即時的対応への移行が進んでいます。
実際の問われ方
本問では、「地震・津波防災に関する記述のうち、最も適切なものはどれか」という形式で出題されました。選択肢は次のような構成で整理されます。
| 選択肢 | テーマ | 誤りの要点 |
|---|---|---|
| ① | 津波到達時間 | 南海トラフ地震の一部地域では最短4分で到達 |
| ② | ハード・ソフト対策 | いずれか選択ではなく、両者を併用するのが原則 |
| ③ | 徒歩避難の原則 | 正しい記述(正解):徒歩を原則としつつ、自動車も検討対象 |
| ④ | 津波想定の公表 | 都道府県知事が公表する義務があり、市町村の要請は不要 |
| ⑤ | 東海地震の予知 | 予知精度は限定的であり、確度が高いとは言えない |
問題では、実際の法令やガイドラインに基づく制度的な正確さが問われています。
試験での留意点
- **「徒歩原則だが例外あり」**というパターンは、選択肢で頻繁に狙われる構造です。「例外=誤り」と思い込まないようにしましょう。
- 「組み合わせる/併用する」か「どちらか選ぶ」かの二択は、対策の全体性を問う際に使われやすいポイントです。
- **「地震予知の限界」**については、東海地震対策の見直し経緯を踏まえて、過去の考え方と現行制度の違いに注意が必要です。
- 「1時間後に来る」などの時間的認識は、数値を過信せず、地域・地形による差を意識する必要があります。
このテーマは、「現場での合理的判断」が「制度の正確な理解」と両立できるかを問う構成になっています。出題では、行動原則や法的根拠の細部が焦点となるため、「〜である」と断定できる法制度の知識が重要といえます。
Ⅰ-1-28:墜落制止用器具の制度改正と高所作業の安全管理
背景にある問い
ある現場で新しい設備の据え付け工事が始まることになった。
足場の設置が難しい高所作業が予定されており、監督者が「旧来の胴ベルトでもいいか?」とつぶやいたところ、若手が「それってもう使えないんじゃないですか?」と返した。安全担当者が確認すると、数年前に制度改正があったものの、現場の認識が追いついておらず、旧型の器具が混在して使われている実態が明らかとなった。
ここで問われるのは単なる器具の違いではなく、「法令に基づく安全管理」と「現場実務の認識のギャップ」をどう埋めるかという視点です。
現場の安全を形式だけでなく、実効性のあるものとするには、制度変更の趣旨を理解したうえで、適切な教育・運用が求められます。
キーワードで整理する
こうした問いに答えるためには、以下の法改正のポイントを明確に把握しておく必要があります。
- 墜落制止用器具:従来の「安全帯」という呼称を見直し、使用目的を明確に示すために改称された用語です。平成30年公布・平成31年施行の労働安全衛生規則改正によって導入されました。
- フルハーネス型:全身で墜落の衝撃を分散して受け止めるタイプの器具で、2m以上の高所作業では原則としてこちらを使用することが義務化されました。
- 胴ベルト型(一部の使用制限):旧来の胴ベルト型は、墜落時に内臓圧迫や滑脱の危険があるとされ、基本的には使用不可。ただし、一定の条件下(地面接触のリスクがあるなど)では使用可とされています。
- 安全衛生特別教育:フルハーネス型器具を使用する作業者は、原則として特別教育の対象です。器具を使用していれば教育が免除されるわけではなく、「作業環境」と「器具の種類」に応じて教育の要否が規定されます。
実際の問われ方
本問は、「改正後の墜落制止用器具制度における記述として不適切なもの」を選ぶ形式です。各選択肢では制度の適用範囲や例外、教育義務といった法令の詳細が問われています。
| 選択肢 | 論点 | 誤り・正確性 |
|---|---|---|
| ① | 胴ベルト型の危険性 | 正しい(墜落時に内臓損傷リスク) |
| ② | 名称変更と包含関係 | 正しい(名称変更と一部非該当あり) |
| ③ | 使用原則 | 正しい(フルハーネス型が原則) |
| ④ | 例外条件 | 正しい(地面接触のおそれがある場合、胴ベルト型も使用可) |
| ⑤ | 教育義務 | 誤り(フルハーネス型使用者は特別教育が必須) |
このように、問題文は「法改正による運用変更の理解」を前提に、言い回しや制度の例外規定の見極めを求めてきます。
試験での留意点
- 「器具の使用」と「教育義務」の関係を混同しないことが重要です。「フルハーネス型を使っている=教育不要」と考えるのは誤りです。
- **例外規定の条件(墜落時の到達距離など)**は、法令上の細部としてよく問われます。常に「例外には条件がある」ことを念頭に置くと判断が安定します。
- 改正前の知識との混同が起こりやすい問題です。旧来の「安全帯」「胴ベルト」「2点支持」などの用語は過去の経験と結びつきやすく、誤解の温床になりやすい領域です。
- 「名称変更」と「制度変更」のセット理解が鍵です。呼び方が変わっただけではなく、制度設計が変わったことを強く意識しておく必要があります。
このテーマは、法令遵守と現場の実効性のギャップを問う問題構造であり、制度変更の趣旨や背景を理解することが、単なる暗記を超えた対応力に直結します。安全管理分野では特に、「正しい知識を正しい運用につなげる橋渡しの視点」が問われているといえます。
Ⅰ-1-29:フォールトトレランスと高信頼設計の考え方
背景にある問い
設計レビューの場で、若手技術者が「今回のシステム、もし片方の系が止まったら全体が止まる設計ですが問題ありませんか?」と質問した。
上司は「そもそも壊れない設計にしてあるから大丈夫」と答えたが、別の参加者から「“壊れない設計”と“壊れても動く設計”は、別物では?」という指摘があった。
このような場面では、「そもそも何を“信頼性”と呼ぶのか」「どのレベルの障害にどう備えるべきか」という視点が問われます。
設計思想としての故障回避と故障耐性の違いを理解しないまま話を進めると、リスク評価も対策も曖昧になります。
キーワードで整理する
このような問いに明確に答えるために、以下のキーワードの使い分けを理解しておくことが重要です。
- フォールトトレランス(Fault Tolerance)
一部の構成要素が故障しても、全体としての機能を維持し続ける設計思想を指します。
例としては、無停電電源装置(UPS)やRAID構成のディスク装置、二重化システムなどが該当します。重要なのは、「故障があっても止まらない」ことを目的とする点です。 - フォールトアボイダンス(Fault Avoidance)
そもそも故障が発生しないように高信頼部品を使う、ストレスを低減する設計を行うなどの手法です。
故障は起きない前提に近いため、冗長化などはしません。 - フェールセーフ(Fail Safe)
故障が発生したときに、安全側に動作する設計です。たとえば、遮断機が停電で下りるようにしておく、バルブが閉じる方向に作動する、などが該当します。 - フェールソフト(Fail Soft)
一部の機能が失われても、残りの機能で運用を継続する設計です。代表例は双発ジェット機で、一基停止時にも飛行継続可能とするものです。 - フールプルーフ(Fool Proof)
誤操作ができないようにする設計です。たとえば、電池を逆向きに入れられない構造や、シフトレバーをブレーキと連動させる機構などが該当します。
実際の問われ方
この問題では、「フォールトトレランスの例として最も適切なもの」を選ぶ形式です。各選択肢は、類似概念とあえて混同しやすく構成されています。
| 選択肢 | 主な該当分類 | 説明 |
|---|---|---|
| ① | フェールセーフ | 安全側に動作するが、機能は停止 |
| ② | フォールトアボイダンス | 故障しないように設計(冗長化はない) |
| ③ | フォールトトレランス(正解) | 無停電装置で機能を継続 |
| ④ | フールプルーフ | 誤操作を防止する設計 |
| ⑤ | フェールソフト | 縮退運転による継続性確保 |
本問では、「継続的な機能維持」が明確に記述された③が唯一、フォールトトレランスに該当する選択肢です。
試験での留意点
- 「安全を守る」か「機能を維持する」かという軸で整理すると、各設計思想の違いが明確になります。
- **「トレランス=耐える」、「アボイダンス=避ける」**という語感も助けになります。
- 「冗長化」や「バックアップ動作」があるかが、フォールトトレランスとそれ以外を見分ける鍵となります。
- フォールトアボイダンスとトレランスは混同しやすく、“壊れないようにする”と“壊れても動く”は違うという意識を持つことが大切です。
このテーマでは、「信頼性設計」の分類を正しく理解することで、実務での安全確保やシステム設計の議論においても説得力のある判断が可能になります。出題では概念の微細な違いが狙われるため、定義に加えて具体例との対応づけが問われているといえます。
Ⅰ-1-30:リスクマネジメントプロセス(JIS Q 31000:2010)
背景にある問い
ある設計プロジェクトで、管理職が「リスクは洗い出し済みだ」と述べたが、実際には起こりうる損害の深刻さも、発生確率も評価されていなかった。
さらに、それらのリスクをどう扱うかの方針も定まっていなかった。
若手メンバーは「これでリスクマネジメントをしたと言えるのか?」と疑問を持った。
このように、リスクマネジメントを「とりあえず一覧表にする作業」として終わらせてしまう例は少なくありません。
しかし、本質的には、「何をリスクと定義するか」「どれほど深刻か」「どこまで受け入れられるか」「どう対応すべきか」を構造的かつ継続的に扱うプロセスが必要です。
キーワードで整理する
こうした状況を正しく認識するには、JIS Q 31000:2010に基づくリスクマネジメントプロセスの体系的理解が不可欠です。
図示されるプロセスは、以下のような要素で構成されます。
- リスク特定:リスクの源・要因・事象・影響を発見・認識・記述する段階です。何がリスクかを定義する初期工程です。
- リスク分析:特定されたリスクの性質や原因・影響の大きさ・発生確率を評価し、**リスクレベル(程度)**を明らかにします。リスクレベルとは、結果の重大性とその起こりやすさの組合せで表現されます。
- リスク評価:分析結果を、あらかじめ設定された**リスク基準(受容可能性の境界)**と比較し、対応の要否を判断します。
- リスク対応:リスクを回避・低減・移転・受容などの方法で扱う段階です。ここで具体的な意思決定と行動が求められます。
- コミュニケーション及び協議:関係者との継続的な情報共有と対話を通じ、合意形成と透明性を確保するプロセスです。
- モニタリング及びレビュー:状況の変化や実施状況を継続的に監視し、必要に応じてプロセスを見直す活動です。
- 組織の状況の確定:外部・内部環境や目的、ステークホルダ、制約条件などを明確化し、リスクマネジメントの前提を定めます。
実際の問われ方
本問では、「JIS Q 31000:2010に基づくリスクマネジメントプロセスの記述として不適切なものはどれか」が問われています。
構造の中で混同しやすい用語や概念が、選択肢に巧妙に配置されています。
| 選択肢 | 評価 | 誤りのポイント |
|---|---|---|
| ① | 正しい | リスク源・要因・結果の記述まで含む |
| ② | 誤り(不適切) | リスクレベルの定義が**「結果の大きさ」だけ**で構成されており、起こりやすさ(確率)との組合せが抜けている |
| ③ | 正しい | リスク基準との比較により、受容可否を判断 |
| ④ | 正しい | コミュニケーションは継続的で双方向的な対話 |
| ⑤ | 正しい | モニタリングは状態の観察・判断を通じてギャップを特定 |
このように、用語の定義や構成要素の一部だけを使った誤記述に注意する必要があります。
試験での留意点
- リスクレベル=影響度 × 発生確率という構造を押さえると、②の誤りが見抜きやすくなります。
- リスク評価は意思決定に関わる工程であるため、「分析結果に基づく比較と判断」が含まれることを忘れないようにしましょう。
- モニタリングとレビューは、単なる結果確認ではなく、「変更や改善につなげるフィードバック機構」である点を強調しておくと理解が深まります。
- “分析”と“評価”の混同がよく見られます。前者は情報の解釈、後者は価値判断です。
このテーマは、単なる用語の暗記ではなく、プロセス全体の論理構造を理解しているかどうかが試されます。実務でも、どのリスクにどう対応すべきかを説明できるようになるには、こうした思考の型を身につけておくことが有効です。
Ⅰ-1-31:安全設計と安全対策の基本的考え方
背景にある問い
ある設備改修プロジェクトで、設計部門から「非常停止ボタンを機械の背面にしか設けられない」という案が提出された。
それに対して現場の作業員は「万一のときすぐに押せなかったら意味がない」と異議を唱えたが、設計側は「コストもスペースも限られているので仕方ない」と返した。
このやりとりから浮かび上がるのは、「安全対策」とは単に機器を配置することではなく、その設置意図や意味を理解し、使われる状況を想定した設計がなされているかどうかという問いです。
さらに、そもそも危険を作り込まない「本質的安全設計」の視点が欠けていれば、対処療法的な対策ばかりが先行する危険があります。
キーワードで整理する
このような実務課題に的確に向き合うには、以下の概念を体系的に理解しておく必要があります。
- 4M分析:事故や災害の原因を、**Man(人)、Machine(設備)、Media(環境・作業条件)、Management(管理体制)**という4つのカテゴリで分析する手法です。人的・物的・情報的・制度的要因をバランスよく見つめるフレームワークとして使われます。
- 4E対策:安全対策を4つのEで捉える考え方。
- Education(教育):安全意識の向上、訓練の充実
- Enforcement(強制・規律):ルールの徹底
- Example(模範):上位者の姿勢や行動が模範となる
- Engineering(工学的対策):設計や装置の工夫による対策
- ALARP(As Low As Reasonably Practicable):合理的に実行可能な限り、リスクを低減すべきであるというリスク許容の原則です。非常停止装置に限定された考え方ではなく、あらゆるリスク対策の妥当性評価に使われます。
過剰な安全対策と費用のバランスを見極める際の判断基準として使われるのが特徴です。 - 本質的安全設計方策:保護装置に頼らず、危険そのものを設計で除去・回避する思想です。刃が露出しない構造にする、回転数を安全域に制限する、といった方法が該当します。
- 危険検出型センサーの限界:センサーが故障して危険を正しく検出できない場合、安全側に機械を停止する設計(フェールセーフ)になっていなければ事故につながるおそれがあります。センサーの信頼性に過度に依存することはリスクを伴います。
実際の問われ方
この問題では、「工場・現場における安全設計・対策に関する記述として最も不適切なもの」が問われています。選択肢には、定義の誤用や、限定的な解釈が仕込まれています。
| 選択肢 | 評価 | 解説 |
|---|---|---|
| ① | 適切 | 4Mの分類と内容は正確 |
| ② | 適切 | 4Eそれぞれの要素も妥当 |
| ③ | 不適切(正解) | ALARPは非常停止装置の考え方ではなく、リスク低減の原則 |
| ④ | 適切 | センサー故障による検出失敗のリスクと機械停止の因果が妥当 |
| ⑤ | 適切 | 保護装置を用いない設計変更による危険除去は本質的安全設計の定義に合致 |
試験での留意点
- 用語の適用範囲に関する誤解が出題されやすい領域です。ALARPのように、特定装置の原則と誤って結びつけられる選択肢には注意が必要です。
- 「安全を守る設計」と「安全を作り込まない設計」(=本質的安全設計)との違いも、選択肢を見抜くヒントになります。
- **分析(4M)と対策(4E)**を混同しないよう整理しておくことも大切です。
この分野では、設計思想・分析フレームワーク・運用原則が混在する中で、それぞれの役割と適用範囲を区別して理解する力が求められます。選択肢では、部分的に正しい内容が含まれていても、全体として不適切な記述となっている場合があるため、用語の定義と目的を明確に意識する視点が問われているといえます。
Ⅰ-1-32:フォールトツリー分析(FTA)と論理的な事象の組合せ評価
背景にある問い
ある装置で事故が発生した際、「装置が止まった原因は何だったのか?」という議論が始まった。
保守部門は「X4が原因では」と主張し、運転員は「でもX3が起きなければ全体停止は起こらなかったはず」と反論。
技術管理者は、「論理的に考えれば、どの要素が単独で必須か、どう組み合わさるかは明確に表現できる」として、過去の保全記録をもとにフォールトツリー図を用いた検証を提案した。
このような場面では、個別の要因を挙げるだけでなく、それらがどのように組み合わさって全体の障害に至ったかを論理構造で明示することが重要です。
主観や経験のみに依存する判断では、再発防止にも設計改善にもつながらないからです。
キーワードで整理する
このような場面を論理的に整理するために用いられるのが フォールトツリー分析(Fault Tree Analysis, FTA) です。
- フォールトツリー分析(FTA)
システムの障害(頂上事象)に至る原因事象の論理構造をAND/ORゲートで図式化し、全体としてのリスク評価や弱点抽出に用いる手法です。
原因が一つでも生じれば上位事象が発生する「ORゲート」、複数の事象が同時に成立しなければ発生しない「ANDゲート」を組み合わせて構成されます。 - 頂上事象(Top Event):最も上位に位置する「起こってほしくない事象」例:事故、機能喪失など。
- 中間事象(Intermediate Event):上位事象の一部原因となる複合事象。
- 原因事象(Basic Event):中間事象や頂上事象の直接の原因となる最下層の要素。
- AND/ORの解釈:
- AND:すべての入力事象が発生しないと、上位事象は発生しない
- OR:いずれか1つ以上の入力事象が発生すれば、上位事象が発生する
実際の問われ方
この問題では、提示されたフォールトツリー(図)に基づき、「頂上事象 T が必ず発生する条件」を選ぶ形式です。論理ゲートの意味を正確に理解していないと、「多数起きればよい」という直感的誤解に陥りやすい構成になっています。
構造要約(図から読み取れる論理):
- 頂上事象 T は A1 AND A2
- A1 は(X1 OR X2)AND X3
- A2 は X4 OR X5
T を発生させるには、
- A1のすべて →(X1 または X2)かつ X3
- A2のどちらか → X4 または X5
が同時に成立する必要があります。
| 選択肢 | 評価 | 補足 |
|---|---|---|
| ① | × | X3の発生が前提条件だが、「いずれか4つ」では条件を満たさない可能性あり |
| ② | × | 「X1またはX2」+「X4とX5」だけでは、X3が含まれず A1が成立しない |
| ③ | × | 「X1とX2のどちらか2つ」でも、X3がなければ不十分 |
| ④ | × | X3が「いずれか3つ」に含まれているかが曖昧で不確定 |
| ⑤ | 〇(正解) | X3を明確に含み、A1(X1またはX2とX3)とA2(X4またはX5)が成立する |
試験での留意点
- AND条件には「必須要素」があることを見落とさないことが重要です。X3のように「必ず含まれていなければならない事象」があるとき、「いずれか」の表現に注意を要します。
- **数量ベースの選択肢(〜個以上)**は誤答を誘う典型パターンです。構造を無視した直感的判断に誘導されないように注意してください。
- ORは緩やかだが、ANDは厳格という構造理解を常に念頭に置くと、組合せパターンの妥当性判断がしやすくなります。
このテーマは、システム安全・リスク評価における論理的思考の厳密さが問われる領域です。直感よりも構造、経験よりも因果、という視点の切り替えを身につけることが、設問を正確に読み解く鍵となります。
社会環境管理
Ⅰ-1-33:SDGsと2030アジェンダ
背景にある問い
「SDGsって、なんとなく“環境に優しい”とか“発展途上国支援”みたいなイメージだけど、それって日本の企業にも関係あるのか?」
ある製造業の企画会議でこんな話題が出たとき、誰も明確に答えられなかった。
SDGsのロゴは見かけるけれど、自社がどの目標に関係しているのかは不明確。環境報告書やCSR活動の中で「なんとなく触れる」程度になっている企業も少なくない。
しかしSDGsは、単なる国連の“お題目”ではなく、経済活動の方向性を示すグローバルな共通言語です。
業種を問わず関係し、調達・投資・開発方針にも影響を及ぼすフレームワークといえます。
キーワードで整理する
このような“漠然とした印象”に対し、整理の軸となるのが以下のキーワードです。
- SDGs(Sustainable Development Goals):2015年の国連サミットで採択された2030年までの持続可能な開発目標。17の目標と169のターゲットで構成され、すべての国・すべての人を対象とする。
- 2030アジェンダ:SDGsの基礎文書。前身である「ミレニアム開発目標(MDGs)」の後継で、途上国支援中心だったMDGsと異なり、先進国も積極的な取り組みが求められる。
- 5つのP(People, Planet, Prosperity, Peace, Partnership):2030アジェンダにおける基本理念。SDGsの各目標はこの5つの価値観に沿って整理されている。
- グローバル・パートナーシップ:国際協力の枠組み。国家間だけでなく、民間企業・NGO・自治体など多様な主体が連携することが求められる。
- 日本のSDGs実施指針:国内外の優先課題を整理した日本独自の実行計画。全ての優先課題は国内実施と国際協力の双方を含む。
特に重要なのは「先進国と途上国で目標が分かれていない」点です。すべての目標が全ての国に共通であり、普遍性(universality)がSDGsの特徴です。
実際の問われ方
以下のように「用語の意味や構成要素」「理念とキーワードの対応関係」「制度設計上の特徴」が問われます。
| 出題観点 | 例 | 補足 |
|---|---|---|
| 制度の基本構造 | SDGsは2030年までの国際開発目標である | MDGsからの流れも問われる |
| 基本理念との対応 | 5つのPと各ゴールの関係性 | 17目標=5Pを具現化 |
| 制度の対象範囲 | 途上国・先進国ともに対象 | ④のような「区分制」は誤り |
| 実施主体の多様性 | グローバル・パートナーシップ | ODAや民間資金も含む |
④の選択肢では、「先進国向けと途上国向けに目標が区分されている」という記述がされていますが、これはSDGsの“普遍性”という理念に反しており、最も不適切です。
試験での留意点
- MDGsとSDGsの違いは問われやすいポイントです。MDGsは「途上国支援」が中心、SDGsは「すべての国」が対象。
- 5つのPの言葉自体が問われることは少ないものの、それに対応する理念やゴールとのつながりが問われることがあります。
- 国内外の二重の実施視点(日本のSDGs指針における)も確認しておくと、他選択肢への対応力が高まります。
- 言葉のイメージ先行で正誤判断すると誤る可能性があります。たとえば「途上国支援の話だから区分があって当然」といった先入観には注意が必要です。
SDGsは“国連の文書”というよりも、“国際社会の設計図”。それにどう貢献するかが、企業や技術者にも求められている視点です。
Ⅰ-1-34:第5次エネルギー基本計画と電源分類
背景にある問い
「電力の安定供給が大事なのはわかる。でも結局、原子力って使う方向なの?それとも再エネ?石炭は廃止?水素って本当に使えるの?」
エネルギー政策の議論は、技術的な知識だけでなく、政治的・経済的な選択とも深く結びついています。
現場では「エネルギーコスト削減」「BCP対策」「カーボンニュートラル対応」など、それぞれの立場で“正しさ”が語られます。
しかし、その前提として必要なのは、国のエネルギー政策がどのような基本方針のもとで構成されているのかを俯瞰的に理解しておくことです。
第5次エネルギー基本計画は、そのための軸となる文書の一つです。
キーワードで整理する
- 第5次エネルギー基本計画:2018年7月に閣議決定された中長期的な国家エネルギー戦略。基本方針として、「S+3E」(安全性+エネルギーの安定供給・経済効率性・環境適合性)を軸に、再生可能エネルギーの主力電源化、水素利用の促進、原子力の活用などが盛り込まれている。
- S+3E:
- Safety(安全性)
- Energy security(安定供給)
- Economic efficiency(経済効率性)
- Environment(環境適合)
この4つのバランスがエネルギー政策の柱とされている。
- 多層的な供給構造:各エネルギー源の強みと弱みを相互補完する供給体系。多様性と冗長性によって、災害や国際情勢の変動にも強いエネルギー体制を目指す。
- 電源分類(ベースロード/ミドル/ピーク):
- ベースロード電源:原子力、石炭、地熱など。安定・低コストで24時間稼働。
- ミドル電源:LNG(天然ガス)、一般水力など。変動に対応可能。
- ピーク電源:石油、揚水式水力など。急激な需要変化に即応。
- 水素エネルギー:再エネとの組み合わせで脱炭素に貢献する次世代エネルギー。貯蔵性・運搬性に優れ、燃焼時に温室効果ガスを排出しない。
実際の問われ方
本問では「基本方針」「電源の分類」「新エネルギーの評価」などが混在して出題されています。
| 選択肢 | 主題 | 出題の意図 |
|---|---|---|
| ① | S+3Eの基本理念 | 誤りなし(軸の理解を問う) |
| ② | 多層的供給構造 | 誤りなし(構造的理解) |
| ③ | 競争の活性化と地域参入 | 誤りなし(制度面) |
| ④ | 電源分類の誤記(石炭・石油) | 誤り(分類知識) |
| ⑤ | 水素エネルギーの位置付け | 誤りなし(将来性評価) |
ポイントは④の記述。
石炭はベースロード電源に分類され、石油はピーク電源。この分類の誤りが正答の根拠となります。
試験での留意点
- 電源分類(ベース・ミドル・ピーク)の具体例は、感覚的に混同しやすい部分です。以下のように整理しておくと良いでしょう。
| 区分 | 主な電源 | 特徴 |
|---|---|---|
| ベースロード | 原子力、石炭、地熱 | 安定・連続・低コスト |
| ミドル | LNG、一般水力 | 柔軟な調整運転が可能 |
| ピーク | 石油、揚水式水力 | 高コスト・迅速応答 |
- 「水素は環境に良い=効率も良い」と思いがちですが、エネルギー効率自体は低いとの指摘もあります。ここではあくまで将来的な“期待”という文脈で評価されている点に留意が必要です。
- 記述問題では「安全性・供給安定性・経済性・環境性」のトレードオフ構造が問われることもあるため、S+3Eのバランス構造はキーワードとしても位置づけとしても理解しておくべき要素です。
エネルギー政策は「これが正しい」と決めるものではなく、どこでバランスを取るかが本質的な問いといえます。試験でも、そうした視点をもとに制度や分類が問われています。
Ⅰ-1-35:循環型社会形成推進基本法と循環資源の位置づけ
背景にある問い
「環境配慮って言うけど、リサイクルすれば全部いいのでは?」
ある製造部門で、廃棄物処理コストが話題になった際に、若手がそう発言した。
確かにリサイクルは重要なキーワードだが、それが“万能の正解”ではないことは実務ではよくある。
現場では、リユースとマテリアルリサイクルの選択、サーマルリサイクルの是非、処分コストと炭素排出量のトレードオフなど、判断を迫られる場面が多い。
その根底には、「廃棄物をどう位置付けるか」「何を優先するか」という原則が存在している。
これは、単なる環境意識ではなく、法律の構造として明示された考え方である。
キーワードで整理する
- 循環型社会形成推進基本法:2000年に制定された、廃棄物の排出抑制、循環的な資源利用、環境負荷低減を基本理念とする枠組法。関係者(国・自治体・事業者・国民)の役割分担も規定されている。
- 3R(リデュース・リユース・リサイクル):
- リデュース(発生抑制)
- リユース(再使用)
- リサイクル(再生利用)
の総称であり、循環型社会を構成する中核概念。
- 優先順位の原則(排出抑制 → 再使用 → 再生利用 → 熱回収 → 最終処分):環境負荷と経済合理性の観点から設定されており、技術的・経済的な可能性を前提にこの順に対応することが求められる。
- 循環資源:廃棄物のうち、再使用や再生利用など循環的な利用が可能なもの。法的には「廃棄物」の一部であり、「廃棄物に当たらない」とするのは誤り。
実際の問われ方
以下のように、「循環資源の定義・範囲」「処理の優先順位」「主体の責務」がよく問われます。
| 観点 | 問われる内容 | 該当選択肢(例) |
|---|---|---|
| 概念定義 | 循環資源=廃棄物の一部か? | ④ → 誤り(最も不適切) |
| 優先順位 | 技術的・経済的に可能な範囲で、リユース優先か? | ③ → 正確 |
| 主体の責任 | 事業者がどこまで責任を持つか? | ①・⑤ → 基本原則の確認 |
とくに④は、「循環資源=廃棄物ではない」という誤認を誘う記述となっており、用語の定義を知らないと誤答しやすい選択肢です。
試験での留意点
- 「循環資源」と「廃棄物」は排他的ではないという点に注意が必要です。循環資源は廃棄物の中の有用な部分であり、法的にも廃棄物と認定され得ます。
- 「熱回収」や「適正処分」は3Rに含まれない点も混同しやすい箇所です。以下のように整理するとわかりやすくなります。
| 優先順位 | 処理方法 | 該当用語 |
|---|---|---|
| 第1 | 発生抑制 | リデュース |
| 第2 | 再使用 | リユース |
| 第3 | 再生利用 | リサイクル(マテリアルリサイクル) |
| 第4 | 熱回収 | サーマルリサイクル(3Rではない) |
| 第5 | 最終処分 | 埋立など |
- 資源有効利用促進法(資源有効法)と混同しないことも重要です。循環型社会形成推進基本法が“枠組み法”である一方、資源有効法は製品ごとの具体的な措置(設計変更や使用済み製品の回収など)を定めた“実行法”にあたります。
用語や法律の“意味合い”だけでなく、それがどのような“優先順位”や“対象範囲”のもとで運用されているかを理解することが、選択肢の正誤判断につながります。
Ⅰ-1-36:福島第一原発事故と放射性物質による環境回復状況
背景にある問い
「原発事故から10年以上経ったけれど、環境ってどれだけ回復したのか?」
業務で福島周辺のインフラ更新に関わる中で、現地に入る技術者からこうした疑問が上がることがある。
除染や線量低減が進んでいるとは聞くが、どの地域が安全で、どこがまだ制限区域なのか、あるいは水質・土壌の放射性物質の残存状況について、定量的に把握している人は案外少ない。
技術者として現地対応する場合、こうした環境回復の定量評価に基づく基礎知識が求められる。
キーワードで整理する
今回の設問では、「放射性セシウムの動態」「空間線量率の経年変化」「除染・解除の進捗状況」といった、多面的な評価が問われています。これらは以下のようなキーワードで整理できます。
- 面的除染(除染実施計画):環境省などが主導し、市町村単位で実施される大規模除染。帰還困難区域を除き、2018年(平成30年)3月までに完了している。
- 汚染状況重点調査地域の指定解除:指定された市町村のうち、条件を満たした15市町村が既に指定解除済み(問題文②は誤り)。
- 放射性セシウム(Cs-134およびCs-137):水質のモニタリングでは、水中では不検出が増加傾向。福島県内では一部検出されるが、周辺県では2013年度以降ほぼ不検出。
- 底質の放射性セシウム:周辺県においても一部で検出事例あり(④は誤り)。底質は水質よりも長期間にわたって残留しやすい。
- 空間線量率:航空機モニタリングなどにより継続測定。2011年比で2016年時点では約77%減少しており、自然減衰や気象要因による減少も大きく寄与している(⑤は誤り)。
実際の問われ方
出題の観点は「環境回復の事実確認」にありますが、その中には用語の理解と、行政的な進捗状況の把握も含まれています。
| 観点 | 出題意図 | 該当選択肢 |
|---|---|---|
| 除染の進捗 | いつ完了したか、どこが対象か | ①(誤り) |
| 指定地域の解除状況 | 対象市町村の数・解除の有無 | ②(誤り) |
| 水質の回復傾向 | セシウムの検出率の推移 | ③(正答) |
| 底質の残留状況 | 福島以外の検出有無 | ④(誤り) |
| 空間線量率の実測と予測比較 | 減衰の度合いとその要因 | ⑤(誤り) |
③は「水質において周辺県では不検出、福島県では減少傾向」としており、モニタリングデータに基づく正確な記述です。
試験での留意点
- 「除染完了=安全」ではない点に注意が必要です。面的除染が完了していても、帰還困難区域や局所的な高線量地点が残る場合があるため、線量の実測データが常に重視されます。
- 水質と底質の違いも出題上のポイントです。水質は比較的早く放射性物質が流出・希釈されるのに対し、底質は粒子に吸着して長期間残留しやすい傾向があります。
- 航空機モニタリングによる空間線量率の変化は、時間経過による自然減衰(物理的半減期)と気象影響(雨風・雪など)による洗浄効果の複合であることを前提に整理しておくと理解が深まります。
放射性物質の環境動態は、科学的モニタリングと行政対応の両輪で進められています。総合的な技術監理の視点では、こうした「数字に基づく回復状況」を把握し、現場対応に活かす姿勢が問われています。
Ⅰ-1-37:環境政策の原則と取組方法の考え方
背景にある問い
「環境にやさしいことをやるべきなのは当然として、どこがどこまで責任を持つべきなのか?」
地方自治体の開発許可申請に際して、環境アセスメントの観点から都道府県と市町村の責任分担が議論になったことがある。
住民からの環境苦情は市町村に寄せられる一方、広域的な調整は県が主導する構図になりがちで、「どちらがどこまで担うべきか」が不明確なまま押しつけ合いになる場面もある。
こうした曖昧さに対し、環境政策の原則には明確な“考え方の枠組み”が用意されており、そこを踏まえて対応することで、責任と役割を合理的に整理できる。
キーワードで整理する
- 源流対策の原則(予防原則):環境負荷は「出さない」ことが最優先という考え方。製品設計や原材料選定の段階から環境配慮を組み込むことを促す。
- 協働原則:環境政策は行政だけでは成り立たない。民間・市民・NPOなどの多様な関係者が企画・立案・実行の段階で対等に関与する仕組みを求める。
- 補完性原則:原則は基礎的な行政単位(市町村)が優先的に担い、それで対応困難な場合に広域行政単位(都道府県・国)が補完するという考え方。
※③の誤りは、この上下関係が逆に記述されている点。 - 未然防止原則:「問題が起きてから対応」では遅い。リスクの兆候段階で科学的知見に基づく措置を講じることを重視する。
- 予防的アプローチ(予防原則/予見的対応):不確実な状況下でも、対策を遅らせず、仮説的にでも対応することを正当化する考え方。科学的知見が不十分でも、必要な措置を講じることを否定しない。
実際の問われ方
この問題では、「原則」の定義や考え方の構造そのものが問われています。特に下表のように、それぞれがどのような意図で設計されているのかを理解することが重要です。
| 原則名 | 意図 | 対象となる局面 | ポイント |
|---|---|---|---|
| 源流対策 | 汚染の発生源を抑える | 設計・製造段階 | 上流対策を重視 |
| 協働原則 | 多様な主体の関与 | 企画〜実行全体 | 市民参加・説明責任 |
| 補完性原則 | 小さな単位が主導 | 地域課題への対応 | 誤って広域主導としやすい |
| 未然防止 | 兆候段階で措置 | 汚染拡大の予防 | 科学的判断の活用 |
| 予防的アプローチ | 不確実でも対応 | 科学的知見が不足する場合 | 対策遅延を避ける |
③の補完性原則の説明が、「広域行政単位を優先」と誤っている点が最も不適切です。
試験での留意点
- **補完性原則と subsidiarity(補完性)の混同に注意が必要です。EUの政策原理とも重なる用語ですが、「できるだけ身近なレベルで解決」**が本質です。
- 予防原則と未然防止の違いも混同しやすい点です。
- 未然防止は「支障が起きる前に行動する」
- 予防的アプローチは「確実ではないがリスクがあるなら動く」
という違いがあり、確実性の有無がポイントになります。 - 協働原則は単なる“住民参加”にとどまらない点も重要です。立案段階からの関与や、結果への影響力も含む“政策共同体”の考え方です。
環境政策の原則は「価値観」ではなく、「制度と行動の設計図」です。誰が、どの段階で、何に基づいて判断するのかという構造理解が、選択肢判断に直結します。
Ⅰ-1-38:環境影響評価法における第一種事業の手続き順序
背景にある問い
「環境アセスって、結局いつ、誰が、どんな資料を出すのか?」
インフラ整備や大規模開発の計画段階で、環境アセスメントが必要になると聞いたが、どこまでやればいいのか判断がつかない。
発注者は「法に基づいて手続きしてほしい」と言う一方で、設計側は「具体的な評価項目が分からない」と戸惑う。
このような混乱は、環境影響評価の法的プロセスと文書体系が正しく理解されていないことに起因している。
キーワードで整理する
- 環境影響評価法(環境アセスメント法):一定規模以上の開発事業(主に第一種事業)において、環境への影響をあらかじめ評価し、住民・行政・専門家の意見を反映させた上で計画を決定する手続法。1997年に制定、2011年に大幅改正。
- 第一種事業:発電所、空港、道路、ダムなど、環境影響が大きいと想定される事業。すべて環境アセスの手続きが義務付けられる(スクリーニング不要)。
- 配慮書(計画段階環境配慮書):計画段階での環境への配慮方針や想定される影響の概要を示す最初の文書。2011年改正で導入。
- スコーピング:どの環境項目を重点的に評価するか、対象範囲や方法を特定する作業。準備書に向けた実質的評価の設計段階。
- 調査・予測・評価:現地調査、将来影響の予測、予防・緩和策を含む具体的な技術的分析。
- 準備書:実際に行った評価内容を記載し、環境保全措置や代替案を含む文書。公開され、意見聴取を経て最終判断へ進む。
実際の問われ方
以下は、第一種事業における標準的な手続きの流れです。
| 手続段階 | 内容 | 対象文書 |
|---|---|---|
| ① 計画段階の配慮 | 影響の全体像を早期に示す | 配慮書 |
| ② 評価項目の確定 | 調査対象・方法の特定 | スコーピング |
| ③ 評価作業 | 現地調査・予測・評価 | – |
| ④ 結果の取りまとめ | 詳細な評価結果・措置案 | 準備書 |
正答の選択肢④(配慮書 → スコーピング → 調査・予測・評価 → 準備書)がこの流れに対応しています。
試験での留意点
- スクリーニングは第一種事業には適用されない点に注意が必要です。スクリーニングは第二種事業(中規模事業)のみに関連し、「影響が大きいか否か」を判断する予備段階です。
- 文書名と作業内容が混同されやすい構造になっています。たとえば、「調査・予測・評価」はあくまでプロセスであり、それ自体が「書面」ではありません。
- 「スコーピングの後に調査を行う」が正しい流れです。順番が逆になる選択肢(⑤など)は典型的なひっかけです。
- 計画段階配慮書が最初に出されることを押さえておくと、思考の起点が明確になります。
環境アセスメントは、単なるチェックリストではなく、「手続きの質」と「住民・専門家の合意形成」を含んだ計画手法です。評価作業の段取りと文書の役割を正確に理解することが、制度全体の読み解きの鍵になります。
Ⅰ-1-39:企業の環境管理活動とその用語の理解
背景にある問い
「環境に配慮してます、と言うけれど、それって実際どこまでやっているのか?」
ある取引先がESG対応を強調していたが、提出された環境報告書には抽象的な表現ばかり。
現場では再エネを使っていないし、従業員への環境教育も行われていない。
一方、投資家からは「非財務情報も評価対象」との声が高まっており、企業の環境対応はPRではなく投資判断や市場競争力に直結する要素となっている。
こうした背景のもとで、環境対応をどう“見える化”し、管理し、評価されていくかが問われている。
キーワードで整理する
こうした企業の環境対応に関する枠組みは、次のような用語で整理されます。
- 社会的責任投資(Socially Responsible Investment:SRI):財務的指標(収益力・成長性)に加えて、**環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)**といった非財務的要素も考慮して行われる投資行動。⑤が正答。
- 環境会計:企業活動において環境保全に要したコストやその効果を貨幣または物量で測定・開示する手法。経営管理のツールであり、税制優遇の申請手段ではない(①は誤り)。
- 環境報告:企業の環境配慮活動を広く社会に開示する報告書全般を指す。法定報告書ではなく、任意に発行されるCSR報告書や統合報告書の一部である(②は誤り)。
- カーボンフットプリント:製品やサービスのライフサイクル全体における温室効果ガス排出量をCO₂換算で**「見える化」**する取組。報告制度ではなく表示・管理手法である(③は誤り)。
- 環境マネジメントシステム(EMS):ISO14001等を代表とする、企業が自主的に環境方針を定め、目標達成のためのPDCAを運用する仕組み。法令対応のチェックシステムに限定されない(④は誤り)。
実際の問われ方
出題では、用語の定義とその誤認されやすいポイントが問われています。
| 選択肢 | 該当用語 | 誤りの主な理由 |
|---|---|---|
| ① | 環境会計 | 目的を「税制優遇」と誤解 |
| ② | 環境報告 | 法定報告制度と混同 |
| ③ | カーボンフットプリント | 排出段階を「消費時」に限定 |
| ④ | 環境マネジメントシステム | 法令遵守のみに限定 |
| ⑤ | 社会的責任投資 | 正答(非財務要素も評価) |
試験での留意点
- カーボンフットプリントとLCA(ライフサイクルアセスメント)は混同しやすい概念です。両者は近い関係にありますが、フットプリントはCO₂排出の見える化に特化している点が特徴です。
- **環境マネジメントシステムは「自主的取組」**であることを押さえると、法令の網羅性を強調する記述(④)の誤りに気づきやすくなります。
- **環境報告とPRTR制度(化学物質排出届出制度)**を混同しないよう注意が必要です。後者は法定制度であり、前者はCSRの一環です。
企業の環境対応は、単なる“善意”ではなく、“投資対象”としての信用にもつながる管理行動です。評価や報告の手段を正しく理解することが、環境リスクと企業価値を橋渡しする力となります。
Ⅰ-1-40:大気汚染物質と環境基準の達成状況(平成22〜28年度)
背景にある問い
「ディーゼル車ってもうだいぶ減ったのに、大気汚染って今どうなっているのか?」
都市部の再開発計画や物流業界のグリーン化議論で、排ガス規制の影響が話題になることがある。
しかし、最新の状況を知らないまま「PM2.5は今もひどい」「NO₂はまだ基準超えてるのでは」といった印象論で議論されがちである。
実際には、排出源対策と車両性能の向上によって多くの大気汚染物質の達成率は大きく改善している。
環境基準の達成状況を把握することは、現実の環境管理の成果を認識し、次の課題(例:光化学オキシダント、越境汚染など)へ思考を進める起点となる。
キーワードで整理する
- 環境基準の達成状況(大気汚染):環境省が毎年公表している測定データに基づき、各汚染物質についての達成率を把握することができる。とくに**自動車排出ガス測定局(自排局)**のデータは都市部の排出源に直結する。
- 二酸化窒素(NO₂):かつてはディーゼル車などによって環境基準未達が続いていたが、近年は9割以上の測定局で基準を達成(①は正しい)。
- 浮遊粒子状物質(SPM):かつて深刻な状況であったが、対象期間中は達成率がむしろ改善し、平成27年度には全局達成。「達成率が約1割」という②は誤りであり、これが正答。
- 微小粒子状物質(PM2.5):年による変動がありつつも、全体としては達成率が向上。平成28年度時点で約9割の局が達成(③は正しい)。
- 光化学オキシダント(Ox):気象条件に左右される性質が強く、対象期間を通じてほぼ全ての年で達成率は1割未満(④も正しい)。対応の難しさが際立つ。
- 二酸化硫黄(SO₂):火力発電や工場などが主な発生源だが、脱硫技術の進展や燃料転換により、近年は全測定局で基準達成(⑤も正しい)。
実際の問われ方
この設問では、以下のように「物質別の達成傾向」が主な出題軸となっています。
| 物質名 | 達成傾向(H22〜28) | 該当選択肢 |
|---|---|---|
| NO₂ | 安定的に高達成率(9割超) | ① |
| SPM | 改善傾向 → 全局達成 | ②(誤り) |
| PM2.5 | 年によって変動も、全体として改善 | ③ |
| Ox | 極めて低水準で推移(1割以下) | ④ |
| SO₂ | 全年度で100%達成 | ⑤ |
試験での留意点
- PM2.5とSPMの混同に注意。PM2.5はより細かい粒子(2.5μm以下)であり、SPM(10μm以下)とは別物。基準や傾向も異なる。
- 「達成率が1割」といった極端な数値に対して、感覚的な違和感を持てるかが正答へのポイントになります。環境政策の実績を把握していれば、②の記述は不自然に映ります。
- 光化学オキシダントのような気象依存性の強い項目は、技術対策だけでは改善しにくいことも整理しておくと、より深い理解につながります。
環境基準の達成状況は、制度や施策の効果を確認する「成果指標」としても重要です。総監的視点では、データに基づいて環境施策の進捗を読み解く力が求められます。
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