技術士・改正前口頭試験 体験記

平成31年度(2019年度)に、技術士試験の試験方法が改正されました。口頭試験については、下記の通りの評価項目と配点になりました。

口頭試験(総合技術監理部門を除く技術部門)
改正後(2019年度以降)

試問事項配点
Ⅰ.技術士としての実務能力
①コミュニケーション・リーダーシップ30点
②評価、マネジメント30点
Ⅱ.技術士としての適格性
③技術者倫理20点
④継続研さん20点

以下の表は、2018年度以前の口頭試験の評価項目と配点です。技術者倫理以外は、異なる評価項目となっています。

口頭試験(総合技術監理部門を除く技術部門)
改正前(2018年度以前)

試問事項配点
Ⅰ.受験者の技術的体験を中心とする経歴の内容及び応用能力
①経歴及び応用能力60点
Ⅱ.技術士としての適格性及び一般的知識
②技術者倫理20点
③技術士制度の認識その他20点

口頭試験準備のためには、改正前も改正後もやることはそれほど変わらないでしょう。筆記試験の再現、経歴・技術的体験の説明準備、それらの資料を基に、試問事項に応じた回答案の作成といった内容になると思います。変わる点は、試問事項に合わせて、最初の説明内容とQ&Aを補強するということでしょうか。

令和4年度の筆記試験合格発表は、11月上旬に予定されています。口頭試験は令和4年12月~令和5年1月までに行われる予定で、口頭試験が早くに行われる人では、1か月ほどしか時間がありません。

私は、2011年度と2017年度の過去2回の口頭試験を受けました。いずれも、準備時間は少なかったと記憶しています。準備で実施した内容は台本作成とQ&A作成の通りです。

①経歴・技術的体験の台本作り

着席した後に、願書に記載した経歴と技術体験論文について、簡単な説明を求められます。時間にして、3分程度でしょうか?口頭試験は、20分から30分程度です。その中で、最初の3分だけは、試験官とのやり取りなどに影響を受けずに、受験生主導で進めることができる唯一の時間です。私の場合、1分間に話せる文字数は300字程度でした。ですので、3分間程度となると約1000字になります。word等でA4-1枚分の文章量になります。内容については、実際に提出した願書を基に、口語体で書いた原稿を作成します。

文章なら出てこない「ということですが」「というようなことも考えられましたが」も含めて用意しました。録音等で自分の話し言葉を確認。例えば、「統計を」が「とけを」となっているようであれば、話し方が速すぎるかもしれないなど、フィードバックすると良いでしょう。 論文に良かれと思って書いた余計な言葉をきっかけに崩れる可能性があるので注意が必要です。力学的なことがメインであるのに土壌汚染などの言葉が入るなどしている場合は、多少は調べておく必要があるかもしれません。(私は、模擬試験でこの失敗をしてしまいました。)

試問事項では、①コミュニケーション・リーダーシップ、②評価、マネジメントについて配点されています。これらを考慮した説明文になっていることで、試験官のスムーズな採点を期待することができます。これらに関する情報がない場合は、助け舟として質問をしてくださいますが、ここで崩れるとその後の質問が厳しきなっていくかもしれません。
コミュニケーション、リーダーシップ、評価、マネジメントについては、「令和4年度 第二次試験受験申込み案内」のP10に記載があります。以下、抜粋です。P10記載の順番で記載しています。

技術士に求められる資質能力(コンピテンシー)の抜粋

マネジメント
・業務の計画・実行・検証・是正(変更)等の過程において,品質,コスト,納期及び生産性とリスク対応に関する要求事項,又は成果物(製品,システム,施設,プロジェクト,サービス等)に係る要求事項の特性(必要性,機能性,技術的実現性,安全性,経済性等)を満たすことを目的として,人員・設備・金銭・情報等の資源を配分すること。
評価
・業務遂行上の各段階における結果,最終的に得られる成果やその波及効果を評価し,次段階や別の業務の改善に資すること。
コミュニケーション
・業務履行上,口頭や文書等の方法を通じて,雇用者,上司や同僚,クライアントやユーザー等多様な関係者との間で,明確かつ効果的な意思疎通を行うこと。
・海外における業務に携わる際は,一定の語学力による業務上必要な意思疎通に加え,現地の社会的文化的多様性を理解し関係者との間で可能な限り協調すること。
リーダーシップ
・業務遂行にあたり,明確なデザインと現場感覚を持ち,多様な関係者の利害等を調整し取りまとめることに努めること。
・海外における業務に携わる際は,多様な価値観や能力を有する現地関係者とともに,プロジェクト等の事業や業務の遂行に努めること。


②「経歴・体験論文補強」と「技術士としての適格性」の情報収集(Q&A作成)

「経歴・体験論文補強」等
受験者として伝えたい内容を限られた時間で優先順位をつけて台本作りをした後に、①コミュニケーション・リーダーシップ、②評価、マネジメントを試験官が確認するために、質問が行われます。
厳しい質問になると、「この経験論文のどこが技術士にふさわしい業務と言えるんですか?」といったものもあります。私が受けた質問ですが、この質問が来ることを想定し、回答を用意していました。参考書を参照し、その中にある考え方を参考にし、回答事例を試行錯誤して作り上げていきました。経験論文には字数制限があり、すべての制約条件が書ききれるものではありません。実際にあったもので書ききれなかった情報等を加え、想定回答が先の諮問事項を満足しているか否かを考えながら、Q&Aを集積していきました。
厳しい質問と言えば、特に20代の若い方には、本当にあなたが実施した内容なのか?という視点で、具体的な数値やその対処法などを追及されるようなケースもあると聞きました。定性的なことに加え、根拠を持って定量的に説明できるようにしておきましょう。
そのほか、受験の動機や資格を取って役に立つのか?といった質問を受けました。よくある質問ですが、技術士にふさわしいと思われる自分なりの回答を用意する必要があります。奇をてらう必要はありませんが、技術士となるのにふさわしい回答であるかという視点は抜けないようにしなければなりません。考えすぎて回りくどい回答も、採点者の確認時間を奪うことになりますので、簡潔な回答が必要です。

「技術士としての適格性」
③技術者倫理と④継続研さんが試問事項となっています。2011年度受験では、3義務・2責務を答える程度で良かったのですが、2017年度の受験では、「顧客にコンプライアンスに違反するような無理な要求されたら、どうするか?」という質問がありました。実際に顧客担当からそのような要求が稀にありますが、それはリスクに関する知識がないことがほとんどで、その場合は説明して納得していただきます。理解されない場合は、さらに上級担当者に同じアプローチをします。というところで私が経験した範囲では留まっています。その先に判断がゆだねられる場合は、こちらも組織として対応していくことになると思います。と、回答しました。要求とは、時間がないこと、あるいは、経済性追求による手順の省略などと説明しました。回答は、これ以外にもあると思います。質問に対して、制約条件を変えながら複数の回答を用意していきます。

話はそれます。
鹿児島の薩摩藩には、郷中教育と呼ばれる薩摩藩独特の青少年教育システムがありました。その中には、「詮議」と呼ばれるものがあり、トロッコ問題のような問いを即答するなど問答を繰り返します。詳しくは、ネット等で検索してみてください。Q&A作成は、この詮議のようなものかもしれません。
「ほかに方法がありませんか?」という質問があった場合に、単純にほかの方法があればそれを回答しますが、どうしてもなければ、「施工機械が搬入できない可能性がある場合には..」など、条件が変わるなどの状況を想定し、回答することも考えられます。

③技術者倫理と④継続研さんについては、「令和4年度 第二次試験受験申込み案内」のP10に記載があります。以下、抜粋です。P10記載の順番で記載しています。

技術士に求められる資質能力(コンピテンシー)の抜粋

技術者倫理
・業務遂行にあたり,公衆の安全,健康及び福利を最優先に考慮したうえで,社会,文化及び環境に対する影響を予見し,地球環境の保全等,次世代にわたる社会の持続性の確保に努め,技術士としての使命,社会的地位及び職責を自覚し,倫理的に行動すること。
・業務履行上,関係法令等の制度が求めている事項を遵守すること。
・業務履行上行う決定に際して,自らの業務及び責任の範囲を明確にし,これらの責任を負うこと。
継続研さん
・業務履行上必要な知見を深め,技術を修得し資質向上を図るように,十分な継続研さん(CPD)を行うこと

日本技術士会は、技術士倫理要綱を定めています。日本技術士会のHPにて確認しておきましょう。
技術士倫理綱領|公益社団法人 日本技術士会 (engineer.or.jp)

10項目が記載されています。それらを把握した上で、受験者自身の考え、行動が問われます。技術者倫理とは、技術士として行動する際、規範となるものです。10項目全てに納得して、従う必要があります。(と、私は解釈しています。好き嫌いによる項目の選択はできない。)

継続研さんについては、明確にCPDであると書かれています。日本技術士会のHPにて確認しておきましょう。
技術士CPD|公益社団法人 日本技術士会 (engineer.or.jp)

CPDはどんなことをしたら得られるのか?あなたはどんな取り組みをしているのか?今何ポイントを取得しているのか?登録しているのか?などに、答えられるようにしておきましょう。技術士になる以前に技術士補となる資格を得ていますので、この辺は抑えておく必要があります。

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技術士 建設部門

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