このガイドは、ゼロから知識を積み上げるためのものではありません。
むしろ、すでにあなたが実務で積み重ねてきた経験――
現場での判断や対応、プロジェクトの中で「こうすべきだ」と感じてきたこと――
それらを言葉として再確認し、体系として整理するためのものです。
技術士(総監)の択一試験には、多くのキーワードが並びます。
ですが、実際には「知らなかったこと」よりも、「言葉としては使ってこなかったけれど、やってきたこと」が大半ではないでしょうか。
たとえば…
- 「利益は出ているのに、今使えるお金がない」
- 「人は足りているはずなのに、なぜか回らない」
- 「リスクは共有したはずなのに、意識がばらばらになる」
そんな現場の違和感に、名前を与えるのがキーワードであり、
それを「試験の問題でどう聞いてくるか」を合わせて確認するのがこのガイドです。
構成はすべて共通です:
- 背景にある問い(実務でよくある違和感からスタート)
- キーワードで整理する(「あの感覚」は、こういう言葉で説明される)
- 実際の問われ方(試験でどう聞かれるか)
- 試験での留意点(間違えやすいパターン・迷いやすいペア)
つまりこのシリーズは、
知識を“覚える”というより、「自分の中にあることを、言語と構造で納得する」ための読み物です。
現場の実感とキーワードをつなぐ視点で、これから一つずつ見ていきましょう。

経済性管理
1:BCPとBCMの基本整理
背景にある問い
「BCPとBCMは、何が違うのか?」
「事業継続は、自社の中だけを考えれば十分なのか?」
災害対策やリスクマネジメントの文脈で、BCP(事業継続計画)やBCM(事業継続マネジメント)という用語は頻繁に使われます。しかし、両者の役割や対象範囲を正確に説明できるかというと、意外と曖昧な理解にとどまっていることも少なくありません。
経営会議やリスク管理の検討の場では、「計画は作ってある」という発言がある一方で、「実際に機能するのか」「外部要因まで考慮できているのか」といった疑問が生じます。事業は自社だけで完結しているわけではなく、委託先や供給先との関係の中で成り立っています。その前提を踏まえた理解が求められます。
キーワードで整理する
まず、BCPとBCMを役割の違いで整理します。
BCP(事業継続計画)は、自然災害や突発的な経営環境の変化などの不測の事態が発生しても、重要な事業を中断させない、または中断しても可能な限り短期間で復旧させるための方針・体制・手順を定めた計画です。
「何を優先し、どの順序で復旧させるか」という計画面が中心となります。
一方、BCM(事業継続マネジメント)は、BCPを策定した後も、教育・訓練・見直し・改善を継続的に行い、事業継続能力を維持・向上させるための管理活動です。
この中には、自社の人的・物的資源だけでなく、委託先、調達先、供給先など、事業継続に影響を与える外部関係者も含まれます。
実際の問われ方
本問では、BCPおよびBCMに関する複数の記述のうち、「最も不適切なもの」を選択する形式で出題されています。
各記述を整理すると、BCPの定義や事業影響度分析、目標復旧時間・復旧レベルの考え方については、いずれも一般的なガイドラインと整合しています。一方で、BCMについて「自社の人的・物的被害の軽減が主目的であり、委託先や供給先は検討範囲に含まれない」とする記述は不適切です。
現代のBCMでは、サプライチェーン全体を視野に入れなければ、実効性のある事業継続は実現できません。自社が無傷であっても、外部が機能しなければ事業は停止します。この点を正しく理解しているかが問われています。
試験での留意点
BCP/BCMに関する問題では、次の点に注意が必要です。
BCPは「計画」、BCMは「継続的な管理・運用」であること。
BCMの対象は自社内部に限定されず、外部関係者も含まれること。
目標復旧時間や復旧レベルは、停止が許容される限界よりも厳しく設定されること。
被害軽減と事業継続は、目的も視点も異なる概念であること。
用語の丸暗記ではなく、「この考え方で実際に事業は継続できるか」という実務的な視点で読み解くことが、正誤判断の決め手になります。
2:統計的品質管理の基本整理
背景にある問い
「管理限界と規格値は、同じものなのか?」
「品質管理は、どこまでを“管理”し、どこからが“判定”なのか?」
品質管理の分野では、「管理限界」「規格値」「工程能力」「不適合率」など、似た言葉が多く登場します。現場経験があるほど、これらを感覚的に理解している一方で、試験ではその“違い”を正確に言語化できるかが問われます。
とくに混同しやすいのが、「管理限界」と「製品規格」の関係です。どちらも数値で示されるため、同じ基準のように見えますが、役割はまったく異なります。この設問は、その基本的な整理ができているかを確認するものです。
キーワードで整理する
統計的品質管理における主要な概念を整理します。
管理限界は、工程が統計的に安定しているかどうかを判断するための基準です。管理図上で、工程のばらつき(偶然原因)から算出され、工程の状態を監視する目的で設定されます。
重要なのは、管理限界は工程データから統計的に求められる値であるという点です。
一方、**規格値(規格限界)**は、製品やサービスが満たすべき要求事項として、設計や顧客要求に基づいて定められる値です。これは「合否判定」の基準であり、工程管理とは役割が異なります。
また、工程能力指数は、工程のばらつきが規格内にどの程度収まっているかを示す指標であり、値が小さい場合は不適合品発生リスクが高いと判断されます。
不適合品率は、「1つ以上の規定要求事項を満たしていないアイテムの数」を「検査した総数」で除して求められ、検査方式としては、全数検査と抜取検査が状況に応じて使い分けられます。
実際の問われ方
本問では、品質管理の統計的手法に関する5つの記述のうち、「最も不適切なもの」を選択する形式で出題されています。
各記述を確認すると、
② 工程能力が不足している場合に不適合品リスクが高いとする説明は適切です。
③ 不適合品率の定義も、一般的な品質管理の定義と一致しています。
④ 全数検査の説明も、新製品や高信頼性要求時の適用として妥当です。
⑤ 抜取検査の説明も、一定の不適合混入を許容する場合に用いられるという点で正しい内容です。
一方で、①では「管理限界は、製品の規格値が定められている場合には、その値に設定する」としていますが、これは明確に誤りです。
管理限界は、工程のばらつきから統計的に算出されるものであり、規格値そのものを管理限界として設定することはありません。
両者を同一視している点が不適切です。
したがって、正解は①となります。
試験での留意点
統計的品質管理の問題では、次の点に注意が必要です。
管理限界は「工程管理」のための指標であり、規格値は「合否判定」の基準であること。
管理限界は工程データから求められ、規格値から直接設定されるものではないこと。
工程能力指数は、規格に対する工程の適合性を評価する指標であること。
検査方式(全数検査・抜取検査)は、品質の安定性や要求信頼度に応じて使い分けられること。
用語を個別に暗記するのではなく、「その数値は何の目的で使われるのか」「管理と判定のどちらの話か」という視点で整理すると、誤りの選択肢は自然に見えてきます。
3:損益分岐点分析の基本整理
背景にある問い
「いくつ売れば、利益はゼロになるのか?」
「目標利益を得るには、どれだけ売上が必要なのか?」
経営や事業計画の場面では、「売上」「利益」という言葉が頻繁に使われますが、その内訳まで意識されているとは限りません。とくに、固定費と変動費の構造を理解していないと、「売れているのに儲からない」「利益目標が現実的か分からない」といった状況に陥りがちです。
損益分岐点分析は、こうした疑問に対して、売上・費用・利益の関係を数量的に整理するための基本的な手法です。この設問では、その計算関係を正しく理解しているかが問われています。
キーワードで整理する
まず、与えられている条件を整理します。
販売価格は 1,000円/個、
変動費は 400円/個、
固定費は 384,000円 です。
このとき、1個販売するごとの限界利益は、
販売価格 1,000円 − 変動費 400円 = 600円
となります。
また、変動費率は、
変動費 400円 ÷ 販売価格 1,000円 = 40%
です。
損益分岐点売上高は、「固定費 ÷ 限界利益率」で求めます。
限界利益率は 600円 ÷ 1,000円 = 60% ですから、
384,000円 ÷ 0.6 = 640,000円
となります。
実際の問われ方
本問では、損益分岐点分析に関する5つの記述のうち、「最も適切なもの」を選択します。
各選択肢を確認すると、
① 売上数量800個の場合の利益は、
売上 800,000円 − 変動費 320,000円 − 固定費 384,000円 = 96,000円
であり、416,000円ではありません。
② 限界利益は 600円であり、520円という記述は誤りです。
③ 変動費率は40%であり、60%という記述は誤りです。
④ 損益分岐点売上高は 640,000円 であり、この記述は正しい内容です。
⑤ 利益150,000円を得るために必要な売上高は、
(固定費 384,000円 + 利益 150,000円)÷ 0.6 = 890,000円
であり、1,335,000円ではありません。
したがって、正解は④となります。
試験での留意点
損益分岐点分析の問題では、次の点に注意が必要です。
限界利益は「販売価格 − 変動費」であること。
変動費率と限界利益率は、必ず合計して100%になること。
損益分岐点売上高は「利益ゼロ」の状態を示すこと。
目標利益を考える場合は、固定費に利益を上乗せして計算すること。
計算自体は単純ですが、用語の取り違えや率の混同が起きやすい分野です。「1個あたり」「売上全体」「率」のどれを扱っているのかを常に意識して整理することが、正答への近道になります。
4:設備総合効率(OEE)の基本整理
背景にある問い
「設備総合効率とは、何を高める指標なのか?」
「人を減らすことは、OEE向上につながるのか?」
製造現場の改善活動では、「効率を上げる」という言葉が多用されます。しかし、その“効率”が何を指しているのかを明確にしないまま施策を評価すると、改善の方向性を誤ることがあります。
設備総合効率(OEE)は、人の生産性ではなく、設備がどれだけ有効に使われているかを評価する指標です。本問は、各改善活動がOEEのどの要素に影響するのかを正しく理解しているかを問うものです。
キーワードで整理する
設備総合効率(OEE)は、次の3要素の積で表されます。
- 時間稼働率(可動率)
設備が計画どおりに稼働していたかを示す指標。故障や段取り替え、チョコ停による停止時間が影響します。 - 性能稼働率
設備が本来のスピードで運転されていたかを示す指標。速度低下や空運転などが影響します。 - 良品率
生産した数量のうち、良品が占める割合。不適合品の発生が影響します。
OEEは「設備視点」の指標であり、人員数や作業者配置そのものは、直接の構成要素ではありません。
実際の問われ方
本問では、設備管理に関する5つの取組のうち、「設備総合効率の値を高める取組として、最も不適切なもの」を選択します。
各選択肢をOEEの3要素に照らして確認すると、
① 不適合品数の削減は良品率を向上させるため、OEE向上に適切です。
② 修理作業時間の短縮は停止時間の削減につながり、時間稼働率を向上させます。
④ 設備スピードを上げて加工数量を増やす取組は、性能稼働率の向上に該当します。
⑤ 清掃徹底によるチョコ停削減は、可動率向上に直結する取組です。
一方、③は、段取作業による設備停止時間を変えずに作業者数を減らしたという内容です。これは人の配置効率や作業効率の改善ではありますが、設備の稼働時間・速度・良品率のいずれも直接的には改善していません。
したがって、設備総合効率を高める取組として最も不適切なのは③となります。
試験での留意点
設備総合効率に関する問題では、次の点に注意が必要です。
OEEは「設備」に着目した指標であり、人の効率は直接評価しないこと。
停止時間削減は可動率、速度改善は性能稼働率、不良削減は良品率に対応すること。
「生産性向上」という言葉が出ても、それが設備起因か人起因かを切り分けること。
OEEの3要素のどれにも当てはまらない改善は、OEE向上策とは言えないこと。
改善活動の内容が「設備に何をもたらしたのか」を一つずつ分解して考えると、誤りの選択肢は自然に浮かび上がります。
5:工程管理・工程改善活動の基本整理
背景にある問い
「改善活動は、どこから着手すべきなのか?」
「有名な改善原則は、正しく理解されているのか?」
工程管理や工程改善の分野では、トップの関与、現場の意識改革、各種改善手法など、さまざまな考え方が提示されます。現場経験があるほど、「聞いたことがある」「知っているつもり」という状態になりやすい一方で、用語や原則を正確に説明できるかどうかが試験では問われます。
本問は、改善活動の進め方そのものではなく、改善手法や原則の定義が正しく理解されているかを確認する設問です。
キーワードで整理する
工程改善に関連する代表的な考え方を整理します。
改善活動を成功させるためには、現場任せではなく、トップが率先して危機意識を示し、全社的に推進する姿勢が重要とされます。これは多くの改善活動で共通する前提です。
業務改善の視点を示すECRSの原則は、
Eliminate(排除)、
Combine(結合)、
Rearrange(再配置・入替)、
Simplify(簡素化)
の頭文字を取ったものです。作業や工程を見直す際の基本的な切り口として用いられます。
また、合理化の基本手法である合理化の3Sは、
単純化(Simplification)、
標準化(Standardization)、
専門化(Specialization)
を意味します。
さらに、動作経済の原則は、疲労を軽減し、有効な仕事量を増やすための考え方で、「最短距離動作」「円滑・リズミカルな動作」「重力の利用」などを含みます。
工程改善手法として知られる5Sでは、「清潔」は整理・整頓・清掃が維持されている状態を指します。
実際の問われ方
本問では、工程管理や工程改善活動に関する5つの記述のうち、「最も不適切なもの」を選択します。
各選択肢を確認すると、
① 改善活動におけるトップ主導の重要性を述べた内容であり、適切です。
③ 合理化の3Sの説明も、一般的な定義と一致しています。
④ 動作経済の原則の内容として妥当です。
⑤ 5Sにおける「清潔」の説明も正しい内容です。
一方、②では、ECRSの原則における「R」を Reuse(再利用) としていますが、これは誤りです。
ECRSの「R」は Rearrange(再配置・入替) を意味します。
したがって、正解は②となります。
試験での留意点
工程改善に関する問題では、次の点に注意が必要です。
改善手法は「考え方」と「正式な定義」を区別して理解すること。
ECRSや3Sなどの略語は、頭文字だけで曖昧に覚えないこと。
現場感覚として正しそうでも、用語の定義が違えば誤りになること。
「それっぽい英単語」に引きずられないこと。
改善活動の実務経験がある人ほど、感覚で読んでしまいがちですが、試験では定義の正確さが問われます。一語一語を丁寧に確認する姿勢が、正答につながります。
6:科学的・数理的手法の基本整理
背景にある問い
「“科学的に考える”とは、どういうことか?」
「数理手法の特徴を、正確に説明できるか?」
計画や管理の分野では、経験や勘だけでなく、数理モデルや分析手法を用いて意思決定を行うことが求められます。モンテカルロシミュレーション、ゲーム理論、VE、線形計画法、AHPなどは、いずれも代表的な手法ですが、名称だけが独り歩きし、内容が混同されやすい分野でもあります。
本問は、これらの手法について「それらしく聞こえる説明」に惑わされず、定義として正しいかどうかを見極められるかを問うものです。
キーワードで整理する
代表的な手法の要点を整理します。
モンテカルロシミュレーションは、乱数を用いて確率的に多数回の試行を行い、結果の分布や期待値を推定する手法です。不確実性を扱うことが特徴であり、確定的な結果を得ることを目的とするものではありません。
ゲーム理論は、意思決定主体が複数存在する状況を数学的に分析する理論で、主体間の利害関係に着目します。非協力ゲームと協力ゲームに大別される点は、基本的な整理として重要です。
**価値工学(VE)**では、製品やサービスの価値を
価値 = 機能 ÷ コスト
として捉え、機能向上やコスト低減を通じて価値を高めることを目指します。
線形計画問題は、目的関数・制約条件ともに線形式で表される最適化問題です。目的関数は決定変数の和で表され、積で表されることはありません。
**AHP(階層分析法)**は、評価基準と代替案を階層構造で整理し、基準ごとの一対比較によって重要度を定量化する意思決定手法です。単なる分類手法ではありません。
実際の問われ方
本問では、科学的・数理的手法に関する5つの記述のうち、「最も適切なもの」を選択します。
各選択肢を確認すると、
① モンテカルロシミュレーションを「乱数を用いない」「確定的結果を得る」としており、誤りです。
③ VEにおける価値を「機能×コスト」としており、定義と異なります。
④ 線形計画問題の目的関数を「決定変数の積」としており、不適切です。
⑤ AHPを単なる分類手法として説明しており、誤りです。
一方、②は、ゲーム理論を「複数の意思決定主体が存在する状況を数学的に扱う方法論」とし、非協力ゲームと協力ゲームに大別できると述べており、定義として正しい内容です。
したがって、正解は②となります。
試験での留意点
科学的・数理的手法の問題では、次の点に注意が必要です。
「最適化」「分析」「分類」といった言葉の使い方を正確に区別すること。
確率的手法と確定的手法を混同しないこと。
数式モデルの基本形(和か積か、線形か非線形か)を押さえること。
AHPやVEのような定番手法は、公式レベルの定義を確認しておくこと。
名称の印象や雰囲気ではなく、「その手法は何を前提に、何を目的としているのか」という軸で整理できていれば、誤った選択肢は自然と排除できます。
7:財務会計の基本整理
背景にある問い
「財務会計は、誰のための会計なのか?」
「基本的な会計用語を、正確に説明できるか?」
会計には、大きく「財務会計」と「管理会計」があります。実務では両者が混在して語られることも多く、その違いが曖昧なまま理解されているケースも少なくありません。試験では、この違いを前提に、定義として正しい説明かどうかが問われます。
本問は、財務会計の目的、会計原則、減価償却、固定資産の区分、キャッシュ・フロー計算書の構成といった、基礎的でありながら混同しやすいポイントを確認する設問です。
キーワードで整理する
財務会計の基本を整理します。
財務会計は、企業の経営成績や財政状態を、株主・債権者・投資家などの外部利害関係者に報告することを目的とした会計です。内部管理を目的とするのは管理会計です。
企業会計原則では、会計処理の継続性(継続性の原則)が重視されており、採用した処理方法を毎期恣意的に変更することは認められていません。
減価償却とは、固定資産の取得原価を、その使用可能期間にわたって費用配分する手続です。一度に費用化するのではなく、各期の収益に対応させて計上します。
建物、建物附属設備、機械装置、器具備品、車両運搬具などは、いずれも減価償却資産に分類されます。
キャッシュ・フロー計算書は、
営業活動によるキャッシュ・フロー、
投資活動によるキャッシュ・フロー、
財務活動によるキャッシュ・フロー
の3区分から構成されます。
実際の問われ方
本問では、財務会計に関する5つの記述のうち、「最も適切なもの」を選択します。
各選択肢を確認すると、
① 財務会計の目的を「内部関係者への報告」としており、管理会計との混同があり不適切です。
② 会計原則が毎期の見直し・改定を求めているとしていますが、継続性の原則に反し不適切です。
④ 建物以外の固定資産を減価償却資産に含めないとしており、誤りです。
⑤ キャッシュ・フロー計算書の区分として「社会貢献活動」を挙げており、不適切です。
一方、③は、減価償却を「取得原価を一定の方法により各年分の必要経費として配分する手続」と正しく説明しています。
したがって、正解は③となります。
試験での留意点
財務会計の問題では、次の点に注意が必要です。
財務会計と管理会計の「目的の違い」を明確に区別すること。
会計原則は「恣意的な変更を防ぐ」ための考え方であること。
減価償却は「資産の価値減少」ではなく「費用配分」であること。
キャッシュ・フロー計算書の3区分は定型であること。
どれも基礎的な内容ですが、言葉を少し言い換えただけで誤りになる選択肢が作られやすい分野です。定義をそのまま思い出せるレベルまで整理しておくことが、確実な得点につながります。
8:クリティカルパス(CPM)の基本整理
背景にある問い
「このプロジェクト全体の所要期間は、どの作業で決まるのか?」
「遅れたら全体が遅れる“本当に重要な作業”はどれか?」
プロジェクト管理では、作業の所要日数だけを見て「大きい作業=重要」と判断すると、誤ります。重要なのは、先行関係(依存関係)を踏まえたときに、全体日程を左右する作業がどれか、という点です。
その判断に使うのが、クリティカルパス(Critical Path)です。クリティカルパス上の作業は余裕(余裕時間=スラック)がゼロで、どれか1つでも遅れると、プロジェクト完了がそのまま遅れます。
キーワードで整理する
与えられた表を、先行関係と所要日数で整理します。
- A(先行なし)6日
- B(先行A)10日
- C(先行A)15日
- D(先行A)16日
- E(先行B)5日
- F(先行C,E)2日(CとEの両方が終わってから開始)
このとき、各作業の最早完了時刻(最短で終わる時刻)を計算すると、全体が何日で終わるか、どの経路が支配的かが見えます。
実際の問われ方
最早時刻で追うと、次の通りです。
- A:開始0 → 終了6
- B:A後 6 → 終了16
- C:A後 6 → 終了21
- D:A後 6 → 終了22
- E:B後 16 → 終了21
- F:CとEの後(max(21,21)=21)→ 終了23
プロジェクト完了は、終了時刻の最大値で決まり、
Dは22日で終わる一方、Fは23日までかかるため、全体工期は23日です。
ここでFの開始時刻は「CとEの遅い方」で決まっており、CもEも21日で並びます。したがって、全体23日を作っている経路は2本あります。
- A → C → F(6 + 15 + 2 = 23)
- A → B → E → F(6 + 10 + 5 + 2 = 23)
よって、クリティカルパス上の作業は A、B、C、E、F です。
Dは22日で終わり、全体23日に対して1日の余裕があるためクリティカルではありません。
結論として、正しい選択肢は ⑤(A, B, C, E, F) です。
試験での留意点
クリティカルパス問題では、次の点でミスが出やすいです。
- 「所要日数が最大の作業=クリティカル」と短絡しない(本問ではDが最長級だが非クリティカル)
- 合流点(本問のF)は「先行作業の最大完了時刻」で開始が決まる
- クリティカルパスは1本とは限らない(本問のように複数存在し得る)
- “全体工期を決めている経路”をまず確定し、その経路上の作業を列挙する
作業の依存関係を図にして、最早時刻を順に積み上げるだけで、正答は安定して導けます。
人的資源管理
9:労働基準法第33条(災害時の時間外・休日労働)の基本整理
背景にある問い
「災害時であれば、どこまで特例が認められるのか?」
「“災害等による臨時の必要がある場合”とは、どの範囲を指すのか?」
労働基準法第33条は、災害などの非常時において、通常の労働時間・休日規制を例外的に緩和する規定です。ただし、「災害時だから何でも許される」という規定ではなく、対象となる事由や手続、事後対応には明確な整理があります。
本問は、条文の趣旨と行政解釈を踏まえ、「どこまでが対象で、どこからが対象外か」を正確に理解しているかを問う設問です。
キーワードで整理する
労働基準法第33条では、次のような場合に、時間外・休日労働が認められています。
- 災害その他避けることのできない事由による臨時の必要がある場合
- 人命の保護、公益の確保、事業の重大な支障の防止を目的とする場合
- 機械・設備の突発的な故障や、システム障害の復旧など、事業継続上不可欠な対応
この特例を用いる場合、原則として所轄労働基準監督署長の許可が必要ですが、緊急時には事後の届出が認められています。
また、時間外・休日労働が長時間に及んだ場合には、別途、労働者の健康確保措置(医師による面接指導など)が求められる点にも注意が必要です。
実際の問われ方
本問では、労働基準法第33条に関する5つの記述のうち、「最も不適切なもの」を選択します。
各選択肢を確認すると、
② 人命や公益を保護するための大規模なリコール対応を例示しており、適切です。
③ 突発的な機械・設備故障やシステム障害の復旧を対象とする点も、適切です。
④ 長時間労働により疲労が蓄積した労働者について、医師による面接指導を求める内容であり、適切です。
⑤ 原則は許可制、やむを得ない場合は事後届出とする説明も、条文の趣旨に合致しています。
一方、①では、「当該事業者が直接被害を受けた場合に限られる」とし、「被害を受けた他の事業者からの協力要請に応じる場合は対象外」としていますが、これは誤りです。
災害時には、直接被害を受けていない事業者であっても、人命・公益の確保のために他事業者への協力が必要となる場合があり、これも第33条の「災害等による臨時の必要がある場合」に含まれます。
したがって、正解は①となります。
試験での留意点
労働基準法第33条に関する問題では、次の点に注意が必要です。
「直接被災したかどうか」で機械的に線を引かないこと。
人命・公益・事業継続という観点で判断されること。
緊急時には事後届出が認められるという手続面を押さえること。
時間外労働の特例と、健康確保措置は別次元の義務であること。
条文の文言だけでなく、「災害時に社会全体をどう機能させるか」という趣旨を理解していれば、不適切な記述は自然に見えてきます。
10:パートタイム・有期雇用労働法等の基本整理
背景にある問い
「短時間・有期雇用労働者に対する義務は、どこまで強制されるのか?」
「“しなければならない”と“努めなければならない”の違いを見抜けるか?」
短時間・有期雇用労働法(いわゆるパートタイム・有期雇用労働法)は、不合理な待遇差の解消や雇用管理の改善を目的としていますが、その多くは努力義務として規定されています。
試験では、この「義務」と「努力義務」の書き分けが、そのまま正誤の分かれ目になります。
本問は、条文の趣旨を理解していないと「一見もっともらしい表現」に引っかかる典型的な設問です。
キーワードで整理する
本問で関係する主なポイントを整理します。
- 労働条件の明示
昇給、退職手当、賞与の有無、相談窓口については、短時間労働者等に対して文書等で明示することが求められています。 - 就業規則作成時の意見聴取
短時間労働者に関する事項であっても、原則として「労働者の過半数で組織する労働組合等」の意見を聴取する必要があります。 - 不合理な待遇差の禁止
職務内容や配置の変更範囲が同一である場合には、賃金・賞与などについて不合理な差別的取扱いは禁止されます。 - 通常の労働者への転換促進
事業主には、短時間労働者等について、通常の労働者への転換を促進するための措置を講じる努力義務があります。 - 教育訓練
教育訓練については、均衡を考慮しつつ機会を与えるよう**配慮する義務(努力義務)**が定められています。
実際の問われ方
本問は、「最も不適切な記述」を選ぶ問題です。
各選択肢を確認すると、
① 処遇内容(昇給・退職手当・賞与・相談窓口)の明示について述べており、適切です。
② 就業規則作成時の意見聴取について、過半数代表を対象としており、適切です。
③ 職務内容や配置の変更範囲が異なる場合に待遇差が認められる点を述べており、適切です。
④ 通常の労働者への転換機会確保に関する配慮義務を述べており、適切です。
一方、⑤は、
「教育訓練を実施しなければならない」
と、断定的に義務化しています。しかし、短時間・有期雇用労働法における教育訓練の取扱いは、あくまで努力義務であり、法的に一律の実施義務が課されているわけではありません。
この点で、⑤は法律の定めよりも強い表現となっており、不適切です。
したがって、正解は⑤となります。
試験での留意点
この分野では、次の点が特に重要です。
「義務」と「努力義務」を文言レベルで厳密に区別すること。
配慮義務を「必ず実施しなければならない」と読み替えないこと。
短時間労働者等の保護は、直ちに完全な同一処遇を意味しないこと。
“労働者に有利そうな表現”ほど、過剰規制になっていないか疑うこと。
本問は、制度趣旨を理解したうえで、表現の強さが法の水準を超えていないかを冷静に確認できるかどうかが問われています。
11:ストレスチェック制度の基本整理
背景にある問い
「ストレスチェック制度は、誰のための制度なのか?」
「事業者は、どこまで個人情報に関与できるのか?」
労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度は、メンタルヘルス不調の未然防止を目的とした制度です。
一方で、ストレスという情報は極めて機微な個人情報であるため、制度設計においては「事業者がどこまで関与できるか」が厳密に制限されています。
本問は、制度の目的だけでなく、個人結果の取扱いに関するルールを正確に理解しているかを問う設問です。
キーワードで整理する
ストレスチェック制度の要点を整理します。
- 実施義務の対象
常時使用する労働者が50人以上の事業場では、事業者は年1回以上、定期的にストレスチェックを実施しなければなりません。 - 制度の目的
労働者自身がストレスの状態に気付くこと、
その結果を集団分析し、職場環境の改善につなげることにより、
メンタルヘルス不調を未然に防止することが目的です。 - 検査項目
心理的な負担の原因、心身の自覚症状、周囲からの支援状況などについて検査を行います。 - 個人結果の取扱い
検査結果は、原則として労働者本人に直接通知されます。
事業者が個人結果を取得できるのは、労働者本人の同意がある場合に限られます。 - 集団分析と職場改善
事業者は、一定規模の集団単位で結果を集計・分析し、必要に応じて職場環境改善に努める義務があります。
実際の問われ方
本問では、ストレスチェック制度に関する5つの記述のうち、「最も不適切なもの」を選択します。
各選択肢を確認すると、
① 50人以上の事業場における実施義務を述べており、適切です。
② 制度の目的(気付き・職場改善・未然防止)を正しく述べており、適切です。
③ 検査項目の内容として、法令に沿った説明であり、適切です。
⑤ 集団分析と、その結果を踏まえた措置について述べており、適切です。
一方、④では、
事業者が、医師等から個々の労働者の検査結果の提供を受ける
としていますが、これは不適切です。
ストレスチェックの個人結果は、原則として労働者本人にのみ通知され、
本人の同意なしに事業者が取得することはできません。
この点で、④は制度の根幹である「個人情報保護」の考え方に反しており、不適切です。
したがって、正解は④となります。
試験での留意点
ストレスチェック制度に関する問題では、次の点が特に重要です。
制度の主役は「労働者本人」であること。
個人結果と集団分析結果は、厳密に区別されていること。
事業者は原則として個人結果を取得できないこと。
メンタルヘルス対策であっても、個人情報保護が最優先されること。
「健康管理だから会社が把握して当然」と考えてしまうと、誤りの選択肢を選びやすくなります。
事業者に“できないこと”を正確に押さえているかが、この問題の判断ポイントです。
12:雇用保険制度の基本整理
背景にある問い
「雇用保険では、どのような離職理由でも給付は一切受けられないのか?」
「“支給されない”のか、“一定期間待てば支給される”のかを区別できるか?」
雇用保険制度では、離職理由によって給付の取扱いに違いがありますが、
その違いは 「支給の可否」ではなく、「支給までの制限の有無」 に現れることが多いです。
本問は、自己都合退職や懲戒解雇といったケースにおいて、
基本手当が本当に「支給されない」のかどうかを正確に理解しているかを問う設問です。
キーワードで整理する
雇用保険制度における重要な整理は次のとおりです。
- 求職者給付(基本手当)
一定の被保険者期間などの要件を満たし、失業状態にある場合に支給されます。 - 自己都合退職の場合
原則として給付制限(一定期間の待機)がありますが、
給付制限後には基本手当が支給されます。 - 自己の責めに帰すべき重大な理由による解雇(懲戒解雇など)
この場合も、原則として給付制限が課されるものの、
基本手当そのものが永久に支給されないわけではありません。 - 給付制限
「支給されない」のではなく、「すぐには支給されない」制度です。
この点を混同すると、設問②のような誤った理解に陥ります。
実際の問われ方
本問では、雇用保険制度に関する5つの記述のうち、「最も不適切なもの」を選択します。
各選択肢を検討すると、
① 雇用保険制度の目的(失業給付、教育訓練、育児・能力開発等)を正しく述べており、適切です。
③ 季節的労働者や65歳以上の高年齢者も、一定の給付(高年齢求職者給付金等)の対象となる点で、適切です。
④ 教育訓練給付金が、在職者・離職者の双方を対象とする点で、適切です。
⑤ 介護休業給付金の支給要件について、正しく述べており、適切です。
一方、②は、
自己の責めに帰すべき重大な理由によって解雇された者に対しては、
求職者給付の基本手当は支給されない
としていますが、これは誤りです。
懲戒解雇などの場合であっても、給付制限期間を経た後には、基本手当が支給される可能性があります。
したがって、「支給されない」と断定している②は不適切です。
よって、正解は②となります。
試験での留意点
雇用保険制度の問題では、次の点が特に重要です。
「不支給」と「給付制限」を混同しないこと。
懲戒解雇=永久に給付なし、と短絡的に判断しないこと。
給付の可否ではなく、支給開始時期の違いに着目すること。
文言が断定的すぎないかを常に確認すること。
本問は、制度趣旨そのものよりも、
「支給されない」と書き切ってよい場面かどうかを見抜けるかが判断ポイントです。
13:専門職制度の基本整理
背景にある問い
「専門職制度は、いつ頃から導入されてきた制度なのか?」
「制度の目的が正しくても、事実関係が誤っていれば不適切にならないか?」
専門職制度は、管理職とは異なるキャリアパスとして、専門性の高い人材を活用・処遇するために導入されてきた人事制度です。
この分野では、制度の趣旨だけでなく、導入時期や歴史的経緯が問われることがあります。
本問は、専門職制度の目的そのものではなく、導入時期に関する事実認識が正しいかを見抜けるかどうかがポイントとなる設問です。
キーワードで整理する
専門職制度に関する基本事項を整理します。
- 導入の時期
日本企業における専門職制度は、1990年代後半になって初めて導入されたものではなく、
1980年代から、特に大手製造業や電機メーカーを中心に導入が進められてきました。 - 導入の背景
管理職ポストの限界(キャリア・プラトー問題)への対応、
高度な専門知識・技術を持つ人材の処遇確保、
非管理職でも高位の処遇を可能とする制度設計
といった目的がありました。 - キャリア形成
専門職制度では、管理職昇進とは異なり、専門性を軸にしたキャリア目標を設定し、
専門分野での貢献を通じて組織成果に寄与することが期待されます。 - 評価・報酬
専門知識・技術、業務経験、実績、成果などを基に評価され、
MBOなどの評価手法が用いられることや、
外部労働市場を意識した報酬設計がなされることもあります。
実際の問われ方
本問では、専門職制度に関する5つの記述のうち、「最も不適切なもの」を選択します。
各選択肢を検討すると、
② 専門性を軸としたキャリア形成や、就業意欲の維持に言及しており、適切です。
③ 専門知識・技術、経験、業績などを基に任用や格付けが行われる点で、適切です。
④ 専門職制度において、MBOなどの評価手法が活用されることがあるという説明で、適切です。
⑤ 外部労働市場を意識した報酬設計が行われる場合がある点で、適切です。
一方、①は、
我が国における専門職制度は1990年代後半から新たに導入された
としていますが、これは事実と異なります。
日本では、専門職制度は1980年代から既に導入が始まっており、
「1990年代後半から新たに導入」とする記述は、導入時期を遅く捉えすぎています。
制度の目的部分は正しいものの、導入時期の認識が誤っているため、全体として不適切です。
したがって、正解は①となります。
試験での留意点
専門職制度に関する問題では、次の点に注意が必要です。
制度の「目的」と「導入時期」は別物として整理すること。
趣旨が正しくても、事実関係が誤っていれば不適切になること。
人事制度は段階的に発展してきた歴史があること。
「〇年代から新たに導入」といった表現には特に注意すること。
本問は、専門職制度のイメージだけで判断すると誤りやすく、
制度史を含めた正確な知識が求められる設問です。
14:リーダーシップ理論の基本整理
背景にある問い
「リーダーシップ理論は、行動の“何”に注目しているのか?」
「用語と行動事例を、正しく結び付けられるか?」
リーダーシップに関する理論は多岐にわたりますが、それぞれが注目している軸は異なります。
課題達成か人間関係か、状況適応か、フォロワーの主体性か、奉仕か――
この違いを理解せずに読むと、「どれもそれらしく見える」ため混乱しがちです。
本問は、各理論の中核となる考え方を踏まえて、行動事例と正しく対応付けられるかを問う設問です。
キーワードで整理する
本問で扱われているリーダーシップ理論を整理します。
- PM理論
リーダーの行動を
P(Performance:課題達成機能)と
M(Maintenance:集団維持機能)
の2軸で捉え、両方が高い状態が望ましいとする理論です。 - フォロワーシップ
フォロワー(部下)が主体的に考え、役割を超えて行動し、
リーダーや組織を支える姿勢に注目する考え方です。 - SL理論(状況対応型リーダーシップ)
部下の成熟度や状況に応じて、
指示型・支援型などリーダーの行動スタイルを柔軟に変えるべきとする理論です。 - サーバントリーダーシップ
リーダーが前面に立って指示するのではなく、
部下を支援し、価値観を共有し、個々の力を引き出すことを重視します。
実際の問われ方
本問では、4つの理論(ア〜エ)と、4つの行動事例(A〜D)を正しく対応させます。
各事例を確認すると、
- (A)
相手の経験に応じて行動スタイルを変えなかった点が問題視されています。
→ 状況に応じた対応を求める SL理論 に該当します。 - (B)
自発的に役割を超えて行動し、周囲を支援しています。
→ フォロワーシップ の典型例です。 - (C)
タスクや成果への関心は高いが、人への配慮が不足しています。
→ 課題達成重視・人間関係軽視という点で PM理論 に該当します。 - (D)
共感を重視し、部下の判断を尊重して力を引き出しています。
→ サーバントリーダーシップ に該当します。
したがって、対応関係は次のとおりです。
- ア(PM理論) → C
- イ(フォロワーシップ) → B
- ウ(SL理論) → A
- エ(サーバントリーダーシップ) → D
この組合せに該当するのは ② です。
試験での留意点
リーダーシップ理論の問題では、次の点が重要です。
理論名ではなく「何を重視しているか」で読むこと。
「柔軟に変える」「支える」「主体的に動く」などのキーワードに注目すること。
成果重視か人重視か、リーダー視点かフォロワー視点かを切り分けること。
抽象論ではなく、行動の特徴から理論を逆引きすること。
本問は、用語暗記ではなく、理論の核心を理解しているかが問われています。
軸を意識して読めば、正しい組合せは自然に導けます。
15:メンター制度の基本整理
背景にある問い
「メンター制度は、業務なのか、私的な支援なのか?」
「制度として導入する以上、どこまで企業の責任が及ぶのか?」
メンター制度は、新入社員や若手社員の成長支援、定着促進、キャリア形成を目的として、多くの企業で導入されています。
一方で、「業務とは別」「自主的な支援活動」という誤解が生じやすく、制度運用の考え方を誤ると、労務管理上の問題にもつながります。
本問は、メンター制度を企業が導入・運営する制度として正しく理解しているかを問う設問です。
キーワードで整理する
メンター制度の要点を整理します。
- 制度設計と経営の関与
メンター制度の導入にあたっては、課題整理、目的設定、全体計画、推進方法の検討が不可欠であり、経営層の理解と支援が重要です。 - メンターとメンティの関係
メンターは、メンティのキャリア志向や期待に合った経験・特性を有することが望ましく、
評価や指揮命令が直接及ばない関係(直属の上司・部下でないこと)が一般的に適切とされます。 - 事前研修
メンター制度を円滑に運用するため、制度趣旨、役割、必要なスキル、問題発生時の対応方法などを学ぶ事前研修が重要であり、
その対象はメンター・メンティ双方です。 - 制度運営の支援
推進部門による情報共有、意見交換の場の提供、報告の仕組みなど、継続的なサポートが制度定着の鍵となります。
実際の問われ方
本問では、メンター制度に関する5つの記述のうち、「最も不適切なもの」を選択します。
各選択肢を確認すると、
① 制度導入における目的設定や経営層の関与の重要性を述べており、適切です。
② メンターとメンティのマッチングや関係性について述べており、適切です。
③ 事前研修の目的と対象を正しく整理しており、適切です。
⑤ 推進部門による支援の重要性を述べており、適切です。
一方、④は、
メンタリングは業務の一環ではないため、原則として就業時間外に行うことが望ましい
としていますが、これは不適切です。
メンター制度は、企業が人材育成を目的として正式に導入する制度であり、
メンタリングは原則として業務の一環として位置付けられます。
就業時間外での実施を原則とする考え方は、制度の趣旨や労務管理の観点から適切ではありません。
したがって、正解は④となります。
試験での留意点
メンター制度に関する問題では、次の点が重要です。
「制度としてのメンタリング」と「私的な相談」を混同しないこと。
企業主導で導入する以上、業務の一環として扱われること。
就業時間外を原則とする表現には注意すること。
推進部門や研修など、制度運営の視点を忘れないこと。
本問は、「善意の活動だから業務外」という直感に引きずられやすい設問です。
人事制度としての位置付けを正しく押さえていれば、不適切な記述は明確に判断できます。
16:人事考課管理の基本整理
背景にある問い
「人事考課は、何をどこまで評価する仕組みなのか?」
「成果・能力・態度は、どのように切り分けて評価されるのか?」
人事考課は、賃金・昇進・配置・育成など、人事管理全体の基盤となる重要な仕組みです。
そのため、評価項目や評価方法を誤って理解すると、制度の趣旨そのものを取り違えることになります。
本問は、人事考課における**評価の考え方(透明性・多面評価・成果評価・情意考課)**を正確に理解しているかを問う設問です。
キーワードで整理する
人事考課管理の基本的な考え方を整理します。
- 評価の透明性
評価基準・手続・結果を被評価者に開示し、説明することは、評価への納得性を高めるために重要です。 - 多面評価(360度評価)
上司だけでなく、同僚、部下、他部門、顧客など複数の視点を取り入れる評価方法で、評価の偏りを抑える効果があります。 - 成果評価と職務の違い
成果のみで評価すると、成果が出にくい業務に就いている者が不利になるなど、不公平が生じる場合があります。 - 職位と評価軸
一般に、職位が上がるほど、行動過程よりも成果や業績が重視される傾向があります。 - 情意考課
情意考課とは、仕事に対する意欲、責任感、協調性、規律性など、行動として表れた態度・姿勢を評価するものです。
内心の感情や気持ちそのものを評価するものではありません。
実際の問われ方
本問では、人事考課管理に関する5つの記述のうち、「最も不適切なもの」を選択します。
各選択肢を検討すると、
① 評価の透明性が納得性向上に重要である点を述べており、適切です。
② 多面評価の内容と効果を正しく説明しており、適切です。
③ 職位が上がるほど業績重視になる傾向を述べており、一般的な理解として適切です。
④ 成果評価のみの問題点を指摘しており、適切です。
一方、⑤は、
情意考課は、実際の行動内容ではなく、どのような気持ちを持っているかに視点を定めて評価する
としていますが、これは不適切です。
情意考課は、内心の感情や気持ちそのものを評価するものではなく、
仕事への意欲や姿勢が、行動としてどのように表れているかを評価するものです。
したがって、評価対象を「気持ち」に限定している⑤は、人事考課の定義を誤っています。
よって、正解は⑤となります。
試験での留意点
人事考課管理の問題では、次の点が重要です。
評価対象は「内心」ではなく「行動・成果」であること。
情意考課でも、観察可能な態度・行動が評価対象であること。
評価制度の目的は、公平性と納得性の確保にあること。
用語のイメージではなく、定義に基づいて判断すること。
本問は、「情意」という言葉から感情評価を連想してしまうと誤りやすい設問です。
評価は必ず行動に基づくという原則を押さえていれば、正答は明確になります。
情報管理
17:平均値の使い分けの基本整理
背景にある問い
「“平均”は、どんな場面でも同じ計算でよいのか?」
「算術平均・幾何平均・調和平均は、何を表す指標なのか?」
「平均」と一言で言っても、算術平均・幾何平均・調和平均は、それぞれ意味と用途が異なります。
数値を単純に足して割るだけでは、本来表したい実態を正しく捉えられない場合があります。
本問は、それぞれの平均がどのような数量を表すのに適しているかを理解し、
場面に応じて正しく使い分けられるかを問う設問です。
キーワードで整理する
3つの平均の特徴を整理します。
- 算術平均
個々の値を合計し、個数で割った平均です。
点数や人数分布など、「量の平均」を求めるのに適しています。 - 幾何平均
変化率や倍率の平均を求める際に用いられます。
成長率や増減率など、比率の積で変化する量に適しています。 - 調和平均
速度や効率など、「一定量あたりの率」を平均する場合に用いられます。
特に、距離が等しい往復の平均速度などで使用されます。
実際の問われ方
本問では、3つの状況(ア・イ・ウ)に対して、最も適切な平均の組合せを選びます。
- (ア)売上高の平均倍率
売上が「〇倍」「〇倍」と変化しているため、
変化率の平均を求める場面であり、幾何平均が適切です。 - (イ)往復の平均速度
行きと帰りで距離は同じで、速度が異なります。
この場合、平均速度は単純平均ではなく、調和平均で求めます。 - (ウ)試験の平均点
各得点と人数が与えられており、
全体の得点を人数で割るため、算術平均が適切です。
したがって、対応関係は次のとおりです。
- ア:幾何平均
- イ:調和平均
- ウ:算術平均
この組合せに該当するのは ① です。
試験での留意点
平均値の問題では、次の点に注意が必要です。
「倍率・成長率」→ 幾何平均
「速度・効率(一定量あたり)」→ 調和平均
「点数・数量」→ 算術平均
計算方法を暗記するのではなく、
**「何を平均したいのか」**を先に考えることが重要です。
本問は、平均値の定義と意味を理解していれば、計算せずとも正解できる設問です。
「平均=算術平均」と決めつけないことが、得点への近道になります。
18:肖像権の基本整理
背景にある問い
「肖像権は、法律に明記された権利なのか?」
「撮影が許される場合と、公開が問題になる場合はどう違うのか?」
肖像権は、個人の写真や映像を扱う際に必ず問題となる重要な権利ですが、
著作権のように法律名と条文が明確に定義されているわけではありません。
そのため、「何が根拠で守られている権利なのか」を誤解しやすい分野でもあります。
本問は、肖像権の**法的性質(成り立ち)**と、撮影・公開に関する実務的な判断基準を正しく理解しているかを問う設問です。
キーワードで整理する
肖像権に関する基本的な考え方を整理します。
- 肖像権の法的性質
肖像権は、民法や特別法に明文で規定された権利ではありません。
判例の積み重ねによって認められてきた、人格権の一内容としての権利です。 - 人格的側面の保護
無断で撮影・公開されない自由や、私生活の平穏を守る利益は、肖像権によって保護されます。 - 著作権との関係
写真や映像を公開する場合、撮影者の著作権を処理していても、
写っている人物の肖像権については別途検討が必要です。 - 公共の場での撮影
過去の裁判例では、公共の場を背景として撮影・公開され、
かつ、通常の服装・態様で写り込んでいる程度であれば、
受忍限度内として肖像権侵害が否定される場合が多いとされています。 - 公益目的と公開の問題
違法行為の記録など、撮影自体が公益目的で許される場合でも、
その映像の公開方法・範囲によっては、肖像権侵害と判断される可能性があります。
実際の問われ方
本問では、肖像権に関する5つの記述のうち、「最も不適切なもの」を選択します。
各選択肢を検討すると、
② 肖像の人格的側面が肖像権によって保護される点を述べており、適切です。
③ 著作権とは別に肖像権の検討が必要である点を述べており、適切です。
④ 公共の場での撮影・公開に関する判例の傾向を正しく述べており、適切です。
⑤ 公益目的での撮影と、その後の公開の問題を区別しており、適切です。
一方、①は、
肖像権は、法律上明文化された権利である
としていますが、これは誤りです。
肖像権は、法律に明文規定された権利ではなく、
判例によって形成されてきた権利であり、人格権の一内容として保護されています。
この点で、①は肖像権の法的根拠を誤っており、不適切です。
したがって、正解は①となります。
試験での留意点
肖像権に関する問題では、次の点が重要です。
肖像権は「明文法上の権利ではない」こと。
著作権処理と肖像権処理は別問題であること。
撮影の可否と、公開の可否は分けて考えること。
公共性・公益性・受忍限度という判例上の判断軸を押さえること。
本問は、「有名な権利=法律に書いてあるはず」という思い込みを突く設問です。
判例法理によって成立している権利である点を正確に理解していれば、迷わず判断できます。
19:MTBF・MTTRの基本整理
背景にある問い
「稼働率が高い機種は、MTBFも大きいのか?」
「“壊れにくさ(MTBF)”と“直しやすさ(MTTR)”を分けて比較できるか?」
運用実績の評価では、「稼働率が高い=優秀」と見がちですが、稼働率は 実稼働時間と修復時間のバランスで決まります。
そのため、故障頻度(MTBF)と修復の速さ(MTTR)を分解して見ないと、改善ポイントを誤ります。
本問は、表にある「総時間(実稼働+総修復)」「稼働率」「故障件数」から、各機種のMTBFとMTTRの大小関係を正しく比較できるかを問う設問です。
キーワードで整理する
ここでの定義は次のとおりです(問題文の定義に忠実に計算します)。
- 総時間 = 実稼働時間 + 総修復時間
- 稼働率 = 実稼働時間 ÷ 総時間
したがって、
- 実稼働時間 = 総時間 × 稼働率
- 総修復時間 = 総時間 ×(1 − 稼働率)
また、
- MTBF(平均故障間隔) = 実稼働時間 ÷ 故障件数
- MTTR(平均修復時間) = 総修復時間 ÷ 故障件数
この2つを各機種で計算し、大小を比較します。
実際の問われ方
各機種について、まず実稼働時間と総修復時間を求めます。
- 機種A:総時間 1,174,000、稼働率 0.91、故障 1,110
実稼働=1,174,000×0.91=1,068,340
修復=1,174,000×0.09=105,660 - 機種B:総時間 1,181,000、稼働率 0.92、故障 1,105
実稼働=1,181,000×0.92=1,086,520
修復=1,181,000×0.08=94,480 - 機種C:総時間 1,230,000、稼働率 0.94、故障 1,085
実稼働=1,230,000×0.94=1,156,200
修復=1,230,000×0.06=73,800
次にMTTRを比較します。
- MTTR(A)=105,660÷1,110 ≒ 95.2
- MTTR(B)=94,480÷1,105 ≒ 85.5
- MTTR(C)=73,800÷1,085 ≒ 68.0
よって、機種CのMTTRは機種Bより小さいが成り立ちます。
したがって、正しい選択肢は ⑤ です。
試験での留意点
MTBF・MTTRの問題では、次の点で取り違えが起きやすいです。
- 稼働率は「実稼働 ÷ 総時間」であり、総時間には修復時間が含まれること
- MTBFは「実稼働時間」を使い、MTTRは「修復時間」を使うこと
- 稼働率が高い=MTBFが必ず大きい、とは限らない(修復の短さでも稼働率は上がる)
まず「実稼働」と「修復」を総時間から分解し、MTBFとMTTRに落とし込む手順を固定すると、比較問題は安定して解けます。
20:情報セキュリティ認証制度の基本整理
背景にある問い
「ISMS認証と製品認証は、同じ“セキュリティ認証”なのか?」
「ISO/IEC 27001とISO/IEC 15408は、何を評価対象としているのか?」
情報セキュリティ分野では、「ISO規格」「認証」「評価」という言葉が多用されるため、
組織を対象とする制度と製品を対象とする制度が混同されがちです。
本問は、ISMS適合性評価制度と、Common Criteria(ISO/IEC 15408)の評価対象と制度の性格の違いを正確に理解しているかを問う設問です。
キーワードで整理する
本問に関係する認証・評価制度を整理します。
- ISMS適合性評価制度
ISO/IEC 27001に基づき、
組織が構築・運用する**情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)**を
第三者が評価・認証する制度です。 - ISO/IEC 27001
ISMSを構築・運用するための要求事項を定めた国際規格であり、
日本では JIS Q 27001 として制定されています。 - ISO/IEC 15408(Common Criteria)
情報システムやIT製品(セキュリティ機能)を対象として、
製品のセキュリティ機能が仕様どおり実装されているかを評価する国際規格です。
評価対象は「組織の運用」ではなく、「製品・システム」です。 - CCRA(相互承認協定)
ISO/IEC 15408に基づく認証結果を、
加盟国間で相互に承認する仕組みです。
実際の問われ方
本問では、情報セキュリティの認証制度に関する5つの記述のうち、「最も不適切なもの」を選択します。
各選択肢を検討すると、
① ISMS適合性評価制度が、ISO/IEC 27001に基づく第三者認証制度である点を述べており、適切です。
② ISMS適合性評価制度の目的(国内外からの信頼確保)を述べており、適切です。
③ ISO/IEC 27001とJIS Q 27001の関係を正しく述べており、適切です。
⑤ ISO/IEC 15408におけるCCRA制度の内容を正しく説明しており、適切です。
一方、④は、
ISO/IEC 15408とは、情報システムにおける技術面及び組織面でのセキュリティ対策が、
適切に設計・実装され、かつ適切に運用・管理されていることを評価の対象とする
としていますが、これは不適切です。
ISO/IEC 15408(Common Criteria)が評価するのは、
情報システムやIT製品のセキュリティ機能そのものであり、
**組織的な運用・管理体制(マネジメント)**は評価対象ではありません。
組織の運用・管理を評価するのは、ISO/IEC 27001(ISMS)です。
したがって、正解は④となります。
試験での留意点
情報セキュリティ認証制度の問題では、次の切り分けが重要です。
- ISMS(ISO/IEC 27001):組織・マネジメントを評価
- Common Criteria(ISO/IEC 15408):製品・システムを評価
- 「運用・管理」という言葉が出てきたら、ISMSかどうかを疑う
- CCRAは「認証結果の国際的な通用性」に関する制度
本問は、「セキュリティ=全部まとめて評価する」という思い込みを突く設問です。
評価対象が“組織”なのか“製品”なのかを意識して読めば、誤りは明確に判別できます。
21:デザイン思考プロセスの基本整理
背景にある問い
「デザイン思考のプロセスは、一直線に進むものなのか?」
「テストの結果が悪かった場合、どのように対応するのが正しいのか?」
デザイン思考は、ユーザー中心で課題解決を行うための思考・実践プロセスとして広く用いられています。
しかし、その特徴である**反復性(イテレーション)**を理解していないと、プロセスを誤って捉えてしまいます。
本問は、5つの段階(共感・定義・発想・プロトタイプ・テスト)の役割と関係性を正しく理解しているかを問う設問です。
キーワードで整理する
デザイン思考の各段階の要点を整理します。
- 共感(empathize)
観察、インタビュー、アンケートなどを通じて、
ユーザーの行動・感情・背景を理解し、課題の当事者として捉えます。 - 定義(define)
共感段階で得られた情報を整理し、
本質的なユーザーニーズや解くべき問題を明確化します。 - 発想(ideate)
定義された課題に対して、多様なアイデアを幅広く出し、
その後、整理・統合して有望な方向性を見出します。 - プロトタイプ(prototype)
スケッチや簡易モデルなどを用いて、
アイデアを具体的な形に落とし込みます。 - テスト(test)
プロトタイプをユーザーに試してもらい、
フィードバックを得て、改善点を明らかにします。
重要なのは、これらのプロセスが一方向ではなく、何度も行き来する循環型プロセスである点です。
実際の問われ方
本問では、デザイン思考の各段階の説明として「最も不適切なもの」を選択します。
各選択肢を検討すると、
① 共感段階の説明として適切です。
② 定義段階の役割を正しく述べており、適切です。
③ 発想段階でのアイデア創出と整理を述べており、適切です。
④ プロトタイプ段階での具体化の説明として適切です。
一方、⑤は、
テストで反応が良くない場合は、テスト以前の段階に立ち戻らずに修正を行い、プロセスを完了する
としていますが、これは不適切です。
デザイン思考では、テスト結果を踏まえて、
発想・定義・共感などの前段階に立ち戻ることが前提となっています。
テストは「終点」ではなく、次の改善サイクルへの入口です。
したがって、プロセスを固定的・直線的に捉えている⑤は、デザイン思考の本質を誤っています。
よって、正解は⑤となります。
試験での留意点
デザイン思考の問題では、次の点が重要です。
デザイン思考は「反復型プロセス」であること。
テスト結果に応じて前段階へ戻ることが前提であること。
「完了」「立ち戻らない」といった表現には注意すること。
プロセスの名称よりも、その**思想(ユーザー中心・試行錯誤)**を理解すること。
本問は、用語を知っているだけでは誤りやすく、
デザイン思考の進め方そのものを理解しているかが問われる設問です。
22:科学技術イノベーションと社会的受容の基本整理
背景にある問い
「新しい技術は、技術的に優れていれば自動的に社会に受け入れられるのか?」
「技術が高度化・高速化するほど、市民の関与は本当に不要になるのか?」
科学技術イノベーションは、社会に大きな便益をもたらす一方で、
安全性、倫理、環境、格差といった新たな課題やリスクも同時に生み出します。
そのため、技術そのものだけでなく、社会がどのように受け止め、合意形成を行うかが重要な論点となります。
本問は、「社会的受容」という概念の意味と、その議論の方向性を正しく理解しているかを問う設問です。
キーワードで整理する
科学技術イノベーションと社会的受容に関する基本的な考え方を整理します。
- 社会的受容(social acceptance)
新しい科学技術やイノベーションが、社会の中で理解され、議論され、
合意形成を経て受け入れられていく過程を指します。
この概念は近年突然生まれたものではなく、原子力技術などを巡る議論の中で、
2000年以前から用いられてきました。 - 社会実装と受容の関係
技術の社会実装においては、法整備や制度設計だけでなく、
市民の理解や納得を得る努力が不可欠であるとする議論が多く見られます。 - 新技術の影響の両義性
新しい技術は、従来存在しなかった利便性をもたらす一方で、
予期しない負の影響を生む可能性もあります。
これが社会的受容が重視される理由です。 - 具体例(自動運転など)
技術開発や制度整備が先行する一方で、
社会的議論や受容の醸成が十分でないとの指摘がなされることがあります。 - 市民参加の重要性
科学技術イノベーションの社会的受容においては、
専門家だけでなく、一般市民が議論に参加することの重要性が強調されています。
実際の問われ方
本問では、科学技術イノベーションや新技術の社会的受容に関する5つの記述のうち、「最も不適切なもの」を選択します。
各選択肢を検討すると、
① 社会的受容という用語が、近年に限らず以前から用いられてきた点を述べており、適切です。
② 社会的受容を高める努力の必要性が議論されている点を述べており、適切です。
③ 新技術が正負両面の影響をもたらす可能性を指摘しており、適切です。
④ 自動運転技術を例に、社会的受容の議論が十分でないとの指摘がある点を述べており、適切です。
一方、⑤は、
技術革新のスピードが加速しているため、
一般市民が社会的受容についての議論に参画する必要性は低下している
としていますが、これは不適切です。
むしろ、技術の高度化・高速化が進むほど、
その影響範囲は広がり、価値判断を伴う問題も増えるため、
一般市民の参画や社会的議論の重要性は高まっていると考えられています。
したがって、正解は⑤となります。
試験での留意点
科学技術と社会的受容の問題では、次の点が重要です。
技術の進歩と社会的議論は対立関係ではないこと。
技術が速く進むほど、合意形成の重要性は低下しないこと。
「専門家だけで決めればよい」という方向の記述には注意すること。
社会的受容は、技術導入の障害ではなく、不可欠なプロセスであること。
本問は、「技術が進めば市民の関与は不要になる」という誤った直感を突く設問です。
社会的受容は、今後ますます重要になるという基本的な立場を押さえておけば、正答は明確です。
23:独占禁止法違反への早期対応体制の基本整理
背景にある問い
「独占禁止法違反を防ぐために、企業はどの段階で、何をしておくべきか?」
「内部通報・社内調査・リニエンシー制度は、どのような関係にあるのか?」
独占禁止法違反(カルテル・入札談合など)は、発覚した場合の企業リスクが極めて大きく、
早期発見と初動対応が企業の命運を左右します。
そのため、平時からの監査、内部通報体制、社内調査の在り方が重要な論点となります。
本問は、独占禁止法違反を早期に発見し、適切に対応するための施策として何が妥当かを問う設問です。
キーワードで整理する
本問に関係する基本的な考え方を整理します。
- 内部監査・コンプライアンス監査
独占禁止法に関する監査は重要ですが、
その実施方法(常に抜き打ちであるべきかどうか)は状況に応じて判断されます。 - 内部通報制度(公益通報対応)
公益通報者保護法では、事業者の規模に応じた体制整備義務が定められており、
すべての事業者に一律の義務が課されているわけではありません。 - 通報窓口の利便性
通報制度が機能するためには、
利用しやすさ・心理的安全性・選択肢の多様性が重要です。 - リニエンシー制度(課徴金減免制度)
独占禁止法違反への関与を自主申告し、調査に協力した事業者に対して、
課徴金を減免する制度であり、
企業としては積極的に活用を検討すべき制度とされています。 - 社内調査の重要性
違反の疑いが生じた場合、
公正取引委員会の指示を待たず、迅速に事実関係を把握することが不可欠です。
実際の問われ方
本問では、独占禁止法違反への早期発見・対応施策に関する5つの記述のうち、「最も適切なもの」を選択します。
各選択肢を検討すると、
① 監査は常に抜き打ちで実施すべきと断定しており、現実的・制度的に不適切です。
② すべての事業者に一律の体制整備義務があるとする点で、法制度の理解として不適切です。
④ リニエンシー制度の導入や活用を避けるべきとする点で、明らかに不適切です。
⑤ 公正取引委員会の指示前に社内調査をしてはならないとする点で、不適切です。
一方、③は、
通報窓口の利便性向上のため、社外の法律事務所にも窓口を設置することや、
電話・メール・郵送等による通報を可能にすることが望ましい
としており、
内部通報制度を実効性あるものにするための適切な施策を述べています。
したがって、正解は③となります。
試験での留意点
独占禁止法対応の問題では、次の点が重要です。
「やってはいけない」対応が何かを見極めること。
リニエンシー制度は“避けるべき制度”ではなく“活用を検討すべき制度”であること。
違反の疑いがあれば、外部指示を待たずに事実確認を行うこと。
内部通報制度は、使われて初めて意味を持つこと。
本問は、「厳しそうな対応=正しい対応」という直感を排除できるかがポイントです。
実務的・制度的に妥当かどうかを冷静に判断することで、正解にたどり着けます。
24:境界型セキュリティとゼロトラストの基本整理
背景にある問い
「ゼロトラストは、VPNを使えば実現できるのか?」
「境界型セキュリティとゼロトラストは、対立する考え方なのか?」
近年、クラウド利用やテレワークの拡大により、従来の境界型セキュリティの限界が指摘されるようになりました。
その流れの中で注目されているのがゼロトラストセキュリティですが、
両者の関係や役割を誤って理解すると、用語の表層だけをなぞることになります。
本問は、境界型とゼロトラストの思想の違いと、具体的対策との関係を正しく理解しているかを問う設問です。
キーワードで整理する
両者の考え方を整理します。
- 境界型セキュリティ
組織のネットワークに「内」と「外」の境界を設け、
境界線で防御を固めることにより、外部からの攻撃や内部からの情報漏えいを防ぐ考え方です。
ファイアウォールや境界防御装置が典型例です。 - ゼロトラストセキュリティ
「内部だから安全」「一度認証したから信頼できる」という前提を置かず、
すべてのアクセスを常に検証するという思想に基づくセキュリティモデルです。
内外の区別ではなく、
「誰が・どの端末で・どの資源に・どの条件でアクセスするか」を都度確認します。 - VPNの位置付け
VPNは、通信経路を暗号化し、安全に社内ネットワークへ接続する仕組みです。
しかし、VPNで接続した後のアクセスを広く許可する構成では、
「一度中に入れば信頼する」という境界型の発想が残ります。 - 現在の実務的な考え方
ゼロトラストは境界型を完全に否定するものではなく、
両者を組み合わせた多層防御が一般的です。
実際の問われ方
本問では、境界型セキュリティとゼロトラストセキュリティに関する5つの記述のうち、「最も不適切なもの」を選択します。
各選択肢を検討すると、
① 境界型セキュリティの基本的な考え方を正しく述べており、適切です。
② ゼロトラストの「信頼しない」という思想を正しく表現しており、適切です。
④ クラウド利用の拡大により境界型の限界が顕在化している点を述べており、適切です。
⑤ ゼロトラストが境界型に完全に置き換わるのではなく、併用される点を述べており、適切です。
一方、③は、
社外から社内ネットワークにアクセスする際のVPN使用は、
ゼロトラストセキュリティの考え方に適ったセキュリティ対策の1つである
としていますが、これは不適切です。
VPNは通信の安全性を確保する手段ではありますが、
それ自体はゼロトラストの中核である
「継続的な認証・認可」「最小権限」「アクセス単位での検証」を実現するものではありません。
したがって、「VPN=ゼロトラスト対策」と捉える③は、
ゼロトラストの概念を誤って単純化しており、不適切です。
よって、正解は③となります。
試験での留意点
この分野では、次の点が重要です。
ゼロトラストは「製品」ではなく「思想・設計原則」であること。
VPNはゼロトラストを構成する一要素になり得ても、それ単独では不十分であること。
境界型とゼロトラストは対立概念ではなく、補完関係にあること。
「それっぽい技術名」が出てきたときは、思想と一致しているかを確認すること。
本問は、「新しい言葉に古い技術を当てはめる」誤解を見抜けるかがポイントです。
ゼロトラスト=常時検証・最小権限という軸を押さえていれば、正解は明確です。
安全管理
25:事故・災害の未然防止活動の基本整理
背景にある問い
「事故防止対策には、どのような分析手法や考え方があるのか?」
「安全対策で用いられる“〇M”“〇E”は、正しく理解されているか?」
事故・災害の未然防止では、原因分析と対策立案を体系的に行うことが重要です。
そのため、現場安全管理では、4M分析、KYT、4E対策など、定型化された手法が広く用いられています。
本問は、これらの安全管理手法の用語と内容が正確に対応しているかを問う設問です。
キーワードで整理する
本問に関係する代表的な安全管理手法を整理します。
- 4M分析
事故や災害の原因を
Man(人)・Machine(機械)・Media(環境)・Management(管理)
の4つの視点から分析する手法です。 - 危険予知訓練(KYT)
作業や職場に潜む危険要因を事前に洗い出し、
危険感受性と予防行動力を高めるための訓練で、
KYT基礎4ラウンド法などが代表的です。 - テクニカルスキル/ノンテクニカルスキル
専門知識や技能(テクニカル)と、
コミュニケーション、判断力、チームワークなど(ノンテクニカル)を
バランスよく向上させることが、安全確保には不可欠とされています。 - 安全衛生パトロール
職場を巡視し、潜在的な危険要因を発見し、
作業方法や設備改善につなげる活動です。 - 4E対策
事故防止対策を
Education(教育)・Engineering(技術的対策)・Enforcement(規則・管理)・Environment(作業環境)
の4つの観点から検討する考え方です。
実際の問われ方
本問では、事故・災害の未然防止活動に関する5つの記述のうち、「最も不適切なもの」を選択します。
各選択肢を検討すると、
① 4M分析の構成要素を正しく述べており、適切です。
② 危険予知訓練とKYT基礎4ラウンド法について正しく述べており、適切です。
③ テクニカルスキルとノンテクニカルスキルのバランスの重要性を述べており、適切です。
⑤ 安全衛生パトロールの目的と内容を正しく述べており、適切です。
一方、④は、
事故の4E対策は、Education、Engineering、Enforcement、Economy の4つの観点から検討する
としていますが、これは不適切です。
4E対策の「E」は Economy(経済性)ではなく、Environment(作業環境) を指します。
経済性の観点が考慮される場合はあっても、4E対策の正式な構成要素ではありません。
したがって、正解は④となります。
試験での留意点
事故・災害防止分野では、次の点が重要です。
4M、4Eなどの略語は構成要素を正確に覚えること。
「それらしく聞こえる単語」に惑わされないこと。
安全管理は分析(原因)と対策(予防)を切り分けて考えること。
現場活動(KYT・パトロール)と理論(分析手法)を対応付けて理解すること。
本問は、「E=Economy」と読み替えてしまう誤答を狙った典型問題です。
定型フレームワークの正式構成を押さえていれば、確実に判断できます。
26:企業経営と安全の基本整理
背景にある問い
「安全は現場管理者の仕事なのか、それとも経営の責任なのか?」
「労働安全衛生法における“義務者”は誰なのか?」
企業における安全衛生は、現場レベルの管理だけで完結するものではなく、
経営方針・組織体制・継続的改善を含む経営課題として位置付けられています。
その一方で、法律上の責任主体を取り違えると、安全管理の本質を誤って理解することになります。
本問は、安全経営の考え方と労働安全衛生法における責任の所在を正確に理解しているかを問う設問です。
キーワードで整理する
企業経営と安全に関する基本的な考え方を整理します。
- 安全経営
安全管理を生産性・品質・原価・納期・士気・環境などと統合し、
経営戦略の一環として体系的に管理する考え方です。 - 企業の社会的責任(CSR)
労働災害防止にとどまらず、環境、品質、コンプライアンスなどを含め、
社会から信頼される企業であることが求められています。 - 経営トップの役割
経営者は、労働安全衛生に関する方針を内外に示し、
組織的・計画的・継続的に安全衛生活動を推進する責任を負います。 - 労働安全衛生法の目的
労働者の安全と健康の確保、快適な職場環境の形成を目的としています。 - 法令上の義務者
労働安全衛生法における主たる義務者は事業者であり、
現場の管理監督者ではありません。
実際の問われ方
本問では、企業経営と安全に関する5つの記述のうち、「最も不適切なもの」を選択します。
各選択肢を検討すると、
① 安全管理を経営課題として戦略的に管理する考え方を述べており、適切です。
② 企業の社会的責任として、安全を広義に捉える点を述べており、適切です。
③ 経営者が安全衛生方針を示し、継続的に取り組む重要性を述べており、適切です。
⑤ 労働災害防止計画において、事業者の自主的取組を促進する趣旨を述べており、適切です。
一方、④は、
労働安全衛生法の主たる義務者は、職場の長など現場の管理監督者である
としていますが、これは不適切です。
労働安全衛生法において、**安全衛生確保の主たる義務者は「事業者」**です。
現場の管理監督者は重要な役割を担いますが、
法的責任の主体ではありません。
したがって、④は労働安全衛生法における責任の所在を誤っており、不適切です。
よって、正解は④となります。
試験での留意点
企業経営と安全の問題では、次の点が重要です。
安全は「現場任せ」ではなく「経営責任」であること。
法律上の義務者は原則として「事業者」であること。
管理監督者は実務担当者であり、責任主体ではないこと。
安全経営はCSRや人材確保とも密接に関係していること。
本問は、「現場で管理している=責任者」という直感的誤解を突く設問です。
法令上の義務主体と、実務上の役割を切り分けて理解することが、正答への鍵となります。
27:南海トラフ地震の多様な発生形態に備えた防災対応
背景にある問い
「南海トラフ地震は、いつ・どのように発生するのか?」
「臨時情報(巨大地震警戒)が出たら、必ず避難しなければならないのか?」
南海トラフ地震については、発生時期や規模を正確に予測することは困難であり、
過去の経験からも、段階的に危険度が高まるとは限らず、突発的に発生する可能性が指摘されています。
そのため、防災対応は「予測に依存する」のではなく、
不確実性を前提に、日頃からの備えを基本とする考え方が採られています。
キーワードで整理する
内閣府の
「南海トラフ地震の多様な発生形態に備えた防災対応検討ガイドライン」
では、次の点が重要な考え方として示されています。
- 南海トラフ地震は、発生確率が段階的に高まるとは限らない
- 臨時情報は「予測」ではなく「注意喚起」である
- 警戒期間は固定的に定められていない
- 地域や個人の状況に応じた判断が重視される
特に「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震警戒)」は、
一律の避難を求めるものではない点が重要です。
実際の問われ方
本問は、南海トラフ地震臨時情報が発表された場合の対応について、
ガイドラインの考え方と合致しない記述を選ばせる問題です。
各選択肢を整理すると、次のようになります。
- 調査開始の仕組み
- 突発地震への備えの考え方
- 警戒期間の設定
- 地方公共団体の役割
- 日常生活と防災行動の関係
このうち、警戒期間を固定的に捉えている記述が、
ガイドラインの趣旨から外れているかどうかが判断のポイントになります。
正解と理由
正解:③
③では、
「最初の地震発生後1か月間を、最も警戒する期間として基本とする」
としていますが、これは誤りです。
ガイドラインでは、
- 特に注意すべき期間は、最初の地震発生後の比較的短期間(概ね数日〜1週間程度)
- ただし、科学的に「安全」と言い切れる期間は存在しない
とされており、警戒期間を1か月と固定する考え方は示されていません。
そのため、③はガイドラインの内容と合致せず、
最も不適切な記述となります。
試験での留意点
南海トラフ地震に関する問題では、次のような誤解を突く出題が多く見られます。
- 「臨時情報=必ず避難」と思い込んでしまう
- 警戒期間が数値で明確に定められていると誤認する
- 予測精度が高いことを前提に行動を考えてしまう
試験では、
「予測には限界がある」「日常的な備えが基本」
という考え方を軸に判断することが重要です。
28:避難情報に関するガイドライン
背景にある問い
「避難情報は、誰に・どの段階で・どのような行動を求めるものなのか?」
「高齢者等避難、避難指示、緊急安全確保は、どう使い分けられているのか?」
内閣府の
「避難情報に関するガイドライン」 では、
市町村が発令する避難情報を、警戒レベルに対応づけて整理し、
住民がとるべき行動を明確に示しています。
この問題では、
各避難情報の定義と「指示・呼びかけの強さ」の違いを正しく理解しているかが問われています。
キーワードで整理する
避難情報は、次のように整理されています。
- 警戒レベル3:高齢者等避難
- 避難に時間を要する人(高齢者、障害者など)が
避難を開始する段階
- 避難に時間を要する人(高齢者、障害者など)が
- 警戒レベル4:避難指示
- 危険が切迫し、全住民が立退き避難を行う段階
- 警戒レベル5:緊急安全確保
- 立退き避難が困難な場合に、
命を守るための緊急行動を取る段階
- 立退き避難が困難な場合に、
重要なのは、
「高齢者等避難」は“避難開始の呼びかけ”であり、
「立退き避難を指示するものではない」
という点です。
実際の問われ方
本問は、避難情報の定義を説明した記述の中から、
ガイドラインの内容と合致しないものを選ぶ形式です。
特に、
- 「誰を対象にしているか」
- 「市町村長が“指示”するのか、“促す”のか」
- 「立退き避難か、避難開始か」
といった表現の違いが判断ポイントになります。
正解と理由
正解:⑤
⑤では、
高齢者等避難は、要配慮者に対して、市町村長が発令し、
立退き避難を指示することができる避難情報である。
としていますが、これは誤りです。
**高齢者等避難(警戒レベル3)**は、
- 避難に時間を要する人が
避難を開始することを促す情報
であり、
「立退き避難を指示する段階」ではありません。
立退き避難を指示するのは、
警戒レベル4:避難指示 です。
そのため、⑤は
避難情報の区分と内容を取り違えており、
最も不適切な記述となります。
他の選択肢の整理
- ①【適切】
平時から情報入手手段や活用方法を周知するという考え方は、ガイドラインに合致。 - ②【適切】
行政依存に陥らず、住民の主体的判断を重視する点は正しい。 - ③【適切】
避難指示は、市町村長が発令し、立退き避難を求める情報であり正しい。 - ④【適切】
緊急安全確保は、立退き避難が困難な場合に命を守る行動を求める情報であり正しい。
試験での留意点
避難情報に関する問題では、次の点が狙われやすくなっています。
- 「高齢者等避難」と「避難指示」の混同
- 「避難を促す」と「避難を指示する」の違い
- 警戒レベルと行動内容の対応関係
用語の印象ではなく、
「誰に」「どの行動を」求めているかで判断することが重要です。
29:インフラ老朽化対策
背景にある問い
「老朽化が進むインフラは、どのような考え方で維持・更新していくべきか?」
「事後保全と予防保全のどちらが、今後の基本になるのか?」
我が国では、高度経済成長期に集中的に整備されたインフラが一斉に老朽化しつつあり、
国土交通省は、河川管理施設、下水道管渠、道路橋、トンネル等について
建設後50年以上経過する施設の割合などを公表しています。
本問は、こうした インフラ老朽化対策の基本的な考え方について、
正しい理解ができているかを問う問題です。
キーワードで整理する
インフラ老朽化対策における重要な視点は、次のとおりです。
- 老朽化の進行状況を把握するための 点検・診断
- 壊れてから直す「事後保全」から、
劣化を未然に防ぐ 予防保全型管理 への転換 - 点検 → 対策 → 記録 → 次回点検へとつなぐ メンテナンスサイクル
- 人口減少・社会構造の変化を踏まえた 施設の役割・必要性の再検討
- 維持管理を見据えた 合理的な構造・設計の選択
実際の問われ方
本問は、インフラ老朽化対策に関する一般的な説明の中から、
国の方針や考え方と合致しない記述を選ばせる形式です。
特に、
- 「予防保全」と「事後保全」の位置づけ
- 国が目指している管理の方向性
が判断のポイントになります。
正解と理由
正解:②
②では、
予防保全の考え方を基本とする方が少ないと推計されている。
としていますが、これは不適切です。
現在のインフラ老朽化対策では、
- 事後保全を基本とするのではなく
- 予防保全を基本とする管理へ転換していく必要がある
という考え方が明確に示されています。
国土交通省の各種施策や計画でも、
予防保全型インフラメンテナンスの推進が強調されており、
「予防保全を基本とする方が少ない」という記述は、
国の方向性と逆であるため誤りです。
他の選択肢の整理
- ①【適切】
下水道管渠は、高度経済成長期に整備された割合が高く、
建設後50年以上経過する施設の割合が高いという指摘は妥当。 - ③【適切】
点検・診断結果を記録し、次回点検に活用するメンテナンスサイクルの構築は、
インフラ老朽化対策の基本。 - ④【適切】
人口減少や社会環境の変化を踏まえ、
施設の役割や必要性そのものを再検討するという考え方は正しい。 - ⑤【適切】
維持管理コストを考慮し、管理しやすい構造を採用することは合理的な対策。
試験での留意点
インフラ老朽化対策では、
- 事後保全 → 予防保全への転換
- 「直す」だけでなく「どう使い続けるか」「本当に必要か」
といった 考え方の転換 が頻出ポイントになります。
試験では、
「国が目指している方向性はどちらか」
を意識して判断すると、誤りを見抜きやすくなります。
30:Safety1.0 と Safety2.0 による安全管理の考え方
背景にある問い
「安全は、技術によって“守る”ものなのか?」
「人・組織・環境を含めた関係性の中で“つくる”ものなのか?」
近年の安全管理では、
従来の Safety1.0(技術中心・事故防止型) に加えて、
Safety2.0(社会技術的システムとしての安全) という考え方が重視されています。
本問は、各記述が
- Safety1.0 的発想か
- Safety2.0 的発想か
のどちらに該当するかを正しく分類できるかを問う問題です。
キーワードで整理する
まず、両者の考え方を整理します。
- Safety1.0
- 危険を排除・隔離する
- 機械・装置側の安全対策が中心
- フェイルセーフ、インターロックなど
- 人と機械の接触をなくす
- Safety2.0
- 人・技術・組織・環境の相互作用を重視
- 情報共有や協調による安全確保
- IoT・データ活用を前提
- 完全排除ではなく「共存」を前提とする
実際の問われ方
本問では、(ア)〜(オ)の記述を
Safety1.0 / Safety2.0 のどちらに該当するか分類し、
その組合せとして正しいものを選ばせています。
各記述の分類
- (ア)
協調安全を適用し、人・共有・機械の各領域のリスクを最小化
→ 人と機械の協調を前提とした考え方
→ Safety2.0 - (イ)
人・技術・組織・環境が相互に情報を共有して安全を確保
→ 社会技術システムとしての安全
→ Safety2.0 - (ウ)
停止信号時に自動的にブレーキがかかる鉄道の保安装置
→ フェイルセーフ・技術中心
→ Safety1.0 - (エ)
IoT時代の安全の在り方の概念
→ データ連携・動的安全
→ Safety2.0 - (オ)
機械対策により人と機械の共有領域をなくす
→ 隔離・排除による安全確保
→ Safety1.0
正解と理由
正解:④
| 記号 | 分類 |
|---|---|
| ア | Safety2.0 |
| イ | Safety2.0 |
| ウ | Safety1.0 |
| エ | Safety2.0 |
| オ | Safety1.0 |
この組合せに一致するのは ④ です。
試験での留意点
Safety1.0 / Safety2.0 の問題では、次の視点が重要です。
- 隔離・排除・自動停止 → Safety1.0
- 協調・情報共有・IoT・関係性 → Safety2.0
- 「新しい技術」かどうかではなく、
**安全をどう捉えているか(思想)**で判断する
表現が抽象的でも、
人と機械の関係が「分離」か「協調」かを軸に整理すると判断しやすくなります。
31:労働災害発生状況の指標(度数率・強度率・年千人率)
背景にある問い
「労働災害の多さは、どの指標で比較すべきなのか?」
「災害の“件数”“重さ”“発生頻度”は、どう使い分けるのか?」
労働災害の状況を評価する際には、
度数率・強度率・年千人率という代表的な指標が用いられます。
本問は、これらの指標を正しく計算し、
異なる事業所間で相対的に比較できるかを問う問題です。
キーワードで整理する
各指標の意味と算式を整理します。
- 度数率
災害の発生頻度を示す指標度数率 = 災害件数 × 1,000,000 ÷ 延労働時間 - 強度率
災害の重さ(損失日数)を示す指標強度率 = 労働損失日数 × 1,000 ÷ 延労働時間 - 年千人率
労働者数に対する死傷者の割合を示す指標年千人率 = 死傷者数 ÷ 平均労働者数 × 1,000
事業所Bの数値整理
与えられた条件より、事業所Bについて整理します。
- 従業員数:500名
- 年間平均労働時間:1,700時間
- 延労働時間:
500 × 1,700 = 850,000 時間 - 死傷者数:1名
- 労働損失日数:30日
- 災害件数:1件
これを各指標に当てはめます。
- 度数率
1 × 1,000,000 ÷ 850,000 ≒ 1.18 - 強度率
30 × 1,000 ÷ 850,000 ≒ 0.035 - 年千人率
1 ÷ 500 × 1,000 = 2.0
事業所Aとの比較
事業所Aの値は次のとおりです。
- 度数率:1.5
- 強度率:0.09
- 年千人率:2.1
これと比較すると、事業所Bは、
- 度数率:1.18 < 1.5
- 強度率:0.035 < 0.09
- 年千人率:2.0 < 2.1
となり、すべての指標で事業所Aを下回っています。
正解と理由
正解:①
①
「度数率、強度率、年千人率のすべてにおいて事業所Aの値を下回っている」
→ 計算結果と比較関係のいずれも正しく、最も適切な記述です。
試験での留意点
この種の問題では、
- 指標の意味の取り違え
- 延労働時間の計算ミス
- 「死者数」と「死傷者数」の混同
が頻出ミスです。
特に、
度数率・強度率は“延労働時間ベース”
年千人率は“人数ベース”
という違いを意識すると、正確に判断できます。
32:ブラインド訓練と事故・災害対応訓練
背景にある問い
「事故や災害対応訓練では、どこまで事前に条件を与えるべきか?」
「シナリオ提示型訓練とブラインド訓練は、何を目的として使い分けるのか?」
事故・災害対応訓練には、
- シナリオ提示型訓練
- ブラインド訓練(状況付与型訓練・状況注入型訓練)
などの手法があり、それぞれ目的と効果が異なります。
本問は、ブラインド訓練の特性を正しく理解しているかを問う問題です。
キーワードで整理する
まず、代表的な訓練手法を整理します。
- シナリオ提示型訓練
- 事前に事故・災害の想定や進行を提示
- 手順や役割の確認に適している
- 初学者・基礎訓練向き
- ブラインド訓練
- 事前に詳細なシナリオを提示しない
- 状況が逐次付与・変化する
- 判断力・応用力・連携力の養成が目的
- 実災害に近い緊張感を再現できる
実際の問われ方
本問は、ブラインド訓練の特徴を述べた記述の中から、
その性質と合致しないものを選ばせる形式です。
ポイントは、
- 「基礎確認に向く訓練」なのか
- 「応用的・判断力重視の訓練」なのか
を正しく区別できているかにあります。
正解と理由
正解:②
②では、
状況付与型訓練は、事故や災害対応の全体像を把握する観点で
シナリオ提示型訓練よりも有効である
としていますが、これは不適切です。
ブラインド訓練(状況付与型訓練)は、
- 判断力や応用力の向上
- 実災害に近い対応能力の養成
を目的とするものであり、
事故・災害対応の全体像や基本的な流れを理解する目的には、
シナリオ提示型訓練の方が適しています。
②は、
訓練手法の目的と効果を逆に捉えている点が誤りです。
他の選択肢の整理
- ①【適切】
ブラインド訓練は難易度が高く、関係機関の連携力強化に有効。 - ③【適切】
実災害に近い状況で訓練することは、対応能力向上につながる。 - ④【適切】
判断や行動の結果に応じて展開が変わる訓練は、判断力養成に有効。 - ⑤【適切】
実対応を重視し、終了時刻を固定しにくい点はブラインド訓練の特徴。
試験での留意点
訓練手法に関する問題では、
- 基礎確認 → シナリオ提示型
- 判断力・応用力 → ブラインド訓練
という整理が重要です。
「どちらが優れているか」ではなく、
「何を目的とした訓練か」 で判断することが、
正答への近道になります。
社会環境管理
33:地球規模の環境問題と国際的取組)
背景にある問い
「地球規模の環境問題は、どの国際会議・条約で、どのように整理されてきたのか?」
「会議名や条約名は、内容と正確に対応づけられているか?」
地球環境問題は、1970年代以降、
国連を中心とした国際会議や条約を通じて段階的に議論・制度化されてきました。
本問では、国際会議・条約・指標・国際目標の正確な対応関係を理解しているかが問われています。
キーワードで整理する
本問に関係する主な用語を整理します。
- ウィーン条約
オゾン層破壊による人の健康・環境への悪影響を防止するための枠組条約 - 国連人間環境会議(ストックホルム会議)
1972年開催。環境問題を初めて包括的に議論した国際会議 - 地球サミット(国連環境開発会議)
1992年、リオ・デ・ジャネイロで開催。アジェンダ21を採択 - エコロジカル・フットプリント
人間活動を支えるために必要な生態系の面積を示す指標 - 京都議定書/パリ協定、SDGs
気候変動対策や持続可能な開発に関する国際的枠組み
実際の問われ方
本問は、地球規模環境問題に関する説明の中から、
国際会議や条約の内容を誤って結びつけている記述を選ばせる問題です。
特に、
- 会議名と開催年
- 会議で採択された文書
を正確に区別できているかが判断のポイントになります。
正解と理由
正解:②
②では、
ストックホルムで開催された国連人間環境会議は地球サミットとも呼ばれ、
「アジェンダ21」の採択などの国際合意が得られた
としていますが、これは誤りです。
- 国連人間環境会議(ストックホルム会議)
- 1972年開催
- 世界で初めて環境問題を包括的に議論
- 「かけがえのない地球」宣言などを採択
- 地球サミット(国連環境開発会議)
- 1992年、リオ・デ・ジャネイロで開催
- アジェンダ21、リオ宣言 を採択
つまり、
ストックホルム会議と地球サミットは別の国際会議であり、
②は両者を混同している点で最も不適切な記述となります。
他の選択肢の整理
- ①【適切】
ウィーン条約は、オゾン層破壊から人の健康と環境を保護するための枠組条約であり正しい。 - ③【適切】
エコロジカル・フットプリントは、資源生産やCO₂吸収に必要な生態系の面積で示される指標。 - ④【適切】
京都議定書は先進国のみに法的削減義務を課し、パリ協定では全参加国に削減努力が求められている。 - ⑤【適切】
SDGsは2030年を期限とする17のゴールからなる世界共通の目標。
試験での留意点
この分野では、
- 会議名・開催年・採択文書の組合せ
- 「地球サミット」「ストックホルム会議」といった
似た名称の混同
が頻出のひっかけポイントです。
特に、
- アジェンダ21 → 地球サミット(1992年・リオ)
- ストックホルム会議 → 1972年・人間環境会議
という対応関係は確実に押さえておく必要があります。
エネルギー政策と関連制度(Ⅰ-1-34)
背景にある問い
「エネルギー政策では、何を同時に満たすことが求められているのか?」
「省エネ・分散電源・脱炭素の考え方は、どのように整理されているのか?」
エネルギー分野では、
安全性・安定供給・経済性・環境適合といった複数の要請を同時に満たすことが求められています。
本問は、エネルギー政策や関連制度・技術について、
基本的な考え方を正しく理解しているかを問う問題です。
キーワードで整理する
本問に関連する主な概念を整理します。
- S+3E
Safety(安全性)を前提に、
Energy Security(安定供給)、Economic Efficiency(経済効率性)、Environment(環境適合)を同時に追求する考え方 - トップランナー制度
現在の最高性能水準を基準に、省エネ性能向上を促す制度 - スマートグリッド
ICTを活用し、集中型・分散型電源を統合管理する電力システム - ESCO事業
省エネ改修によるコスト削減分で投資回収を行う事業形態 - コージェネレーション
発電時の排熱を有効利用する高効率エネルギー供給方式
実際の問われ方
本問は、エネルギーに関する制度・技術の説明の中から、
政策の方向性や技術的評価と合致しないものを選ばせる問題です。
特に、
- 脱炭素と省エネの関係
- 効率向上型技術の位置づけ
が判断のポイントになります。
正解と理由
正解:⑤
⑤では、
コージェネレーションは…
カーボンニュートラル実現に向けて、使用燃料の脱炭素化が不可欠であることから、
段階的に縮小する取組が進められている
としていますが、これは不適切です。
コージェネレーションは、
- 発電と熱利用を同時に行うことで
エネルギー利用効率を大幅に高める技術 - 省エネルギー対策・分散型電源として
現在も積極的に導入・活用が推進されている技術
です。
確かに、将来的には燃料の脱炭素化(水素・バイオガス等)が課題とされていますが、
「段階的に縮小する技術」と位置づけられているわけではありません。
むしろ、
脱炭素化と両立させながら活用を続けるべき技術
と整理されている点で、⑤は政策の方向性を誤って表現しています。
35:ラムサール条約と湿地の保全
背景にある問い
「ラムサール条約は、どのような湿地を対象としているのか?」
「条約湿地に登録されると、どのような規制が課されるのか?」
ラムサール条約は、
**湿地の保全と賢明な利用(ワイズユース)**を目的とする国際条約であり、
その対象や運用については、しばしば誤解されやすい点があります。
本問は、
ラムサール条約の対象範囲と、条約湿地登録の意味を
正しく理解しているかを問う問題です。
キーワードで整理する
ラムサール条約に関する基本事項を整理します。
- 対象となる湿地
- 淡水域・汽水域の沼沢地、湿原、泥炭地
- 河川・湖沼
- 干潟、藻場などの沿岸域(海域は水深6mまで)
- 自然湿地だけでなく、水田やダム湖など人工湿地も含む
- 目的
- 水鳥をはじめとする生物の生息地の保全
- 人間の利用と両立した「ワイズユース」の推進
- ワイズユース
- エコツーリズム
- 農業(稲作)、漁業・養殖なども含まれる
実際の問われ方
本問は、ラムサール条約に関する説明の中から、
条約の内容と整合する、最も適切な記述を選ばせる形式です。
判断のポイントは、
- 対象となる湿地の範囲
- 人工湿地・海域の扱い
- 条約登録による法的効果
にあります。
正解と理由
正解:④
④では、
条約湿地の登録に当たっては、あらかじめ国指定の鳥獣保護区や
国立・国定公園などの保護地域に指定されるが、
条約湿地となることにより追加的な規制が課されることはない。
としています。
これは、ラムサール条約の実際の運用に合致しています。
- 条約自体は、直接的な規制を課すものではない
- 日本では、既存の国内法(自然公園法、鳥獣保護管理法など)による
保全措置を前提として登録される - 条約登録は、保全の国際的な位置づけを明確にするもの
であり、④は正しい記述です。
他の選択肢の整理
- ①【不適切】
ラムサール条約は水鳥だけでなく、魚類や多様な生物の生息地としての湿地も対象とする。 - ②【不適切】
条約は人工湿地も対象とし、日本では水田やダム湖も登録されている。 - ③【不適切】
沿岸域・干潟などの海域(浅海域)も条約の対象であり、日本でも登録例がある。 - ⑤【不適切】
ワイズユースには、エコツーリズムだけでなく、農業・漁業・養殖も含まれる。
試験での留意点
ラムサール条約に関する問題では、
- 「自然湿地のみ」「水鳥のみ」という限定表現
- 「登録=新たな規制がかかる」という誤解
- 農業・漁業を排除するという誤認
が典型的なひっかけポイントになります。
特に重要なのは、
「保全」と「賢明な利用」を両立させる条約
という位置づけです。
36:循環型社会と環境負荷低減の取組
背景にある問い
「循環型社会とは、どのような社会構造を目指しているのか?」
「都市構造や国際条約、消費行動は、環境負荷低減とどう関係しているのか?」
循環型社会の形成に向けては、
資源の効率的利用、廃棄物の適正処理、都市構造の再編、
さらには国際的な規制や消費スタイルの見直しまで、
幅広い取組が進められています。
本問は、こうした 概念・制度・用語の正確な理解を問う問題です。
キーワードで整理する
本問に関係する主要な概念を整理します。
- サーキュラーエコノミー
- 設計段階から再利用・再資源化を前提とする
- 資源消費と廃棄物発生の最小化
- 高付加価値の維持を重視
- 地域循環共生圏
- 地域資源を最大限活用しつつ、地域間で補完
- 自立・分散型社会の形成
- コンパクトシティ
- 都市機能や居住を「集約」
- ただし 複数拠点(多極型) が前提
- バーゼル条約
- 有害廃棄物の越境移動を規制
- サステナブルファッション
- 生産から廃棄までの環境・社会配慮
実際の問われ方
本問は、循環型社会や環境負荷低減に関する説明の中から、
概念を誤って単純化・極端化している記述を選ばせる形式です。
特に、
- 都市構造の考え方
- 「集約」の意味の取り違え
が判断のポイントになります。
正解と理由
正解:③
③では、
市町村内のすべての都市機能を
最も主要な拠点1か所に集約し、
すべての居住者をその拠点周辺に集約する
としていますが、これは誤りです。
コンパクトシティの考え方は、
- 都市機能や居住を「集約」する点は正しいが
- 1か所への一極集中を前提としていない
- 実際には、
- 複数の拠点を設ける「多極型」
- 公共交通ネットワークと連携した配置
が基本となっています。
③は、
コンパクトシティを「単一拠点集中型」と誤って説明している点で、
最も不適切な記述です。
他の選択肢の整理
- ①【適切】
サーキュラーエコノミーの考え方を正しく説明している。 - ②【適切】
地域循環共生圏の「自立・分散・補完」という考え方に合致。 - ④【適切】
バーゼル条約の目的と事前通知・同意制度を正しく説明している。 - ⑤【適切】
サステナブルファッションの定義として妥当。
試験での留意点
循環型社会・都市政策の問題では、
- 「集約」=「一極集中」と誤認させる表現
- 理念を極端に言い切っている記述
が典型的なひっかけになります。
特にコンパクトシティは、
「多極型・ネットワーク型」
という点を押さえておくことが重要です。
37:公害問題に関する基本用語
背景にある問い
「公害問題で使われる用語は、法令上どのように定義されているのか?」
「似た言葉や歴史的表現を、正確に区別できているか?」
公害に関する問題では、
法律上の定義と一般的な説明が混同されやすく、
特に「典型7公害」や「公害病」の内容は、定義の正確さが問われます。
本問は、公害問題に関して使われる用語の説明として、
最も不適切なものを選ばせる問題です。
キーワードで整理する
本問に関連する代表的な用語を整理します。
- 典型7公害(環境基本法)
- 大気汚染
- 水質汚濁
- 土壌汚染
- 騒音
- 振動
- 地盤沈下
- 悪臭
- 四大公害病
- 水俣病
- 第二水俣病(新潟水俣病)
- 四日市ぜんそく
- イタイイタイ病
- 光化学オキシダント
- NOxやVOCが太陽光を受けて生成される二次汚染物質
- PM2.5
- 粒径2.5μm以下の微小粒子状物質
- バイオレメディエーション
- 微生物等を利用した環境浄化技術
実際の問われ方
本問は、公害関連用語の説明の中から、
法令上の定義と合致しない記述を見抜く形式です。
特に、
- 「典型7公害」の構成要素
- 用語の正式な定義
が判断のポイントになります。
正解と理由
正解:①
①では、
環境基本法において定義される
大気汚染、水質汚濁、土壌汚染、騒音、振動、地盤沈下及び
廃棄物投棄 の7種類の公害
としていますが、これは誤りです。
典型7公害に含まれるのは、
- 廃棄物投棄ではなく、悪臭 です。
廃棄物投棄は環境問題の一つではありますが、
環境基本法で定める「典型7公害」には含まれていません。
そのため、①は
公害の法令上の定義を誤っている点で、最も不適切な記述となります。
他の選択肢の整理
- ②【適切】
四大公害病の内容として正しい。 - ③【適切】
光化学オキシダントの定義として妥当。 - ④【適切】
PM2.5の一次粒子・二次粒子を含めた説明として正しい。 - ⑤【適切】
バイオレメディエーションの技術的説明として正しい。
試験での留意点
公害分野では、
- 「典型7公害」の暗記ミス
- 環境問題全般と法令用語の混同
が頻出のひっかけポイントです。
特に重要なのは、
典型7公害の最後は「悪臭」
という点です。
38:ALPS処理水と放射性物質対策
背景にある問い
「ALPS処理水とは、どのような処理が行われた水なのか?」
「処理水の海洋放出について、事実として正しい説明と誤った説明はどこか?」
福島第一原子力発電所では、事故後に発生した汚染水について、
ALPS(多核種除去設備) による浄化処理を行ったうえで、
国の方針に基づき、海水で希釈した処理水の海洋放出が進められています。
本問は、ALPS処理の内容や処理水の扱いについて、
事実関係を正確に理解しているかを問う問題です。
キーワードで整理する
ALPS処理水に関する基本事項を整理します。
- ALPS(多核種除去設備)
- 沈殿処理、吸着処理などを組み合わせ
- トリチウムを除く多くの放射性核種を除去
- ALPS処理水
- トリチウムは残存
- その他の放射性物質は規制基準以下
- 海洋放出
- 海水で十分に希釈
- 放水トンネルを通じて沖合で放出
- 貯蔵状況
- タンク容量は依然として大きな課題
実際の問われ方
本問は、ALPS処理水に関する説明の中から、
現在の状況や公式発表と合致しないものを選ばせる形式です。
特に、
- 規制基準の考え方
- 海洋放出の方法
- 貯蔵量の現状
が判断のポイントになります。
正解と理由
正解:⑤
⑤では、
海水で希釈したALPS処理水の海洋放出により、
発電所内タンクに貯蔵されているALPS処理水等の合計量は、
現在、放出前の2分の1以下となっている
としていますが、これは不適切です。
海洋放出は段階的・長期的に行われており、
現時点で貯蔵量が「放出前の2分の1以下になっている」
と断定できる状況にはありません。
貯蔵量は徐々に減少する見込みではあるものの、
具体的に「2分の1以下」とする記述は、
政府・事業者の公式説明に基づかない不正確な表現です。
他の選択肢の整理
- ①【適切】
汚染水には高濃度の放射性物質が含まれ、ALPS等で浄化処理が行われている。 - ②【適切】
ALPSは沈殿処理や吸着処理を繰り返し行う仕組み。 - ③【適切】
トリチウム以外の放射性物質は、環境放出基準を満たしている。 - ④【適切】
処理水は海水で希釈され、放水トンネルを通じて沖合で海洋放出されている。
試験での留意点
ALPS処理水に関する問題では、
- 処理内容(何が除去され、何が残るか)
- 「基準を満たす」と「完全にゼロ」の混同
- 数値を断定する表現
がひっかけとして狙われやすくなります。
特に、
「トリチウムは除去されない」
「貯蔵量の具体的な割合を断定していない」
という点は確実に押さえておく必要があります。
39:第六次環境基本計画とウェルビーイング
背景にある問い
「第六次環境基本計画が掲げる『ウェルビーイング/高い生活の質』とは何を意味するのか?」
「その実現に向けて、どのような社会経済システムが求められているのか?」
第六次環境基本計画では、環境政策の最上位の目的として、
- 現在及び将来の国民一人一人の
生活の質、幸福度、ウェルビーイング、経済厚生の向上
が明確に位置づけられています。
本問は、こうした目的を達成するために示された
社会経済システムの方向性や価値観について、
計画の趣旨を正確に理解しているかを問うものです。
キーワードで整理する
第六次環境基本計画における基本的な考え方を整理します。
ウェルビーイング(Well-being)
- GDP成長のみで測られない生活の質や幸福感
- 安心・安全、将来世代への配慮を含む概念
フローとストック
- フロー:GDPなどの経済活動の量
- ストック:自然資本、人材、社会基盤などの蓄積
社会経済システムの方向性
- 自立・分散・協調型
- 地域の多様性とレジリエンスの重視
- 大規模集中型からの転換
包摂性と参加
- 弱者を含めた包摂的社会の実現
- 国民参加の重視
実際の問われ方
本問は、
- 「ウェルビーイング/高い生活の質」を実現するために
どのような社会経済システムが望ましいとされているか
という観点から、
計画の方向性と整合しない記述を選ばせる形式です。
特に、
- 集中型か分散型か
- フロー重視かストック重視か
- 将来世代への配慮があるか
が判断のポイントとなります。
正解と理由
正解:⑤
⑤では、
「ウェルビーイング/高い生活の質」の観点からは、
自立分散型・水平分散型の社会経済システムへ移行するよりも、
大規模集中型の社会経済システムの維持を図ることが重要である
としています。
しかし、第六次環境基本計画では、
- 大規模集中型社会の維持ではなく
- 自立・分散・協調型社会への転換
を明確に打ち出しています。
地域の特性を活かし、リスク分散と持続可能性を高めることが
ウェルビーイング向上の前提とされており、
⑤の記述は計画の基本理念と矛盾します。
したがって、⑤が最も不適切です。
他の選択肢の整理
①【適切】
フローだけでなく、自然資本などのストックの維持・回復・充実を重視しており、計画の趣旨に合致します。
②【適切】
環境問題の解決には、将来を見据えた長期的視点での投資が不可欠であり、適切です。
③【適切】
現在のニーズに過度に依存せず、将来のあるべき姿を踏まえた本質的ニーズへの対応を重視しており、適切です。
④【適切】
国家・市場・コミュニティのバランスと包摂的社会の実現を重視しており、計画の方向性と一致します。
試験での留意点
第六次環境基本計画に関する問題では、
- GDP中心の成長観からの転換
- 集中型から分散型への移行
- フローよりストックを重視する視点
が頻出論点となります。
特に、
- 「大規模集中型の維持が重要」
- 「分散型社会への転換を否定する」
といった表現は、
計画の方向性と逆になるため、
不適切肢として狙われやすい点に注意が必要です。
40:環境マネジメントシステム(EMS)
背景にある問い
「環境マネジメントシステム(EMS)とは、どのような仕組みか?」
「ISO14001は、事業者に対して何を求め、何を求めていないのか?」
環境マネジメントシステム(EMS)は、
組織や事業者が環境への影響を把握し、
継続的な改善を図るための管理の枠組みです。
本問は、
EMSおよびISO14001の役割・特徴・限界について、
制度の基本的な考え方を正しく理解しているかを問う問題です。
キーワードで整理する
EMSおよびISO14001に関する基本事項を整理します。
環境マネジメントシステム(EMS)
- 環境方針・目標を設定
- PDCAサイクルによる継続的改善
- 組織が自主的に運用
ISO14000シリーズ
- ISO14001を中心とする規格群
- EMS構築・運用の枠組みを規定
- 手法や考え方を示すが、対策内容は規定しない
ISO14001の特徴
- 管理手法(マネジメント)を重視
- 具体的な環境対策や数値目標は示さない
- 各組織の実情に応じた運用を前提
エコアクション21
- ISO14001を参考にした日本独自制度
- 中小事業者にも導入しやすい仕組み
実際の問われ方
本問は、EMSやISO14001に関する説明の中から、
- 「仕組み」を定めているのか
- 「具体的対策・目標値」まで定めているのか
といった違いを正確に区別できているかを問う形式です。
特に、
- ISO14001は「何を規定しないのか」
が重要な判断ポイントになります。
正解と理由
正解:④
④では、
ISO14001には、事業者の経営面での管理手法についての定めと併せて、
具体的な対策の内容や目標水準が示されている。
としています。
しかし、ISO14001は、
- 環境マネジメントの枠組み・手順
- 継続的改善の仕組み
を規定する規格であり、
- 具体的な環境対策の内容
- 達成すべき数値目標や基準
を示すものではありません。
これらは各組織が自主的に設定するものであり、
④の記述はISO14001の性格を誤っているため、不適切です。
他の選択肢の整理
①【適切】
EMSを「方針・目標を設定し、達成に向けて取り組む体制・手続きの仕組み」と説明しており、正確です。
②【適切】
規制遵守にとどまらず、自主的・積極的な環境保全を進めるツールである点を正しく述べています。
③【適切】
ISO14000シリーズがISO14001を中心とする規格群で構成されている点は正しい。
⑤【適切】
エコアクション21はISO14001を参考に、中小事業者向けに設計された制度であり、適切な記述です。
試験での留意点
EMS・ISO14001に関する問題では、
- 「枠組みを定める規格」
- 「具体策まで定める規格ではない」
という点が定番のひっかけになります。
特に、
- 「具体的な対策内容」
- 「目標水準・数値基準」
をISO14001が直接示しているとする記述は、
不適切肢として狙われやすいため注意が必要です。
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