ChatGPT 令和元年度 総監記述解答例

【問題】

ヒューマンエラーとは人為的過誤や失敗など,目標から逸脱した人の判断や行動を意味し,「ディベンダビリティ(総合信頼性)用語Jを規定したJIS28115:2019では,「人間が実施する又は省略する行為と,意図される又は要求される行為との相違」と定義している。思い込み,勘違い,不注意,慣れ,などに起因して,ヒューマンエラーが発生する可能性は業種や職種を問わず存在する。日々の業務を実施する上でヒューマンエラーを完全に排除することは困難であるが,ヒューマンエラーへの対応を誤ると重大な問題,被害が発生する危険性がある。
そのため,総合技術監理の技術者としても,様々な事業・プロジェクトの推進や組織運営を担う上で,ヒューマンエラーを極力防止する方策の検討は重要な観点である。そこで,ヒューマンエラー発生の原因と対策について考えていくこととする。

ここでは,あなたがこれまでに経験した,あるいはよく知っている事業又はプロジェク卜(以下「事業・プロジェクト等」という。)を1つ取り上げ,その目的や創出している成果物等を踏まえ,ヒューマンエラーに関して総合技術監理の視点から以下の( 1 )~( 2 )の問いに答えよ。

ここでいう総合技術監理の視点とは「業務全体を術轍し,経済性管理,安全管理,人的資源管理,情報管理,社会環境管理に関する総合的な分析,評価に基づいて,最適な企画,計画,実施,対応等を行う。」立場からの視点をいう。

なお,書かれた論文を評価する際,考察における視点の広さ,記述の明確さと論理的なつながり,そして論文全体のまとまりを特に重視する。

設問

(1)本論文においてあなたが取り上げる事業・プロジェクト等の内容と,それに関する過去に発生したヒューマンエラーの事例について,次の①~④に沿って示せ。
① 事業・プロジェクト等の名称及び概要を記せ。
② この事業・プロジェクト等の目的を記せ。
③ この事業・プロジェク卜等が創出している成果物(製品,構造物,サービス,技術,政策等)を記せ。
④ この事業・プロジェクト等を計画段階と実施段階の2つに分け,それぞれについて実践に発生したヒューマンエラーの事例を1つずつ挙げ,それぞれ以下の4つの項目を含む形で記せ。
・ヒューマンエラーの内容とそれによってもたらされた影響
・それが発生した原因
・そのとき取られた対応
・その後の再発防止対策(その後における同種のヒューマンエラーの防止のため,若しくはその発生による事業・プロジェクト等への影響を軽減させるために実施された方策。)
なお,計画段階と実施段階の考え方については,例えばシステムの設計と実装のようにそれぞれ異なる工程を取り上げても良いし,あるいは例えば設計工程における現地調査と設計作業のように,単一の工程内における計画段階と実施段階を取り上げても構わない。

解答

① 事業・プロジェクト等の名称及び概要

本論文で取り扱うプロジェクトの名称は、「AIとドローンによる道路維持管理システム」である。このシステムは、人間の目視点検に頼る従来の道路維持管理に対し、AIとドローンの先端技術を活用した画期的な改革を試みるものである。具体的には、ドローンを用いて定期的に道路の概観を撮影し、その画像データをAIに解析させることで、道路の劣化状況をより迅速かつ正確に把握し、適切なメンテナンス計画を立てることを可能にする。

② この事業・プロジェクト等の目的

本プロジェクトの最大の目的は、道路の維持管理における質と効率の大幅な向上である。具体的には、道路の劣化箇所を早期に検出し、計画的な修復を可能にすることで道路の安全性を維持し、長寿命化を図ることである。また、AIとドローンを活用することで、点検作業に必要な人的リソースを大幅に削減し、その労力を他の重要な業務に振り向けることができる。これらはすべて、ヒューマンエラーに起因する問題、例えば点検の漏れや遅延、評価の不一致などを最小限に抑えることを目指している。

③ この事業・プロジェクト等が創出している成果物

「AIとドローンによる道路維持管理システム」プロジェクトは、以下の成果物を創出している。

道路維持管理用ドローン: 道路の劣化箇所を高解像度カメラで撮影するための特化型ドローン。広範囲の道路を迅速に撮影でき、点検作業の効率化を実現する。

AI画像解析システム: ドローンが撮影した道路の画像を解析し、劣化箇所を検出、評価するAIシステム。道路の劣化具体的な場所、程度、種類を判断し、詳細なメンテナンス計画を作成する。

予防メンテナンス政策: AIとドローンを用いた定期的な道路点検に基づく新たなメンテナンス政策。早期検出・早期修復を重視し、道路の安全性向上と経済的効率を両立させる。

これらの成果物は、道路維持管理の現場での労力と時間を大幅に削減し、より安全で質の高い道路維持を可能にしている。

④ ヒューマンエラーの事例

■ 計画段階のヒューマンエラー事例
内容と影響: AIが分析を行う際の道路の状態の基準が統一されていなかったため、AIの学習データのバリエーションが不足し、結果的にAIが一部の道路の劣化を誤って無視するという事態が発生した。この結果、AIによる評価と人間による評価に齟齬が生じ、不適切な維持管理計画を立てる可能性があった。

原因: AIの学習データを準備する段階で、全ての道路の状態(天候、劣化の種類や程度など)を網羅することが難しかった。また、人間の評価基準とAIの評価基準の一致を確認する工程が不十分であった。

対応: AIの学習データの不足を補うために、道路の状態の基準を統一し、その基準に従って評価された膨大な量の新しいデータをAIに供給した。

再発防止策: AIの学習データの更新を定期的に行うことで、新しい道路の状態を常に学習する体制を整備した。また、AIの評価基準と人間の評価基準が一致しているか定期的に確認する工程を設けた。

■ 実施段階のヒューマンエラー事例
内容と影響: ドローンの飛行中に電力切れを起こし、適切な点検が行えなかった。これにより、一部の道路の点検が遅延し、劣化が進行した場合には修復コストが増大する可能性があった。

原因: 運用者がドローンの電力状態を適切にチェックせず、長時間の飛行を行ったため。

対応: 適切な電力が残っている新しいドローンを準備し、点検作業を再開した。

再発防止策: 運用者への教育を強化し、電力状態のチェックを徹底するようにした。また、ドローンの電力状態を自動的に監視し、低下した場合には運用者に警告するシステムを導入した。

設問

(2)この事業・プロジェクト等においてさらに今後発生する可能性があると思われるヒューマンエラーについて以下の問いに答えよ。
(a)この事業・プロジェクト等(又は今後実施される同種の事業・プロジェクト等でも構わない。)において,さらに今後発生する可能性があり,かつ重大な影響をもたらすと思われるヒューマンエラーを1つ取り上げ,次の①~②に沿って示せ。
① 取り上げたヒューマンエラーの概略と事業・プロジェクト等への影響について記せ。
② ヒューマンエラーの発生する原因として考えられることを記せ。

解答

①取り上げたヒューマンエラーの概略と事業・プロジェクト等への影響について
「AIとドローンを用いた道路維持管理システム」では、AIが道路の画像を解析し、劣化箇所を検出する。しかし、AIが正確な判断を行えず、劣化箇所を見逃したり、軽度の劣化を重度と誤判定した場合、道路の維持管理に重大な影響が出る。特に、重要な劣化箇所を見逃すと、予期せぬ道路の損傷や事故につながる可能性があり、その結果、修復費用が増大したり、信頼性の損失が発生することも考えられる。

②ヒューマンエラーの発生する原因として考えられること
AIの誤判定は、機械学習のデータセットの不足や偏り、AIの学習モデルの誤設定などが原因で発生する可能性がある。特に、道路の劣化は、天候、道路の使用頻度、地域の気候条件など、様々な要素によって影響を受ける。これらの要素全てを網羅するのは困難であり、これらを考慮に入れた学習データの作成が不十分であると、AIの判断ミスが発生する可能性が高まる。また、AIの学習モデルが適切に設定されていない場合、AIは劣化状況の解析に失敗する可能性がある。

設問

(b) (a)で記したヒューマンエラーに対して,今後新たな技術や方策の導入により,その防止や影響の軽減が期待できる状況について,次の①~②に沿って記せ。導入が期待される技術や方策は複数であっても構わない。
① ヒューマンエラーの防止,若しくはその発生による事業・プロジェクト等への影響を軽減させることが期待できる新たな技術や方策を記せ。取り上げる技術や方策はより具体的なものであることが望ましい。
② ①で記述した技術や方策について,例えば技術的,組織的,経済的等の観点から,実現するために乗り越えなければならない課題や障害,若しくは実現させることのデメリットを具体的に記せ。

解答

(a)で記述したヒューマンエラーに対する防止策として、AIの学習データの改善と学習モデルの見直し、および二段階チェックシステムの導入を提案する。

①新たな技術や方策
まず、AIの判断ミスを防ぐためには、その学習データの充実と精度向上が必要である。具体的には、様々な道路状況、気候条件、劣化状況を反映したデータセットを用意し、AIの学習を行うことが考えられる。また、適切な学習モデルを設定することで、AIがより正確に道路の劣化状況を判断できるようにする。

さらに、AIの判断に人間が二次チェックを行うシステムを導入することも一つの方法である。AIが検出した劣化箇所に対して、専門家が再確認を行い、AIの誤判定を修正する。これにより、AIの誤判定によるヒューマンエラーの影響を軽減することが期待できる。

②課題や障害、デメリット
これらの技術や方策を実現するためには、まず、大量の学習データを集め、それを分析し、AIが学習できる形にするための大きなコストと時間が必要である。また、専門家が二次チェックを行うためには、その人員と時間が確保できるかが課題となる。これらの課題を解決するためには、予算と人員の確保、適切なプロジェクトマネージメントが必要である。

また、二次チェックシステムの導入は、人間の目視によるチェックが必要なため、本来AIとドローンを用いて効率化を図る目的に反する可能性がある。しかし、現段階のAI技術では、100%の精度を保証することは難しいため、重大なミスを防ぐためには、このようなデメリットを受け入れることも必要であると考えられる。

Q.要求に応えているか?
今の解答について、
取り上げる技術や方策はより具体的なものであることが望ましい。
デメリットを具体的に記せ
といった要求に対して答えている内容であるか?

具体的な技術や方策として、「AIの学習データの改善と学習モデルの見直し」と「二段階チェックシステムの導入」を取り上げています。これらは、具体的な技術や手法を指しています。

また、デメリットについても以下の点を明確に指摘しています。

学習データの収集と整理、およびAIの学習モデルの設定には大きなコストと時間がかかる。
二段階チェックシステムの導入には専門家の人員と時間が必要で、その確保が課題となる。
二段階チェックシステムは、人間の目視によるチェックが必要なため、本来AIとドローンを用いて効率化を図る目的に反する可能性がある。
これらは、提案した技術や手法の具体的なデメリットを述べています。したがって、ご質問の要求に対して答えていると判断できます。

Q.総合技術監理部門の視点で解答できていると考えられるか?

総合技術監理部門の視点は、企業全体の技術的なリスクを管理し、技術的な問題を解決するための戦略や方針を立てることを主に含んでいます。したがって、ヒューマンエラーの発生原因を分析し、それに対する具体的な対策を提案することは、総合技術監理部門の役割を果たす視点からの回答と言えます。

特に、ヒューマンエラーに対して新たな技術や方策の導入を提案し、それによる防止や影響の軽減を期待する部分や、その技術や方策を実現するために乗り越えなければならない課題や障害、または実現させることのデメリットを具体的に述べる部分は、総合技術監理部門の視点での解答と言えます。

しかしながら、より総合的な視点からの回答をさらに強調するためには、具体的な解答の他にも、より戦略的な視点での提案や、技術とビジネスの両方を考慮した視点からの提案を加えることが有効です。また、さらに技術トレンドや規制、業界動向などの外部環境への対応についても考慮すると、より総合的な視点での回答となるでしょう。

Q.総合技術監理部門の視点を持たないような解答とはどのようなものか?

総合技術監理部門の視点を持たない回答とは、主に以下のような特徴を持つものを指すと考えられます。

技術的な側面だけを考慮し、組織的、経済的、または戦略的な観点を無視した回答。総合技術監理部門は、技術的な問題だけでなく、それがビジネスや組織にどのような影響を及ぼすかも考慮する必要があります。

ヒューマンエラーやその他の問題が存在することを認識せず、問題の深層的な原因や解決策を探求しない回答。総合技術監理部門は、問題を包括的に理解し、その解決に向けた戦略的なアプローチを探求する役割があります。

長期的な視点を欠いた回答。例えば、即時の問題解決に焦点を当てすぎて、将来的な技術的なリスクやチャンス、技術の進歩とその影響について考察しない回答は、総合技術監理部門の視点を持たないと言えるでしょう。

特定の技術やソリューションを推進するだけで、それが組織やプロジェクト全体にどのような影響を及ぼすか、また他の可能な選択肢と比較してどのような利点や欠点があるかを考慮しない回答。

総合的な視点を持つとは、これらの観点を全て考慮に入れ、問題を包括的に理解し、それに対する最適な解決策を見つけ出すことを意味します。

Q.技術的な解決に偏った回答をしてしまうと、総合技術監理部門について理解していないと判断されてしまうということか?

総合技術監理部門の役割は、単に技術的な問題を解決するだけでなく、組織的、経済的、戦略的な観点からも問題を分析し、最適なソリューションを提供することです。そのため、技術的な側面だけを考慮して他の側面を無視した解答は、総合技術監理部門の視点を十分に理解していないと判断される可能性があります。

一方で、技術的な解答は必要で重要ですが、それだけではなく、その技術がビジネスやプロジェクト全体にどのような影響を及ぼすか、また他の選択肢と比較してどのような利点や欠点があるかを考慮することが求められます。

これは総合技術監理部門が、組織全体の視点から最適な技術的方向性を示し、組織全体の目標達成に向けた戦略的な技術的意思決定をサポートする役割を担っているためです。したがって、全体的な視点からの分析と評価が重要となります。

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この記事を書いた人

技術士 建設部門

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