令和4年度_背景から学ぶ「総監択一問題キーワードガイド」

このガイドは、ゼロから知識を積み上げるためのものではありません
むしろ、すでにあなたが実務で積み重ねてきた経験――
現場での判断や対応、プロジェクトの中で「こうすべきだ」と感じてきたこと――
それらを言葉として再確認し、体系として整理するためのものです。

技術士(総監)の択一試験には、多くのキーワードが並びます。
ですが、実際には「知らなかったこと」よりも、「言葉としては使ってこなかったけれど、やってきたこと」が大半ではないでしょうか。

たとえば…

  • 「利益は出ているのに、今使えるお金がない」
  • 「人は足りているはずなのに、なぜか回らない」
  • 「リスクは共有したはずなのに、意識がばらばらになる」

そんな現場の違和感に、名前を与えるのがキーワードであり、
それを「試験の問題でどう聞いてくるか」を合わせて確認するのがこのガイドです。

構成はすべて共通です:

  1. 背景にある問い(実務でよくある違和感からスタート)
  2. キーワードで整理する(「あの感覚」は、こういう言葉で説明される)
  3. 実際の問われ方(試験でどう聞かれるか)
  4. 試験での留意点(間違えやすいパターン・迷いやすいペア)

つまりこのシリーズは、
知識を“覚える”というより、「自分の中にあることを、言語と構造で納得する」ための読み物です。

現場の実感とキーワードをつなぐ視点で、これから一つずつ見ていきましょう。

目次

経済性管理

Ⅰ-1-1:キャッシュ・フローの3区分

背景にある問い

経営会議の資料を作成する際、CFOから「今期は財務キャッシュフローが増えた理由を説明できるようにしておいてください」と指示された。
しかし、営業活動と投資活動の違いは何となく理解していても、「財務活動」とは具体的に何を指すのか、ピンとこない。
株の発行?借金の返済?それは投資ではないのか?
日常業務で「お金の流れ」を扱っていても、それがどの区分に当たるのか整理しきれていない場面は多い。
こうした混乱を抱えたままでは、資料の数値に対して的確な説明ができない。
そもそもキャッシュ・フローの3区分は、どのように分けて考えるべきなのか。

キーワードで整理する

ここで押さえるべきキーワードは キャッシュ・フロー計算書の三区分
企業の資金の流れを捉えるこの計算書では、キャッシュ・フローを以下の三つに分類している。

  • 営業活動によるキャッシュ・フロー
     企業の本業による収入・支出。売上代金の入金、仕入代金や人件費の支払いなど。
  • 投資活動によるキャッシュ・フロー
     資産の取得・処分に関する収支。設備投資、株式や有価証券の売買など。
  • 財務活動によるキャッシュ・フロー
     資金調達や返済に関する収支。借入、社債・株式の発行、配当金の支払いなど。

例えば、「株式の発行による収入」は資金を調達する行為であり、営業や投資ではなく財務活動に該当する。

実際の問われ方

本問題では、「次のうち財務活動に含まれる収入はどれか」という問いで出題されている。
選択肢の中には設備の売却や貸付金の回収なども含まれるが、財務活動に該当するのは以下の通り明確に区別できる。

活動区分内容の例具体的な項目例
営業活動本業による収支売掛金回収、仕入代金支払
投資活動資産の取得・処分設備の購入・売却、有価証券売買
財務活動資金の調達・返済借入金・株式発行・配当支払

本問の正解は「株式の発行による収入」であり、これは明確に財務活動に位置づけられる。

試験での留意点

「投資=株」と連想しやすいため、「株式の発行」はつい投資活動と誤認されやすい。
しかし、株式の購入は投資活動(お金を使う側)であり、発行は企業の資金調達(お金を得る側)であり財務活動に分類される。
また、「配当金」は**受け取る側(他社の株主)**なら営業または投資活動、「支払う側(自社の株主へ)」なら財務活動というように、立場によって区分が変わる点も混同しやすい。

Ⅰ-1-2:VE(Value Engineering)の基本概念

背景にある問い

ある日、上司から「この設計、VE的な観点で見直してくれる?」と頼まれたが、VE(バリューエンジニアリング)とコストダウンの違いがあいまいで戸惑ってしまった。
安くする=VEなのか?高機能化もVEに含まれるのか?

また、VEの手法を取り入れた会議で「この機能って“○○を○○する”で表現できる?」と問われたが、どう整理すればよいかわからなかった。
現場の改善や業務効率化にもつながりそうだが、具体的な進め方やステップが見えず、実務との接続点がつかみにくい。
VEとは一体どのような考え方なのか。単なる「コスト削減の手法」として片づけてよいのだろうか。

キーワードで整理する

このような疑問に対して、導入すべきキーワードはVE(Value Engineering)である。
VEとは、「製品やサービスの機能を分析し、コストを抑えながら価値を最大化するための体系的手法」であり、単なるコストカットではなく価値=機能÷コスト
という視点に基づいている。

  • 機能とは、「○○を○○する」のように、名詞と動詞の2語で表される目的・動作のこと。
  • VEでは機能を「基本機能(本質的な目的)」と「二次機能(付加価値や満足度を高める目的)」に分類し、見直しの対象を明確化する。
  • また、VE実施の基本ステップには「機能定義 → 機能評価 → 代替案作成」があり、単にコスト削減案を出すのではなく、価値向上の観点で改善を探るプロセスが重視される。

実際の問われ方

本問題では「VEに関する記述のうち、最も適切なものはどれか」という形式で出題されている。ポイントは以下の通り。

選択肢で問われた観点該当知識の要点
VEの定義価値=機能÷コストというモデルに基づく(単なる足し算・引き算ではない)
機能表現の方法「○○を○○する」型の動詞表現が基本
機能の分類使用者の目的と美しさ・満足感に基づき、基本機能と二次機能に区分
手段の整理視点自発的な手段ではなく、機能表現で抽象化・統合的に扱う
実施手順基本ステップは「機能定義→機能評価→代替案作成」

このようにVEでは、機能を言語化し、価値の構造として再設計する手法であるという理解が問われている。

試験での留意点

VE=コスト削減と短絡的に捉えがちだが、本質は「価値の最大化」である点に注意が必要である。
また、VEにおける「機能」は動作の目的であり、「製品の形状」「材質」など物理的特徴ではない。
選択肢でありがちなのは、「目的ではなく手段」を“機能”として誤認するケース。たとえば「ネジを使う」は手段であって、「部材を締結する」が機能である。
VEを使う際は、「この手段がなくなっても同じ機能を満たせる別の方法はあるか?」という問いが鍵となる。

Ⅰ-1-3:移動平均法と単純指数平滑法

背景にある問い

需要予測の精度が悪く、発注ミスや在庫過剰が続いている。
現場では「過去の傾向から予測して動いてくれ」と言われるが、実績値にばらつきがあるため、単なる平均では読み誤るケースが多い。
特に、突発的な変動を含んだ直近の実績に引っ張られると、かえって判断を誤ることがある。
そこで「移動平均を取っている」「指数平滑で対応している」といった方法論が話題に上るが、実際にはその意味や使い分け方が十分に共有されていない。
時間の経過とともに重視すべきデータの考え方が異なることに気づきつつも、どちらの手法を採るべきか迷いが生じる。

キーワードで整理する

こうした予測業務において基本となるのが 移動平均法単純指数平滑法(単純指数加重移動平均法) である。

  • 移動平均法 は、一定期間(例えば3期、4期など)の過去データの単純平均をとって、次期の値を予測する方法である。全ての期間に等しい重みを与えるため、短期変動をならす効果がある。一方で、直近の変化への反応が鈍くなる傾向がある。
  • 単純指数平滑法 は、直近の実績に大きな重みを置き、過去の予測値も加味して次期を予測する手法である。重み係数α(0<α<1)を用い、直近ほど高く、過去ほど低いウェイトが与えられる。変動に敏感であり、需要がトレンドを持つ場合に有効とされる。
手法特徴数式(代表的な形)
移動平均法一定期間の平均値を用いるYₜ₊₁=(Yₜ+Yₜ₋₁+…+Yₜ₋ₖ₊₁)/k
単純指数平滑法直近の実績に重みを置くFₜ₊₁=αYₜ+(1−α)Fₜ

実際の問われ方

本問では、与えられた4期分の実績データをもとに、「第5期の予測値」「第2期の予測誤差」などを移動平均法および指数平滑法で算出するという形式で出題されている。

  • 3次および4次の移動平均の違い(平均対象期間による予測値の違い)
  • 指数平滑法における予測値(初期値の設定、α値を用いた繰り返し計算)
  • 実績値との大小比較や、近似値の大小関係の把握が問われている

選択肢では、310より大きい/小さい、などの比較問題形式で提示され、数値計算そのものよりも、手法の特性と結果の傾向を理解しているかが問われている。

試験での留意点

移動平均法と指数平滑法の重みのかかり方を混同しやすい点に注意が必要である。

  • 移動平均法は「期間内のデータを等重み」で扱うが、指数平滑法は「時系列的に過去へ行くほど重みが小さくなる」ため、直近の変化を重視した予測が得られる。
  • α値が小さいと過去の値を重視しすぎて変化に鈍感になり、α値が大きいと直近の変動に過敏になる。

また、指数平滑法の初期値は与えられる場合と、自分で設定する場合があり、与えられた初期値からの計算の流れ(繰り返し)を追えるかどうかが得点の分かれ目となる。

Ⅰ-1-4:保全活動の分類(予知・予防・改良保全)

背景にある問い

設備の稼働率が上がらない原因を調べる中で、
現場からは「もっと壊れる前に手を打てないか」
「一度直しても、また同じところが壊れる」といった声が上がる。
予防保全をしているはずだが、結果的に後手に回るケースが多く、定期点検の限界を感じる。
さらに、故障原因が設計段階にあると気づいたものの、設計変更の手続きが進まないまま同様の故障が繰り返される。
このような状況では、日々の点検や修理だけでなく、そもそもの保全戦略の考え方自体を整理し直す必要があるのではないか。
設備保全とは、単なる修理対応ではなく、どう未然に防ぎ、どう改善し、どう高めていくかの視点が求められる。

キーワードで整理する

このような保全業務の体系的理解には、**保全活動の分類(予防保全・予知保全・改良保全)**という考え方が重要である。

  • 予防保全
     過去の故障履歴や設計情報に基づいて、あらかじめ計画的に点検・整備を行い、故障の発生を未然に防ぐ保全。
     例:半年ごとの定期メンテナンス、使用時間に基づく部品交換など。
  • 予知保全
     センサ・モニタリング・診断技術などを用いて設備の状態を常時監視し、故障が起こる前兆を捉えて適切なタイミングで対応する保全。
     例:振動診断、温度異常のリアルタイム検知など。
  • 改良保全
     繰り返し発生する不具合や設計上の問題に対して、設備そのものの性能や構造を見直し、根本的な改善を加える保全。
     例:部品の材質変更、冷却構造の見直し、設計思想の修正など。
保全の分類主な対象特徴
予防保全時間・計画定期的な保守点検、事前対応
予知保全状態・兆候故障の予兆に基づく判断
改良保全設計・構造根本原因に対する恒久的対策

実際の問われ方

本問では、3つの保全活動(ア)(イ)(ウ)の内容を読み取り、それぞれがどの保全分類に該当するかを選択肢から組み合わせる形式で出題されている。

  • (ア)は、設備の診断技術を使って最適なタイミングで対策を講じるという点から予知保全
  • (イ)は、設計段階からの不具合予測と対策の織り込みであり、予防保全
  • (ウ)は、設備構造そのものの改善を目的とした活動であり、改良保全

これらの分類と対応を正確にマッチさせることで、選択肢④が導かれる。

試験での留意点

「予知保全」と「予防保全」は言葉が似ているため、混同しやすいが、**時間軸の違い(定期 vs 状態依存)**を意識することで区別しやすくなる。
また、「改良保全」は他の2つと違い、設計・構造そのものを見直す点でより戦略的・長期的な視点が求められる。

言い換えれば、

  • 予防保全:スケジュール管理型
  • 予知保全:状態監視型
  • 改良保全:根本改善型

という切り口で整理しておくと、選択肢の読解がスムーズになる。

Ⅰ-1-5:サービスの特性(無形性・同時性・不可逆性など)

背景にある問い

ある自治体の施設運営を委託されたプロジェクトで、住民から「職員によって対応の質に差がある」との苦情が寄せられた。
同じ業務マニュアルを使っているはずなのに、なぜ顧客満足度に差が出るのか。
その原因を探るうちに、サービスというものは製品と違って一律な品質管理が難しいことに気づかされた。
製品であれば検品できるが、サービスは「やり直しが利かない」「相手によって変化する」といった性質があるように思える。
しかし、こうした性質を感覚だけで捉えるのではなく、あらかじめ整理して理解しておくことで、品質の設計や改善の糸口が見えてくるのではないか。

キーワードで整理する

このような課題意識に対応するために押さえておきたいのが、サービスの特性である。サービスは、工業製品とは異なる以下のような性質を持つ。

  • 無形性(Intangibility)
     サービスは形がないため、目に見えず、触れることもできない。
     例:医療、教育、コンサルティングなど
  • 同時性(Inseparability)
     生産と消費が同時に発生する。提供者と顧客が同じ時間・空間を共有する場面が多い。
     例:美容院、対面接客、交通サービス
  • 変動性(Heterogeneity)
     同じサービスでも、提供者や受け手、状況によって品質が異なりやすい。
     例:ホテルの接客が日によって異なるなど
  • 消滅性・不可逆性(Perishability)
     一度提供されたサービスは在庫として蓄積できず、やり直しが利かない。
     例:空席のまま発車した列車の座席
特性工業製品との違い代表例
無形性検品や評価が難しい医療・教育・情報提供
同時性生産と消費の分離ができない飲食・交通・対面業務
変動性一律品質が難しい接客・介護・コールセンター
不可逆性返品・在庫が不可ライブ配信・イベント

実際の問われ方

本問では、「サービスの特性に関する記述のうち、最も不適切なものはどれか」という形式で出題されている。

選択肢の中には、

  • 在庫として保管できない(無形性・不可逆性)
  • 同時に生産と消費が起きる(同時性)
  • 提供相手との共同作用が前提(同時性・変動性)
    など、サービスの特性を反映した記述が含まれている。

その中で、「同一のサービスを安定して繰り返し提供することが容易である」という記述(選択肢③)は、変動性という特性と矛盾するため、不適切と判断される。

試験での留意点

サービスの特性に関する問題では、「製品と同じように考えてはいけない」という視点のズレを突く設問が多く出題される。
特に以下のような混同に注意が必要である。

  • 「品質保証」は製品に適した概念で、サービスでは「顧客満足」が評価軸になる
  • 「同じマニュアルであれば同じ品質になる」はサービスには当てはまらない(変動性)

選択肢に出てきたら要注意なのは「在庫」「返品」「検査」「再生産」など、製品ベースの思考に依拠した言葉である。


このテーマは品質管理・人的資源管理・顧客満足・サービス設計の各分野にまたがる重要概念でもあります。関連付けた学習が有効です。

Ⅰ-1-6:制約条件の理論(TOC:Theory of Constraints)

背景にある問い

生産ラインの効率化に取り組むプロジェクトで、「リードタイムが短縮できない」「どこを改善しても全体の出荷量が増えない」という問題が繰り返し発生している。
現場からは「みんな頑張ってるのに、なぜ生産数が伸びないのか」と不満の声も上がる。
改善活動が各工程で個別最適を追求している一方で、実際にはある工程がボトルネックとなって全体の流れを制約している可能性があると指摘された。
こうした状況で重要になるのが、「全体最適」の視点で生産フローを見直す考え方である。

キーワードで整理する

このような課題に対して導入すべきキーワードが TOC(Theory of Constraints:制約条件の理論) である。

TOCとは、「システム全体のパフォーマンスは最も制約となっている部分(ボトルネック)によって決まる」という考えに基づき、生産・物流・プロジェクト管理の最適化を図る理論である。

TOCでは、以下の5ステップでボトルネックの特定と改善を行う。

  1. 制約条件(ボトルネック)の特定
  2. 制約の活用(最大限に活用する)
  3. 他のすべてを制約に従わせる(ボトルネックに合わせて全体を調整)
  4. 制約の能力を引き上げる(必要なら投資や改善)
  5. 惰性に注意して次の制約へ(新たなボトルネックを探す)
用語内容
ボトルネックシステムのスループットを制限している最も弱い工程や資源
スループット単位時間あたりの完成品出荷量(最終的に利益につながる価値)
バッファ不確実性を吸収するための余裕。TOCでは戦略的に配置される

TOCでは、「全体のスループット=ボトルネックの能力」であり、非ボトルネック工程の効率をいくら高めても、ボトルネックを解消しない限り全体改善にはつながらない。

実際の問われ方

本問では、「TOCの活用に関する記述のうち、最も不適切なものはどれか」という形式で出題されている。選択肢では、以下のようなTOCの基本概念が問われている。

  • ボトルネックの存在が変わり得る(選択肢①)
  • スケジュール調整はボトルネック基準(②は誤り)
  • 生産速度はボトルネックに従う(③)
  • バッファ管理によるスループットの安定化(④)
  • 非ボトルネック改善だけでは意味がない(⑤)

②の「ボトルネックのスケジュールをサプライチェーンの最終工程に通知する」という記述は、TOCの本質を誤解しており、「ボトルネックは上流から順に解消する対象」という基本に反している。

試験での留意点

TOCに関する出題では、以下の混同に注意する必要がある。

  • 「改善対象=効率の悪い工程」と誤認しがちだが、全体にとって制約になっている工程が本当の改善対象
  • 「全工程を平等に改善すればよい」という発想では、TOCの考え方に反する
  • 「ボトルネックを解消すれば、新たな制約が生まれる」という動的な理解が求められる

また、TOCは「ボトルネックを見極め、全体最適に向けて集中改善する」ことが核であり、最終工程からの逆算的通知ではない点を誤解しないようにする必要がある。


TOCは、生産管理だけでなく、プロジェクトマネジメントや物流設計にも応用可能な思考技法です。全体最適の視点をもつことが、実務への応用でも重要になります。

Ⅰ-1-7:システム開発プロセスの代表的モデル

背景にある問い

新システム導入プロジェクトの初期段階で、関係者間の認識に齟齬が生じた。
「まず全部設計してから進めるべき」
「いや、試作してフィードバックを得ながら進めるべき」といった意見が対立している。
実際、関係者が頭に描いている「開発プロセスのイメージ」が異なっていることが根本原因であった。
開発プロジェクトが失敗する要因のひとつは、このように手法の前提を共有せずにスタートすることである。
各モデルの違いと特徴を明確に理解しておくことが、実務上も試験上も極めて重要であるといえる。

キーワードで整理する

このような文脈において重要なのが、代表的な開発プロセスモデルの種類と特徴である。以下に主要なモデルを整理する。

  • ウォーターフォール型
     上流から下流へと段階的に開発工程を進めるモデル。各工程を一度完了してから次に進むため、手戻りが発生しにくく、大規模・安定志向のプロジェクトに適している。
  • スパイラル型
     試作と評価を繰り返しながら段階的に進めるモデル。リスク分析や顧客のフィードバックを重視し、不確実性の高いシステム開発に適する。
  • V字型
     ウォーターフォール型を基本としつつ、各開発工程に対応するテスト工程を並行的に設計するモデル。信頼性が求められる組込み系で多用される。
  • アジャイル型
     短期間の開発サイクル(イテレーション)を繰り返しながら、小単位で機能を実装・テスト・リリースしていく。顧客との対話・柔軟性・迅速性が求められる案件に適する。
  • イテレーティブ型
     仕様や要件が明確でない初期段階から試作・評価を繰り返しながら、段階的にシステム全体を構築していく。アジャイルとの違いは、必ずしも短期スプリントやユーザー参加を前提としない点。
モデル特徴適用例
ウォーターフォール型上流工程完了後に下流工程へ進む直線型大規模・公共系プロジェクトなど
スパイラル型試作と見直しの繰り返しでリスク低減不確実性の高い開発
V字型開発工程とテスト工程を対応させる組込みシステムなど
アジャイル型ユーザー参加・反復・柔軟性重視Webサービスや小規模開発
イテレーティブ型成果の検証と改善を繰り返す発展型概念設計が流動的な開発

実際の問われ方

本問では、「開発プロセスの種類と説明の正誤対応」が問われており、それぞれのモデルがどういった思想に基づいているかが問われる。

  • 選択肢①:ウォーターフォール型の説明として適切
  • 選択肢②:スパイラル型の説明のようでいて実際にはウォーターフォールの誤用
  • 選択肢③:イテレーティブ型に近い内容で、V字型の説明としては不適切
  • 選択肢④:アジャイル型の記述として正確
  • 選択肢⑤:イテレーティブ型の記述として妥当

不適切な選択肢③が正解となっている。

試験での留意点

モデル名が曖昧なまま説明を読んでしまうと、「柔軟に対応」「段階的に繰り返す」といった表現の違いが見落とされやすい。
特に注意すべき混同ポイントは以下の通り。

  • スパイラル型とイテレーティブ型の混同(どちらも反復するが、スパイラルはリスク分析重視)
  • アジャイルとイテレーティブの違い(ユーザー参加・短期間スプリントの有無)
  • V字型とウォーターフォール型の混同(前者はテスト設計との対応を特徴とする)

開発プロセスの知識は、品質管理、リスク管理、情報管理など他の管理分野と横断的に関連するテーマです。状況に応じた使い分けの理解が、実務と試験の双方で求められます。

Ⅰ-1-8:PERTとクリティカルパス

背景にある問い

納期遵守が厳格に求められるプロジェクトで、担当者が「各作業の進捗を確認してます」と言っていたが、よく聞くとすべての工程を同じ重みで扱っていた。
たしかに全体の進捗は見えているようで、実はボトルネックとなる作業が見過ごされている状況だった。
結果的に、終盤で「間に合わない」と判明し、調整が困難に。
進捗管理は、「全体を見る」だけでなく、「何が全体のスケジュールを決定しているか=制約となっているか」を理解しておく必要がある。
それを可視化するのが、PERT図とクリティカルパスである。

キーワードで整理する

こうしたスケジュール管理の中核にあるのが PERT(Program Evaluation and Review Technique) および クリティカルパス(Critical Path) である。

  • PERT は、複数の作業工程をノード(結合点)と矢印(作業)で表し、作業の順序関係と所要時間を可視化する技法である。
     各作業の最早開始時刻(その作業が最も早く始められる時間)と最遅開始時刻(遅れても全体遅延にならないギリギリの開始時間)を求めることで、作業余裕時間(フロート)も把握できる。
  • クリティカルパス は、プロジェクトの完了時刻に最も影響を及ぼす経路であり、そこに属する作業は1分の遅延も全体スケジュールに影響を与える。よって、進捗管理の重点対象となる。
用語内容例(図中)
最早開始時刻(ES)前段の作業が終わった直後に開始できる最も早い時刻10時(図示)
所要時間(Duration)作業に必要な時間4時間
最遅開始時刻(LS)遅れて開始しても全体納期に影響を与えない限界時刻ES + フロート
フロート(Float)LS – ES、余裕時間本問では0なのでクリティカル

PERTでは、最早開始時刻+作業時間=最早完了時刻
最遅完了時刻−作業時間=最遅開始時刻

実際の問われ方

本問では、1作業(E)のみを抜き出したPERT図を与えた上で、次の事項の正誤を問う形式となっている。

  • 作業Eの最早開始時刻(与えられている:10時)
  • 作業時間(3時間)+全体所要時間(4時間)から逆算した最遅開始時刻(14−4=10時)
  • 作業時間が変動した場合の全体所要時間への影響(クリティカルであれば全体がずれる)
  • フロートがゼロであることを活かしたクリティカルパスの認定

これらから、「PERTの基本構造」「各時間の意味」「スケジュール遅延の連鎖リスク」を問う典型問題となっている。

試験での留意点

以下のような誤解に注意が必要である。

  • 最遅開始時刻を「作業時間+最早開始時刻」と逆に解釈してしまう
  • フロートがある作業を「重要でない」と誤って軽視する(本当は調整余地があるという意味)
  • クリティカルパスの概念を「一番時間がかかる工程」と思い込む(あくまで全体を制約する経路)

また、「作業時間が延びてもクリティカルでなければ全体に影響しない」ことと、「クリティカルパス上の作業は1分でも遅れると全体が遅れる」ことの違いは、選択肢でよく問われる点である。


PERTやクリティカルパスは、単なる工程管理手法にとどまらず、プロジェクトマネジメント・リスク管理・資源配分の全体設計に直結する技術である。構造的な把握が鍵となる。

人的資源管理

I-1-9:就業規則と労働条件の決定・変更

背景にある問い

業務効率化のため、フレックスタイム制や変形労働時間制の導入を検討している。
しかし、現場からは「最近いきなり勤務時間が変わった」「説明なしに就業ルールが変わった」といった不満が出ている。
中小企業の管理職として、柔軟な働き方を推進する一方で、法令との整合性や従業員との信頼関係をどう保つか。
とくに「就業規則の変更」「労働条件の変更」における適正なプロセスは見落とされがちである。

このような状況に直面すると、「そもそも労働条件の変更って、どこまで自由にできるのか?」という根本的な問いが浮かび上がる。

キーワードで整理する

就業規則
事業場に常時10人以上の労働者がいる場合、使用者は就業規則の作成・届出義務を負う。就業規則は、労働時間、賃金、休暇など労働条件の基本ルールを定めるもので、会社と労働者の“契約の枠組み”となる。
就業規則の変更は、労働者の同意なしに一方的に行える場合もあるが、それはあくまで「合理的な変更」である場合に限られる。特に労働時間などの重要な労働条件を変更する場合は、労使協定や就業規則の届出・周知が必要となる。

変形労働時間制
業務の繁閑に応じて、一定期間内で労働時間を平均化する制度。導入には就業規則等での定めと、労使協定が必要であり、会社が任意に時間配分を変えることはできない。

労働条件の不利益変更
労働契約法第10条に基づき、就業規則による変更であっても、「合理性」が求められる。変更による労働者への不利益が大きい場合は、個別同意がない限り、効力が及ばない可能性がある。

実際の問われ方

この問題では、以下の選択肢③が誤りとされている:

対象期間における各日の始終業時刻や労働時間について、労働者が自由に決定できる。

これは「労働時間の決定は、就業規則や労使協定により定めるべき事項」であるという基本原則に反するため、不適切であると判断される。

【主な出題ポイント】

  • 「就業規則の作成・届出義務」は常時10人以上
  • 「年次有給休暇」は労働者の請求によって取得する権利で、使用者の裁量で日数を定められない
  • 「変形労働時間制の時間設定」は使用者または協定に基づいて行うものであり、労働者の自由裁量ではない
  • 「労働時間の適切な管理」「休憩の確保」「掲示義務」なども問われやすい

試験での留意点

  • 「自由に決定できる」という表現があれば要注意。労働法は使用者・労働者間の契約原則に一定の制限があるため、あまりに自由度が高い表現は疑ってかかるべき。
  • 「就業規則で定めること」と「労働者の個別同意による変更」は混同しやすい。制度導入の根拠がどこにあるかを意識するとよい。
  • 「就業規則=変更自由」と誤解しやすいが、法的には不利益変更の合理性が必要。
  • 選択肢の中で「法律上の要件」と「実務的な常識」を見極めることが正答の鍵になる。

I-1-10:短時間・有期雇用労働者の待遇改善と均等待遇

背景にある問い

「パートさんって、賞与は出ないのが当たり前ですか?」
ある企業の人事担当者がそう口にしたとき、同席していた部門長はこう答えました。
「正社員と違って、短期契約だし時短だし、そこまで手厚くする必要はないだろう」──。

一方、同じ部署で同様の業務をしている短時間勤務の従業員は、不満と不安を募らせていました。
「私たちの仕事は責任も重いし、成果も上げているのに、正社員とはまるで扱いが違う。これは仕方ないことなのだろうか」。

こうした待遇格差は、現場での“慣行”として放置されがちですが、制度的には非常に重要な法的判断の対象となります。
待遇差の是正は「モラル」の問題に見えつつも、実は明確なルールと義務が定められているのです。

キーワードで整理する

パートタイム・有期雇用労働法(通称:パート有期法)
正式名称は「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律」。
企業に対して、正社員と非正規社員との間で不合理な待遇差を設けないことを求めており、特に基本給・賞与・教育訓練・福利厚生等の待遇面について、業務の内容や責任、配置変更の範囲などを踏まえた「均衡待遇」と、同一の仕事であれば同一の待遇を求める「均等待遇」の両立が求められます。

さらに、待遇差の理由説明義務もあり、非正規社員が待遇の違いに疑問を持った場合、企業はその理由を説明する義務を負います(努力義務ではなく法的義務)。

実際の問われ方

この問題では、以下の選択肢③が最も不適切とされています。

基本給、賞与、その他の待遇のそれぞれについて、その労働の性質及び目的に応じて適当と認められる事項を考慮して、不合理と思われる相違が生じないように努めなければならない。

この文の誤りは「努めなければならない」という表現です。これは努力義務を意味しますが、実際には「義務」であることが法律で定められており、企業は待遇差の合理性について説明責任を持つ法的義務があります。

【主な出題ポイント】

  • 「待遇差が許される場合の基準(職務内容・責任・配置の範囲)」
  • 「待遇差の内容説明は努力義務ではなく義務」
  • 「教育訓練・福利厚生も含めた均等待遇・均衡待遇」
  • 「事業主の説明義務(パート有期法第14条)」

試験での留意点

  • 「努力義務」と「義務」の混同に注意。法的義務のある部分を「努める」と表現すると誤答となる可能性が高い。
  • 均衡待遇と均等待遇の違いをおさえること。業務が同一であれば均等待遇、それ以外でも不合理な格差は不可。
  • 「就業規則や労使協定があればOK」という誤解に注意。制度が整っていても、不合理な差であれば違法とされる。
  • 条文の文言に近い表現(「その内容及び理由について説明しなければならない」など)を記憶しておくと選択肢の判断に有効。

このように、実務で起こりがちな「非正規だから仕方がない」という感覚が、実は法令違反になり得ることを把握しておくことが、制度設計にも試験対応にも有効です。必要に応じて他の問題もこの形式でご提供できます。

I-1-11:テレワークと労働時間制度の適用範囲

背景にある問い

「テレワークって、裁量労働制だから労働時間の管理はしなくていいんですよね?」
そう発言した管理職に対し、人事担当者は言葉を濁した。「いや、それは場合によるかと…」。

コロナ禍以降、テレワークは一気に広がったが、その運用ルールについては現場でも誤解が多い。
特に問題となるのは、「どの労働時間制度ならテレワークができるのか」という制度的な制約の理解不足である。

制度の適用範囲や導入手続きが曖昧なまま、現場の“柔軟な対応”として独自ルールが横行すると、法令違反や過重労働の温床になりかねない。
働き方改革が進む一方で、制度設計の正確さが問われている。

キーワードで整理する

テレワークと労働時間制度
テレワークは、原則としてすべての労働時間制度(通常の労働時間制、変形労働時間制、フレックスタイム制、裁量労働制等)において実施可能とされています。
ただし、適切な労働時間管理や労働者の健康確保のためには、制度ごとの管理方法の違いを正確に理解し、運用することが前提です。

「事業場外みなし労働時間制」「裁量労働制」など、時間管理が難しい制度もありますが、それでもテレワークの実施を妨げるものではありません。むしろ、導入時の説明・合意・記録管理の整備が重要となります。

なお、厚生労働省が公表している「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」では、テレワークにおける労働時間の把握情報通信機器の使用時間の記録などについても具体的な方策が示されています。

実際の問われ方

問題文の選択肢②では、以下のように述べられています:

労働基準法に定められた労働時間制度の中で、…フレックスタイム制では、テレワークを行うことができない。

これは明確な誤りです。フレックスタイム制でも、業務内容や制度設計が適切であれば、テレワークは十分に実施可能です。
テレワークの可否は、労働時間制度の種類による制限ではなく、制度の適用要件と管理体制が整っているかどうかによって判断されます。

【主な出題ポイント】

  • すべての労働時間制度でテレワーク実施は可能
  • 「できない」と言い切る設問は、例外なく要注意
  • 裁量労働制、事業場外みなし制などは、時間把握に工夫が必要だが、禁止されているわけではない
  • 労働時間の記録には、通信機器の使用ログ等の活用が推奨されている

試験での留意点

  • **「○○ではできない」「○○でなければならない」**という断定表現には注意。多くの制度が条件付きで適用可能であるため、「制度そのものによる制限」が根拠になることは少ない。
  • 「裁量労働=自由」という誤解や、「フレックス=自己管理だから記録不要」といった短絡的な理解は危険。
  • 労働基準法と厚労省ガイドラインの違いを混同しないようにする。
  • テレワーク=特別制度ではなく、あくまで「就業形態の一つ」であり、各制度の枠内で管理されるという基本認識が重要。

柔軟な働き方を実現するには、制度の柔軟性ではなく、「制度の適正な適用と運用」が問われるという視点を持つことが、設問への理解と実務上の判断力の双方において重要といえます。

I-1-12:過重労働とストレスチェックに関する健康管理義務

背景にある問い

最近、若手社員の一人が過労による体調不良で長期休職に入った。
業務量の多さや残業の多さは把握していたが、「本人が申告しなかったから」「元気そうに見えたから」という理由で、上司も対応を後回しにしていたという。

同じ部署には、月80時間を超える時間外労働をしている社員が他にも複数いる。
しかし、人手が足りない状況で、「面接指導をする時間も余裕もない」と、担当管理職はこぼす。

「どのような労働時間を超えたら」「どのタイミングで」「どのような措置が必要か」──
健康管理に関するルールを感覚に頼っていると、組織としての責任を問われることになりかねない。

キーワードで整理する

労働安全衛生法における健康管理措置
労働者の健康確保のために、使用者にはさまざまな義務があります。特に次の2つが出題の中心です。

  • 面接指導義務(過重労働者対応)
    時間外・休日労働の合計が「月80時間超」となった労働者で、申し出があった場合は、医師による面接指導を実施しなければなりません(労働安全衛生法第66条の8)。
    この義務は、すべての労働者ではなく、疲労の蓄積が認められるなどの一定条件のもとでの実施です。
  • ストレスチェック制度
    常時使用する労働者が50人以上いる事業場では、年1回のストレスチェックの実施が義務です。
    ただし、ストレスチェック結果は医師から本人に直接通知され、本人の同意なしに事業者に開示してはならないことが大原則となります。

加えて、ストレスチェックの結果、本人が希望すれば医師との面接指導が行われ、必要があると認められる場合、事業者は就業上の措置を講じなければなりません。

実際の問われ方

この問題では、選択肢⑤が不適切な記述として問われています。

ストレスチェックを受けた労働者のうち、高ストレス者として…医師による面接指導を行わなければならない。

これは「本人からの申し出」が前提となっている制度であり、申し出がない限り、強制的に面接指導を行う義務はありません

【主な出題ポイント】

  • 面接指導義務は「月80時間超」で「本人の申し出」が要件
  • ストレスチェック制度は50人以上事業場に義務
  • 結果は本人に通知、開示は本人の同意が必要
  • ストレスチェックに基づく就業上の措置も「医師の意見」と「本人の意思」を前提とする

試験での留意点

  • **「全員対象」「無条件に義務」**と読み取れる表現は注意。法令上は「50人以上」「申し出があった場合」などの条件付きであることが多い。
  • 「医師の面接指導=必須」と早合点せず、申し出や実施義務の発動条件を押さえておく。
  • 「80時間超え=即面接指導」ではなく、あくまで「申し出があれば義務」「申し出がなければ努力義務」である点がポイント。
  • 本人同意の有無が求められる場面(ストレスチェック結果の開示など)も混同しやすい論点。

健康管理の法的義務は、「過重労働=即違法」ではなく、「労働者の状態に応じた適切な対応ができているか」という判断が求められます。制度の枠組みと現場対応のバランスを意識することが重要です。

I-1-13:組織構造のタイプと特徴

背景にある問い

企業が成長するにつれ、組織は次第に複雑になる。
最近、あるベンチャー企業で「フラットな組織文化が自慢だったのに、最近やたら上司が増えてきた」との声が上がった。
役職や評価制度も明確になってきた一方で、以前のようなスピード感や柔軟な連携が減ってきたようにも感じられる。

他方で、伝統的な大企業では、「指示系統が明確で安心だが、現場の裁量がなく、変化に対する対応が遅い」といった課題も残る。

このように、組織には成長段階や事業環境に応じてさまざまな形があり、それぞれが持つ強みと弱みをどう活かすかが問われている。
組織構造は、単なる配置図ではなく、企業の戦略や価値観そのものと直結する設計事項である。

キーワードで整理する

ネットワーク組織
水平的な連携や目的共有を重視し、部門横断的に構成される柔軟な組織。外部パートナーとの協業やプロジェクトベースの業務に適しており、流動性と自律性を兼ね備える。指揮命令系統は固定されず、環境変化への即応性が高い。

ティール組織
指揮命令や中央集権的なマネジメントに依存せず、メンバー個々人が自己組織化し、目的に沿って役割を柔軟に調整しながら組織を運営する。固定的な役職や上下関係を排し、進化型組織とも呼ばれる。

ピラミッド組織
階層構造を明確にし、指示命令系統が一元化されている。職能ごとに分業がなされ、役割や責任が明確であるため、効率性と管理性に優れる。特に安定期や規模の大きな組織に向いている。

マトリクス組織
部門別の垂直的指揮系統と、プロジェクト等の横断的指揮系統が交差する二重の指揮命令系統を持つ構造。柔軟な対応が可能な一方で、責任の所在が不明確になりやすいという課題もある。

実際の問われ方

この問題では、4つの組織構造に関する特徴的な記述(ア〜エ)と、それに対応する名称の正しい組合せが問われています。

【記述と組織構造の対応】

記号説明内容の要点正しい組織名称
水平的なつながり・自律的協働・構造改革ネットワーク組織
指揮命令系統なし・目的への共感・自己運営ティール組織
上意下達・役割分担・効率性ピラミッド組織
職能と事業の2系統・権限の交差マトリクス組織

→ 正解は選択肢⑤。

試験での留意点

  • 「ネットワーク」「ティール」「マトリクス」などの近年の組織形態も出題対象になるため、定義と特徴の理解が必要。
  • 「柔軟」「自律」「水平連携」などの記述は、ティールやネットワークを想起させるが、両者の違い(目的共有 vs 自己組織化)を見極める必要がある。
  • 「2つの指揮命令系統」が出てきたら、ほぼ確実にマトリクス組織。
  • 「上意下達」や「職能分化」はピラミッド型のキーワード。効率性を重視する構造に対応する。

組織構造は単なる枠組みではなく、経営戦略・人材活用・イノベーション創出に直結する重要な設計要素です。出題では、抽象的な説明文から構造の本質を見抜く力が問われます。

I-1-14:組織コミットメントの3類型(情緒的・功利的・規範的)

背景にある問い

ある社員が退職面談でこう語った。「この会社には感謝してるし、人間関係も悪くない。
でも、もう“ここにいたい”という気持ちが湧かないんです」。

別の社員はこう言った。「正直、仕事はつらい。
でも、生活のためには辞められないし、他に通用するスキルもないから残っています」。

またある社員は、「本当は辞めたかったけど、自分を育ててくれた恩があるし、ここで頑張るのが義務だと思った」と話す。

同じ“在籍”という行動でも、その背景にある心理は大きく異なる。
なぜ人は組織にとどまるのか。
何が「所属の意味」や「忠誠心」に影響を与えているのか。
働き方が多様化する今、組織と個人の“つながりの質”が問われている。

キーワードで整理する

組織コミットメント
組織と個人との心理的な結びつきのことを指し、次の3つの側面に分類されます。

  • 情緒的コミットメント
    組織に対する愛着・共感・誇りなど、感情的な結びつきを指す。組織の目標や価値観に共鳴し、「ここにいたい」という気持ちで所属するタイプ。
  • 功利的(道具的)コミットメント
    経済的・社会的な理由などから「仕方なく」組織にとどまる状態。辞めることによる損失が大きいために留まるといった打算的な関係。
  • 規範的コミットメント
    組織に対する道義的責任感や義務感から、「ここにいるべきだ」「辞めるのはよくない」と感じて所属する状態。道徳的・倫理的な動機に基づく。

これらは行動としての「組織への残留」を表していても、背景にある心理的動機はまったく異なります。

実際の問われ方

問題文では、各コミットメントの説明に関する記述が5つ提示され、最も不適切なもの(=分類が誤っているもの)を選ぶ形式です。

選択肢④は、「組織コミットメントの3つの要素のうち、一般に入社後一度低下したのちに上昇していく傾向にあるのは功利的コミットメントである」とありますが、これは誤りです。

実際には情緒的コミットメントこそが、入社後に徐々に形成・上昇していくものであり、功利的コミットメントは状況依存的かつ短期的に変動しやすい側面を持ちます。

【主な対応表】

コミットメントの種類内容の本質主な動機
情緒的組織との感情的つながり共感・誇り・愛着
功利的組織にとどまることの損得勘定経済的報酬・スキル損失の回避
規範的組織にいることが「正しい」と感じる義務感・恩義

試験での留意点

  • 「ここにいたい」=情緒的、「辞められない」=功利的、「辞めてはいけない」=規範的、といった感情のベクトルの違いに注目。
  • 「入社後に形成されるのは情緒的」→キャリア初期から浸透するのは功利的や規範的である場合が多い。
  • 出題では、「動機」と「行動」が一致しない点に注意。行動だけを見て判断しない。
  • 表現上、「〜のために働く」「〜という気持ちから残っている」などの理由の部分が分類の鍵。

心理的な組織関係の質は、定量的な人事指標だけでは把握できない領域です。だからこそ、こうした概念の理解は、人的資源管理だけでなく組織マネジメント全体の土台となります。

I-1-15:ジョブ型雇用とメンバーシップ型雇用の比較

背景にある問い

ある企業で、人事制度改革の一環として「ジョブ型雇用の導入」が検討された。
きっかけは、外資系企業との競争激化やDXによる業務の専門化であった。

しかし、現場の中間管理職からはこんな声があがった。
「うちの仕事は“やれる人がやる”のが文化だ。明確な職務記述書を作って固定化したら、逆に非効率になるのでは?」
「突然、ジョブ型に切り替えたら、育成や配置転換が難しくなりそうだ」。

実際、日本の多くの企業では、年功序列や終身雇用を前提とした“メンバーシップ型”が根付いている。
人材流動性の確保、生産性の向上、多様な人材の活用など、ジョブ型の利点が注目される一方で、既存の組織文化との“ねじれ”が改革を難しくしている。

キーワードで整理する

ジョブ型雇用
あらかじめ定義された**職務内容(ジョブディスクリプション)**に基づいて人を配置する制度。成果責任が明確であり、専門性の高い人材確保やグローバル人材の活用に適している。人事評価や処遇も職務ベースとなる。

メンバーシップ型雇用
職務に限定せず、企業における役割全体への貢献を前提に雇用する制度。配置転換や育成を通じて、総合的に人材を活用する。年功序列や長期雇用との親和性が高く、柔軟な運用が可能。

両者には以下のような特徴があります。

比較軸ジョブ型雇用メンバーシップ型雇用
雇用の単位職務(ジョブ)に紐づく人(社員)に紐づく
適応性高度専門職・成果重視型総合職・長期育成型
評価の基準業務成果・職務遂行能力忠誠心・勤続年数・協調性
向いている組織文化欧米型、職務分掌が明確な組織日本型、役割が曖昧でも機動的な組織
変化への対応力職務固定で柔軟性に欠ける面も組織の都合に応じた柔軟な配置転換が可能

実際の問われ方

この問題では、ジョブ型・メンバーシップ型それぞれの性質について述べた5つの記述から、不適切なものを選ぶ形式です。

誤りとされる選択肢③では、

「ジョブ型よりも変化に対応しやすい」

と述べられていますが、これは逆です。業務内容があらかじめ固定されているジョブ型雇用は、環境変化に対して柔軟な対応が難しいとされています。一方、メンバーシップ型は役割が流動的であり、組織の都合に応じて人材配置を変更しやすいため、変化対応力は高いといえます。

試験での留意点

  • 「専門性」「即戦力」「成果主義」とくればジョブ型、「育成」「柔軟性」「長期雇用」とくればメンバーシップ型と分類できる。
  • 「柔軟性が高い」とする記述の主体がどちらかを読み違えないこと(本問のような混同に注意)。
  • 制度の是非ではなく、「どのような性質があるか」という視点で客観的に読み取る。
  • 実務的には“ハイブリッド型”の運用が多いが、試験ではあえて両極端に分類されて出題される傾向がある。

制度改革の議論は常にトレードオフを伴います。重要なのは「制度そのものの善悪」ではなく、「どのような場面に適しているか」を見極める視点です。試験でも現場でも、制度の特徴と使いどころを整理することが鍵となります。

I-1-16:人事考課と業績評価の視点(成績考課・能力考課)

背景にある問い

ある中堅社員がこう話していた。
「自分はずっと裏方業務で成果が見えにくい。でも評価の面談では“目に見える結果がないから”と低評価だった」。
また、別の若手社員はこう言う。
「自分はチームでフォローに徹していたが、個人の成果が見えにくいせいか、賞与も昇格もついてこない」。

人事評価の現場では、「業績」「能力」「人柄」「将来性」など、何をどのように評価するかが悩みの種となる。
公平性と納得感の確保は難しく、評価制度への不信感がモチベーション低下につながることもある。

こうした課題の背景には、「業績重視」と「能力重視」の視点の混在や、評価者の主観に左右される運用のばらつきがある。
人材マネジメントの精度を高めるには、評価の構造を理解した上での設計と運用が不可欠である。

キーワードで整理する

成績考課(業績考課)
主に「何を達成したか」を評価の軸とする。数値や成果などの結果指標に基づくため、賞与や昇進に直結しやすい。一方で、成果の出にくい間接部門や長期的貢献が評価されにくいという課題がある。

能力考課
何ができるか、どのようなスキルを持っているか」を評価する。職位が高くなるほど業務の成果だけでなく、戦略的視野・企画力・指導力などの能力が重視される。
将来の役職登用や人材育成の文脈で重要とされる視点である。

情意考課
どのような姿勢で仕事に取り組んでいるか」「責任感・協調性・勤勉性」など、勤務態度に着目する。評価の属人的なバラつきが起こりやすく、数値化が難しい領域。

実際の問われ方

問題文では、5つの記述のうち「最も不適切なもの」を選ぶ形式となっています。
選択肢④では、

「職位が高くなるほど、成績考課よりも情意考課が重視される」

と述べられていますが、これは誤りです。

職位が高いほど「情意」ではなく、「能力考課」が重視されることが基本です。マネジメント能力や判断力など、組織運営に不可欠な能力が問われるため、評価の軸も変化します。

試験での留意点

  • 「職位が上がると何が重視されるか」は頻出論点。若手:情意 → 中堅:成績 → 管理職:能力の傾向を意識。
  • 「成果主義」と「能力主義」を混同しないこと。成果主義=成績考課、能力主義=将来への期待や可能性を含む。
  • インバスケット法などのシミュレーション型評価は能力考課との親和性が高い。
  • 「評価の難しさ」に触れる記述(相対評価の限界・評価者訓練の必要性など)も頻出パターンである。

評価制度は、組織文化と人材マネジメントの“写し鏡”です。何を評価するかによって、社員の行動も大きく変わるため、評価軸の設計は戦略的視点が不可欠となります。試験でも実務でも、「成果か、能力か」という軸の違いを見極める力が求められます。

情報管理

Ⅰ-1-17:クラスター分析と回帰分析の使い分け

背景にある問い

営業会議で「もっと顧客の傾向をつかめないのか」と問われたとき、過去の購買履歴を眺めるだけでは何も見えてきません。
似たような購入パターンを持つ顧客をまとめられれば、効率的なプロモーションが可能になります。
一方で、売上や事故発生などの“結果”に影響を与える要因を明らかにしたいケースもあります。
たとえば「売上は立地でどれくらい変わるのか?」
「教育の有無で事故率は変わるのか?」といった問いです。

これらは一見すると似た分析に見えますが、実は使う手法がまったく異なります。
対象が「分類」か「予測」かによって、アプローチが決定的に異なるためです。

キーワードで整理する

このような場面では、以下のキーワードで整理できます。

  • クラスター分析
    特徴の似た複数の対象(顧客など)を、あらかじめ定めた基準なしに自動的にグループ分けする手法。目的変数はなく、「分類」そのものが目的。
  • ロジスティック回帰分析
    結果が**2値(Yes/No、発生/非発生)**であるときに、その発生確率に影響を与える要因を数値的に明らかにする手法。例:事故の有無、購買の有無など。
  • 重回帰分析
    結果(目的変数)が**連続量(売上、得点、距離など)**であり、その変動に影響する複数の要因を明らかにしたいときに用いる手法。
  • 単回帰分析
    独立変数が1つのみの回帰分析。要因が1つに絞れる場合に使われるが、実務ではあまり登場しない。

実際の問われ方

この問題では、3つの事例(ア~ウ)に対して、最も適切な分析手法の組合せを選ぶ問題です。

事例内容該当手法(正答:②)
購買履歴で顧客を分類し、商品提案クラスター分析
情報漏えい発生の有無と教育との関係ロジスティック回帰分析
店舗の立地と売上の関係重回帰分析

それぞれ「分類」なのか「要因と結果の関係」なのか、「目的変数があるか」「数値か2値か」を軸に整理することが重要です。

試験での留意点

  • クラスター分析は「目的変数がない」ことが最大の特徴です。分類先(正解ラベル)が存在するなら判別分析のほうが適切です。
  • 回帰分析はすべて「目的変数がある」分析です。ロジスティック回帰分析と重回帰分析は、**目的変数の性質(2値か連続か)**によって使い分けます。
  • 「重回帰」「単回帰」は説明変数の数による分類で、目的変数の性質とは無関係です(ここは混同しやすいポイントです)。
  • 本問のように「定性的な説明から適切な分析手法を選ぶ」タイプの問題では、分析の目的と結果の種類を読み取ることが鍵となります。

Ⅰ-1-18:著作権の保護期間と利用許諾の要否

背景にある問い

技術資料を社内研修で使おうとしたとき、
「ネットにあった文献を配っても大丈夫ですか?」
「この映像をパワーポイントに貼ってもいいですか?」という確認が入ることがあります。
多くの場合、「教育目的だし」「社内利用だから」と軽く考えがちですが、それが著作権侵害に該当することは少なくありません。

たとえ業務上の善意であっても、第三者の著作物を無断で複製・配布・上映する行為は、法的リスクを伴います。
特に企業活動では、個人よりも厳しく責任を問われる場面もあるため、知的財産への理解が求められます。

キーワードで整理する

こうした場面で問われているのは以下のキーワードです。

  • 著作権
    創作的な表現を創作した著作者に認められる財産的・人格的権利の総称。コピーや配布、上映、公衆送信などには原則として著作者の許諾が必要です。
  • 著作権の保護期間
    原則として著作者の死後70年まで保護されます。保護期間が満了すれば、その著作物はパブリックドメインとなり、自由に利用できます。
  • 私的使用のための複製(私的複製)
    自分や家庭内の利用の範囲に限っては、著作権者の許諾なく複製が可能です。ただし、業務利用や配布目的の場合は私的使用にあたらないため、無許諾利用は違法です。
  • 著作権侵害
    許諾なく著作物を複製・配布・上映・送信する行為。たとえ出典を明記しても、許諾がない限り原則として侵害にあたります。

実際の問われ方

この問題では、以下のように実務で遭遇しうる5つの事例が示され、その中から**最も不適切なもの(明確に著作権侵害に該当するもの)**を選ぶ形式です。

選択肢内容ポイント
個人のPCソフトをDVD-Rにコピー私的複製の範囲か否かが論点
購入した彫刻作品をコピー展示私的所有権 vs 複製権
市販書籍の一部を資料として配布出版社の許諾がない限り著作権侵害(正答)
知財の感覚がないまま模倣使用意図の有無と関係なく無断使用は違法
80年以上前の著作物をWeb掲載**著作権切れ(死後70年超)**ならOK

このように、著作権者の許諾の有無保護期間の満了が主な判断軸になります。

試験での留意点

  • 「出典を明記していればOK」は誤解です。許諾なしに使用すれば出典に関係なく著作権侵害です。
  • 「業務内での資料利用は私的使用にあたる」も誤りです。業務利用は私的使用に該当しません
  • 「著作権が切れたものは自由に使える」点は正しいですが、その**年数(死後70年)**に注意が必要です。
  • **パブリックドメイン(著作権消滅状態)クリエイティブ・コモンズ(許諾条件付き公開)**の違いも抑えておくと応用的理解に役立ちます。

このように、知的財産権の扱いは「形式的な法解釈」ではなく、「実務上の運用と誤解の多さ」にこそ注意すべき領域です。著作物の性質・利用目的・期間の3点に着目し、冷静に判断する姿勢が求められます。

Ⅰ-1-19:MTBF(平均故障間隔)の算出と活用

背景にある問い

システム運用部門で、サーバや機器の更新時期を検討するとき、「この装置、そろそろ交換すべきではないか?」という声が上がります。
しかし、担当者としては「まだ使える」「調達予算がない」といった現実的な事情もあり、判断に迷うこともあります。
そのとき、指標として挙がるのがMTBFです。

メーカーのカタログ値は参考になりますが、実際の稼働状況を踏まえた自社データに基づく信頼性評価が重要です。
故障件数、稼働率、運用時間などのデータをもとに、定量的に判断材料を提示できるかどうかが、技術マネジメントの鍵となります。

キーワードで整理する

このような状況では、以下のキーワードが重要になります。

  • MTBF(Mean Time Between Failures)
    機器が故障せずに稼働し続けるまでの平均時間を表す指標。信頼性や稼働率の評価に使われる。計算式は以下の通り:
    MTBF = 総稼働時間 ÷ 故障件数
    ただし実務では「稼働率」を加味し、総稼働時間 × 稼働率 ÷ 故障件数で評価されることが多い。
  • 稼働率(Availability)
    設備が実際に稼働していた時間の割合。
    稼働率=稼働時間 ÷ 総運用時間。信頼性やメンテナンス性と密接に関係。
  • カタログ値と実績値の比較
    製品仕様としてのMTBFは理想条件下での試験値であることが多く、実運用での実績と差が出る。差の理由を定量的に説明できるかが、管理者としての力量に直結する。

実際の問われ方

この問題では、以下のようなデータが与えられ、実際のMTBF値を計算し、カタログ値(1000時間)との比較から適切な記述を選ぶ形式です。

機種総時間 (h)稼働率故障件数MTBF(計算)
機種A12300000.911110約1008.4 時間
機種B11740000.921085約995.5 時間
機種C11810000.941105約1004.7 時間

これにより、「Bだけがカタログ値を下回る」という判断が導かれます。

試験での留意点

  • 稼働率の意味と計算式を混同しないこと。MTBFは「稼働時間」ではなく「稼働率込みの総時間」が使われます。
  • 単純な総稼働時間の比較だけでは不正確です。故障件数で割る処理を忘れると誤解につながります。
  • 「信頼性」や「保守計画」の文脈でMTBFが出るときは、定量的根拠としての説得力を求められることを意識する必要があります。
  • 「カタログ値がすべてではない」ことに気づけるようになると、技術管理の視野が広がります。

こうした数値指標の扱いでは、計算力だけでなく、指標の意味とその使いどころを理解しているかどうかが問われます。表面的な数値の大小ではなく、実務との結びつきを意識した学習が求められます。

Ⅰ-1-20:適時開示(タイムリー・ディスクロージャー)

背景にある問い

「このニュース、今日中に出すべきですか?」
「まだ事実確認中なので、来週に回しましょうか?」
IR(投資家向け情報発信)や経営企画の現場では、株価に影響する情報をいつ、どのように公表するかがしばしば議論になります。
たとえば、不祥事や業績予想の下方修正、新株の発行などは、情報の出し方ひとつで投資家の信頼や市場の動向に影響を及ぼします。

上場企業にとって、これらの情報は「正確性」だけでなく、「速やかさ」も要求されます。
とくに災害・事故・重大な経営判断などが発生したときには、企業の外部ステークホルダーに対して、迅速かつ適切な開示を行う姿勢が問われます。

キーワードで整理する

こうした場面で重視されるのが、以下のキーワードです。

  • 適時開示(タイムリー・ディスクロージャー)
    株式市場の公正性を保つために、上場企業が株価に影響を及ぼす重要情報を、迅速かつ正確に開示する義務。金融商品取引所の規則に基づき、企業に対して義務づけられています。
  • 重要事実の公表義務
    企業にとって「重要な決定」「発生した事実」「決算情報」などが対象となり、一定の猶予なく速やかに開示することが求められます。
    例:大規模災害、訴訟、業績予想の変更、新株発行など。
  • 有価証券報告書との違い
    有価証券報告書は、年次ベースで提出する詳細な報告書であり、適時性を重視するタイムリー・ディスクロージャーとは性質が異なります。

実際の問われ方

本問では、「以下のうち、適時開示すべきものとして最も不適切なもの」を選ぶ形式です。
具体的には、以下のような選択肢が提示され、正しい理解が求められます。

選択肢内容適時開示対象か
① 有価証券報告書の提出×(年次で提出、タイムリー性に乏しい)
② 大株主の異動○(株価に影響し得る)
③ 業績予想の修正○(市場に大きな影響)
④ 工場の火災発生○(重大事故)
⑤ 新株式の発行○(希薄化による影響)

よって、①が最も不適切であると判断されます。

試験での留意点

  • 「速やかに開示すべき情報」と「法定開示書類」の混同に注意。
    有価証券報告書や四半期報告書は、法令上定められた提出期限があるものであり、「適時性」や「即時開示」の対象ではありません。
  • 一方、火災・不祥事・増資・業績修正といった事象は、発生・決定の直後に公表すべき内容です。
  • 適時開示の対象となるかどうかは、「株価に影響を及ぼす可能性があるか」という観点が基本になります。

このように、「いつ、何を、どう伝えるべきか」という判断は、情報の性質を見極める力に依存します。制度としての理解だけでなく、経営視点・市場視点の両面から判断する力が求められます。

Ⅰ-1-21:数値データの尺度と統計処理の対応関係

背景にある問い

「このアンケート結果、平均を出しても意味あるのでしょうか?」
マーケティング調査や顧客満足度分析の場面では、こうした疑問がたびたび投げかけられます。
たとえば、「5段階評価の満足度の平均値は3.4でした」と言っても、それがどれほど有効な指標かを誤解して使ってしまうと、施策の方向性が大きくずれてしまう可能性があります。

数値が付いているからといって、何でも加減乗除して良いわけではありません。
**そのデータが持つ性質(尺度)**を理解しなければ、統計処理の意味づけも妥当性も失われてしまいます。
だからこそ、統計処理の第一歩は、「このデータは何尺度か?」という視点から始める必要があります。

キーワードで整理する

こうした疑問の根底には、以下の4つの尺度の分類があります。

  • 名義尺度(カテゴリーデータ)
    データがただの分類記号にすぎず、大小・順序・間隔の意味を持たない
    例:性別、血液型、郵便番号。
    適した代表値は最頻値
  • 順序尺度
    データに順序関係があるが、差や比率は意味を持たない
    例:5段階評価、満足度、成績順位。
    適した代表値は中央値
  • 間隔尺度
    データ間の差は意味があるが、絶対的なゼロ点が存在しない
    例:気温(℃)、日付。
    適した代表値は平均値・中央値など。
  • 比率尺度
    データに差も比も意味があり、絶対的ゼロ点を持つ
    例:身長、体重、収入、距離。
    適した代表値は平均値

実際の問われ方

本問では、以下のように(ア)~(エ)に該当する事例を適切に読み替える問題です。各尺度の代表例と統計量の対応関係を理解していないと誤解しやすい問題です。

尺度分類代表的な統計量の例
名義尺度(イ)血液型、性別など最頻値
順序尺度(ア)5段階満足度など中央値
間隔尺度(エ)気温(℃)など平均値・最頻値
比率尺度(ウ)身長、体重など平均値

選択肢①「ア=評価、イ=震度、ウ=身長、エ=最頻値」が正解となります。

試験での留意点

  • 「数値がついている=計算してよい」とは限りません。
    たとえば5段階評価は順序尺度であり、平均値より中央値が適切とされます。
  • 名義尺度では、「平均値」も「中央値」も意味を持たず、最頻値のみが代表値となりえます。
  • 間隔尺度と比率尺度の違い(絶対的ゼロ点の有無)は、比率計算の可否に関わります。
    例:温度(℃)の「20℃は10℃の2倍」ではない。
  • よく出題されるのは、「尺度の性質と適した統計処理(代表値・標準偏差など)」の組み合わせに関する問題です。

尺度の違いを理解することは、統計処理だけでなく、分析の前提条件や結論の信頼性を考えるうえでも不可欠です。「使える統計」と「意味のない統計」を見極める第一歩として、データの尺度を意識した判断が求められます。

Ⅰ-1-22:マーケティング・ミックスの4P

背景にある問い

「この新商品、広告はどの媒体に出すべきか?」
「価格は強気でいくべきか、プロモーションで値引きするか?」
製品の企画や販売戦略を考えるとき、個別の要素(価格、流通、広告など)について悩むことは多くあります。
しかし、どれか一つだけを最適化しても、全体としてうまくいかないことも少なくありません。
重要なのは、それぞれの施策を戦略的に組み合わせて全体としての整合を取るという視点です。

このとき、ビジネスの基本フレームとして活用されるのが「4P」と呼ばれるマーケティング・ミックスです。

キーワードで整理する

この文脈で押さえておきたいキーワードは以下の通りです。

  • 4P(マーケティング・ミックス)
    顧客に価値を届けるために企業が統合的に設計する、4つの基本要素のこと。
    各要素は以下の通り: 要素説明Product(製品)何を提供するのか(商品・サービスの内容)Price(価格)いくらで提供するか(価格設定、割引、支払条件)Place(流通)どのように届けるか(販売チャネル、物流)Promotion(販売促進)どう知らせるか(広告、PR、販促活動) これらを組み合わせて市場戦略を設計することが、マーケティングの中心的な実務活動となります。
  • マーケティング戦略との関係
    4Pは企業内部から見た「仕掛ける側」の視点。一方、顧客側の視点に立った分析フレームとしては**4C(Customer, Cost, Convenience, Communication)**が対になる概念として知られています。

実際の問われ方

この問題では、「マーケティング・ミックス(4P)」に該当する説明を選ぶ問題です。選択肢③が正解です。

  • 「製品、価格、流通経路、販売促進を組み合わせ、計画・実施する考え方」=4Pの定義に合致
  • その他の選択肢は、以下のように他のフレームワークに関する説明です: 選択肢内容関連フレームワーク①強み・弱み・機会・脅威の4象限SWOT分析②市場成長率と市場占有率の4象限PPM(プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント)④顧客視点での価値、利便性、コスト、コミュニケーション4C分析⑤自社・顧客・競合の視点からの分析3C分析

試験での留意点

  • 4Pは企業側の視点、4Cは顧客側の視点という対比構造を押さえておくと、選択肢の混同を防げます。
  • SWOT分析や3C分析のように「マーケティング戦略の前段階」としての環境分析と、「施策を組むフェーズ」である4Pはステップが異なるため、場面の違いに注目することがポイントです。
  • 「流通」はPlaceに該当しますが、物流だけでなくチャネル設計全体が含まれる点に注意が必要です。

4Pは製品開発や事業戦略において、非常に実務的かつ基本的なフレームワークです。単なる記号的な理解にとどまらず、「製品・価格・流通・販促をどう組み合わせるか」という統合的思考が問われます。総監試験でも、経営資源の活用・配分という視点で重要な基盤となります。

Ⅰ-1-23:デジタル化関連用語の正しい理解と区別

背景にある問い

業務の中で「DX(デジタルトランスフォーメーション)」や「デジタルツイン」といった言葉が飛び交うようになりましたが、「それって何がどう違うのか」「どのフェーズで使うべき概念か」と戸惑う声も少なくありません。
たとえば、ある会議で「うちもDXを進めている」と言いながら、実態はペーパーレス化やRPA導入の域を出ていないケースも見られます。

こうした用語は、一見似たように聞こえますが、それぞれが示すスコープ・目的・技術の深さには明確な違いがあります。
正確な理解と使い分けができていなければ、戦略立案も空回りしてしまいます。

キーワードで整理する

ここでは、頻出かつ混同されやすい5つのキーワードを整理します。

  • デジタルディスラプション(Digital Disruption)
    デジタル技術によって既存のビジネスモデルや業界構造が破壊される現象。UberやAirbnbのように、業界のゲームルールそのものを変えてしまう力を持ちます。
    →(ウ)市場変革に適応できない既存企業が淘汰されるという文脈。
  • デジタルトランスフォーメーション(DX)
    組織全体を再構築するほどの抜本的な変革を目指す取り組み。単なるIT導入や業務改善を超えて、価値創造の手段そのものを変える。
    →(ア)組織レベルでの変革を通じたサービス提供の見直し。
  • デジタライゼーション(Digitization)
    情報をデジタル化すること自体。紙の帳票をPDFにする、手書きデータをCSVにするなど、業務の一部の電子化が主目的。
    →(エ)3Dスキャンなどによるデータ化が該当。
  • デジタルアプリケーション(Digital Application)
    デジタル技術を活用して新たな価値提供を行う製品やサービスの具体的な展開。スマホアプリ、Webサービス、IoT製品など。
    →(イ)デジタル活用による商品・サービス開発の記述。
  • デジタルツイン(Digital Twin)
    IoTやセンサ技術により、現実空間をサイバー空間にリアルタイムで再現する概念。設備・工場・都市などのシミュレーションに用いられる。
    →(ウ)IoTによる空間の仮想再現。

実際の問われ方

本問では、A〜Eのキーワードと、それぞれの説明文(ア〜オ)との正しい組み合わせを選ぶ形式です。

用語説明文正解の組合せ
A:デジタルディスラプションウ(既存産業破壊)A=ウ
B:デジタルトランスフォーメーションア(組織全体の再構築)B=ア
C:デジタライゼーションエ(3Dスキャン・データ化)C=エ
D:デジタルアプリケーションイ(商品・サービス開発)D=イ
E:デジタルツインオ(IoTで現実を再現)E=オ

正答は①。

試験での留意点

  • DX(トランスフォーメーション)は変革(Transformation)、デジタライゼーションはデジタル化(Digitization)
    似た語感ながら目的も対象も異なるため混同に注意。
  • デジタルツインとVR/ARの違い:前者は現実世界を正確に仮想再現、後者は体験の拡張。
  • デジタルディスラプションはネガティブな文脈も含み、既存企業にとっては脅威であることがポイント。
  • 本問のように用語と定義の正確な対応を問う形式では、「意味が似ているから」ではなく、「定義文中のキーワードや構文」に着目すると正答にたどり着きやすくなります。

このように、デジタル関連の概念は言葉が似ていても、レイヤーや文脈がまったく異なります。技術の導入フェーズや変革の深さに応じて正確に整理できる力が、デジタル時代のリーダーには求められます。

Ⅰ-1-24:セキュリティ対策におけるデジタル署名と暗号化の違い

背景にある問い

「このメール、本当に上司から届いたものなのか?」
「送ったファイルの中身が第三者に見られてしまったらどうする?」
業務で日常的に使うメールや電子取引においては、改ざん・なりすまし・盗聴といったリスクが常に存在します。
特に、顧客情報や契約情報といった機密性の高いデータを扱う場合、単に「送る」だけでは済まされません。

ところが、セキュリティ対策の用語や手法が複雑で、「暗号化」「デジタル署名」「電子証明書」などの区別が曖昧になりがちです。
効果的な対策を講じるためには、それぞれの目的と機能の違いを理解する必要があります。

キーワードで整理する

このような場面では、次のようなセキュリティ技術の理解が重要です。

  • デジタル署名
    メッセージやファイルが確かに特定の送信者から送られ、途中で改ざんされていないことを証明する技術。署名に用いる鍵は公開鍵暗号方式に基づきます。主な目的は以下の2つ:
    真正性の確保(誰が送ったか)
    完全性の確保(内容が改ざんされていないか)
  • 暗号化
    データを読めない形式に変換することで、第三者に内容が漏洩することを防ぐ手法。暗号化には以下の2種類があります:
    ・共通鍵暗号方式(同じ鍵で暗号化・復号)
    ・公開鍵暗号方式(送信者が受信者の公開鍵で暗号化、受信者が秘密鍵で復号)
  • なりすまし対策改ざん対策
    なりすましには送信者認証(デジタル署名)が有効、改ざん防止にもデジタル署名が機能します。一方、**盗聴(盗み見)**には暗号化が必要です。

実際の問われ方

この問題では、5つのセキュリティ対策の記述のうち、最も不適切なものを選びます。ポイントは**「どのリスクにどの技術が対応するか」**を理解しているかどうかです。

選択肢内容適切か?補足
① デジタル署名で否認防止適切発注者の否認を防ぐ
② デジタル署名で盗聴防止不適切デジタル署名は盗聴には効果なし
③ 機密データの暗号化保存適切リスク低減として有効
④ 差出人のなりすまし防止適切デジタル署名で対応可能
⑤ 改ざん防止として署名適切内容の真正性と完全性の担保

正答は②。盗聴に効果があるのは暗号化であり、デジタル署名ではありません。

試験での留意点

  • デジタル署名は「見る人を制限する」わけではない。読むことを防ぐには、別途暗号化が必要です。
  • 「本人確認」=署名、「内容の秘匿」=暗号化 と整理しておくと混乱しにくくなります。
  • 「不正アクセス」「なりすまし」「情報漏洩」など、リスクの種類によって必要な対策は異なることを意識することが重要です。

セキュリティ技術の用語は似通っており、機能も重なって見えることがあります。しかし、実際には対策の目的(盗聴防止・改ざん防止・なりすまし防止)ごとに技術の役割が明確に分かれているため、用途と技術の正しいマッチングが試されます。総監的視点では、「技術を導入するだけではなく、目的に沿った選定」が求められます。

安全管理

Ⅰ-1-25:度数率と労働災害の評価指標

背景にある問い

「安全第一」と掲げていても、現場の実感とは乖離があることがあります。
作業中に発生した事故が、報告されるまでに時間がかかったり、「小さな怪我は自己責任」とする風潮が残っていたりする職場も見受けられます。
そうした環境で、どのように労働災害のリスクを数値化し、客観的に管理すべきか。
担当者としては、実際の事故件数に加え、「働く時間」や「従業員数」を踏まえて、どの現場が相対的に危険なのかを把握する必要があります。

見落とされがちですが、労働災害の評価には、絶対数ではなく、発生頻度を示す比率の理解が不可欠です。

キーワードで整理する

この問題に関係するキーワードは 度数率 です。

度数率とは、一定の労働時間あたりに発生した労働災害(死傷者)の数を示す指標で、次の式で計算されます:

コピーする編集する度数率 =(死傷者数 × 1,000,000)÷ 延べ実労働時間数

ここでの「1,000,000」は100万時間を意味し、10人が週40時間働いた場合で換算すると、約5年弱分の労働時間にあたります。
単なる事故件数ではなく、作業規模を考慮した上での「頻度」を表すため、業種や事業所の規模が異なっても比較が可能となります。

似た指標として「強度率」(労働損失日数による重篤度評価)もありますが、本問では度数率が焦点です。

実際の問われ方

本問では、以下の条件が与えられています:

  • 各事業所の死傷者数
  • 延べ実労働時間(単位:百万時間)
  • 「度数率が0.50未満」となる事業所を選ぶ

各事業所ごとの度数率を計算するには、以下のように進めます:

事業所死傷者数労働時間(百万h)度数率計算度数率
A111 ÷ 11.00
B5115 ÷ 110.45
C101810 ÷ 180.56
D202420 ÷ 240.83
E405440 ÷ 540.74

したがって、度数率が0.50未満であるのは、**B事業所(0.45)**のみであり、正解は②です。

試験での留意点

  • 「度数率」と「強度率」の混同に注意が必要です。前者は頻度(件数ベース)、後者は損失日数ベースの重篤度です。
  • 単位変換の読み取りが問われることも多く、本問のように「百万時間」で与えられている場合、分母にその値を正確に反映できるかがポイントです。
  • 「0.50未満」などの境界条件の読み違い(「以下」と勘違いして0.50を含めてしまうなど)も頻出のミスです。

Ⅰ-1-26:不安全行動と不安全状態の理解

背景にある問い

現場で事故が発生したとき、「作業者が不注意だった」「マニュアルを守らなかった」といった声が上がることがあります。
一方で、その現場の設備配置や作業導線、あるいは指示体制や教育不足といった「環境側の要因」が原因だったと後から分かるケースもあります。
つまり、事故の責任を「個人」に帰す前に、その背景として何があったかを見極める視点が求められます。

安全管理において重要なのは、「作業者のミス」ではなく、「なぜそのミスが起きる構造になっていたか」に目を向けることです。

キーワードで整理する

ここで注目すべきキーワードは 不安全行動と不安全状態 です。

  • 不安全行動とは、作業者によるミスや不注意、あるいはルール無視など、人の行動に起因する危険な動きです。たとえば、保護具を装着せずに作業を行うといった行為が該当します。
  • 不安全状態とは、設備や環境、材料、手順など、作業環境に起因する危険な状態のことです。たとえば、手すりのない足場、警報機の故障、視界の悪い作業エリアなどが典型です。

事故の多くは、これらのいずれか、あるいは両方が重なって発生します。安全対策では、行動だけでなく状態にも対策を講じる必要があります。

実際の問われ方

この問題では、以下のような形で問われています:

  • 不安全行動や不安全状態に関する基本的な理解を問う設問
  • 最も「不適切な」記述(=誤っている内容)を選ぶ形式

選択肢の中には、表現としては正しく見えても、現場実態や原則と照らして違和感のあるものが含まれています。

本問の④では、「機械等が完全に自動化されていても、安全でない可能性がある」と述べられていますが、自動化=安全ではないという考え方は一面的です。
むしろ、自動化はヒューマンエラーの低減を目的とすることが多く、誤解を招く表現であるため「不適切」と判断されます。

試験での留意点

  • 「不安全行動」と「不安全状態」の定義の混同が頻出です。前者は人、後者は環境・設備に注目します。
  • 「自動化」と「安全性」の関係についても、単純な因果関係では語れない点に注意が必要です。自動化=安全とは限らないが、危険とは限らないというバランス感覚が問われます。
  • 正誤問題では、正しくても“誤解を招く表現”が不適切とされることがあるため、文意の含意まで丁寧に読み取る力が求められます。

Ⅰ-1-27:国土強靱化基本法と大規模自然災害への備え

背景にある問い

集中豪雨や地震によって広範囲のインフラが寸断されるたびに、
「なぜここまでの被害になったのか」
「もっと事前に備えられなかったのか」という議論が起こります。
一方で、計画段階では「発生確率が低い」「コストが高すぎる」といった理由で、大規模災害を想定した備えは後回しにされがちです。
行政・企業・地域がそれぞれの立場でリスクを想定し、相互に連携して備えるためには、共通のフレームワークが必要とされます。

そうした課題に対し、ハードだけでなくソフト・人・組織を含めた国全体の対応力を強化するという視点から生まれたのが「国土強靱化基本計画」です。

キーワードで整理する

このテーマに関するキーワードは 国土強靱化基本法・国土強靱化基本計画 です。

  • 国土強靱化基本法は、災害が発生しても致命的な被害や機能不全を回避できるよう、あらかじめ備えることを目的に2013年に制定されました。単なる防災ではなく、「事前防災・減災」の考え方に基づいて、継続的な国づくりを進める枠組みです。
  • 国土強靱化基本計画は、基本法に基づき策定された政府全体の中長期方針であり、平時・非常時の両面から各主体の行動や優先順位を整理しています。
     特に、「大規模自然災害等を対象とし、原子力災害や戦争行為等は対象外」と明記されています。

このように、対象とする災害の範囲や基本的な方針を踏まえた上で、施策や地域計画が位置付けられます。

実際の問われ方

この問題では、国土強靱化基本法および基本計画の趣旨に照らして「最も不適切な記述」を選ぶ形式となっています。

ポイントは以下の通りです:

選択肢評価軸補足
×原子力事故を対象とする旨の記述は、基本計画に反するため不適切。
②〜⑤いずれも基本法・ガイドラインの趣旨に整合する内容。

文章の正しさだけでなく、「何を対象としている計画か」「どの範囲を除外しているか」といった文脈理解が問われています。

試験での留意点

  • 「防災基本計画」や「BCP」との目的や適用範囲の違いに注意が必要です。国土強靱化基本法は国家レベルのシステム維持を主眼としています。
  • 「自然災害」は対象ですが、「原子力災害」や「テロ行為」は対象外とされている点は直感と逆であり、誤解されやすい項目です。
  • 正しい記述の中にも抽象的で一見曖昧な表現が含まれるため、「文の印象」ではなく「制度の根拠」に基づいて判断することが求められます。

このテーマは、今後の「レジリエンス向上」や「地方創生」「インフラ老朽化対策」とも密接に関係してくる論点であり、他分野との接続的理解が重要です。

Ⅰ-1-28:システム安全工学手法の理解と適用

背景にある問い

新しい設備や自動化ラインの導入にあたり、
「どこにリスクがあるのか」
「どの段階で不具合が起きやすいのか」を事前に評価する必要があります。
しかし、現場からは「これまで問題なかった」
「マニュアル通りにやれば大丈夫」といった経験則が優先され、安全評価が形式的になってしまうこともあります。

そうした中で、万が一を前提としたシステム的なリスク評価が不可欠となります。
つまり、「通常通り」であってもリスクは存在しうるという視点が、安全設計における出発点といえます。

キーワードで整理する

ここでのキーワードは、FMEA、VTA、ETA、HAZOP、THERPといったシステム安全工学の分析手法です。
それぞれが異なる視点でリスクを評価するため、誤用や混同が起きやすい分野です。

手法概要(要点)
FMEA(Failure Mode and Effects Analysis)機器や構成要素の故障モードを洗い出し、システム全体への影響度を評価する。設計段階での故障予測に有効。
VTA(Variation Tree Analysis)異常・逸脱が起きた場合に、どのように波及するかを階層的に分析する手法。通常通りの操作を前提にするわけではない。
ETA(Event Tree Analysis)ある事象が発生した後に、どのような結果へ分岐していくかを論理的に展開する手法。シナリオ分析に近い。
HAZOP(Hazard and Operability Studies)計画中のプロセスや操作手順を対象に、”多い”、”少ない”、”逆”などの観点からリスクを洗い出す。
THERP(Technique for Human Error Rate Prediction)人の操作ステップに着目し、ヒューマンエラーの発生確率を予測するための定量的手法。

本問で不適切とされたVTAに関する記述では、「作業がすべて通常通りに進行していれば事故は起きない」と記されていますが、VTAはまさに「通常でない場合=逸脱」から影響を分析する手法であり、記述は誤りです。

実際の問われ方

この設問では、各手法の定義や特徴を理解したうえで「最も不適切な記述」を選ばせる形式です。

  • 略語の意味を機械的に覚えるだけでは不十分であり、どのような場面で、どの視点から分析するかを押さえておく必要があります。
  • 特にVTAやETAのように、「分岐」や「逸脱」を扱う手法は、誤解されやすいため注意が必要です。

試験での留意点

  • 「通常通り=安全」ではないという視点を持つことが、リスクマネジメント全体に通じる重要な考え方です。
  • VTAとETAは似ていますが、VTAは逸脱の発生源、ETAは事象の結果に着目している点で異なります。順序と視点の違いを意識しておくと混同を防げます。
  • HAZOPでは、”more / less / no / reverse”などのガイドワードがキモです。出題でもこれらに着目した記述が正誤判断のカギになります。

このテーマは、設計・保守・品質管理のどのフェーズでも問われるため、理解が浅いと多分野で誤用を誘発しやすい項目です。シンプルな記述ほど慎重に読み解く姿勢が求められます。

Ⅰ-1-29:AI利活用ガイドラインと判断の透明性・説明責任

背景にある問い

日々の業務や行政サービス、さらには医療・教育の現場にまで、AIの導入が進んでいます。
しかし、あるとき突然「AIがこう判断したので」という理由で、融資が却下されたり、採用選考から落とされたりするケースが現れています。
その判断の根拠は示されず、問い合わせても「ブラックボックスです」と言われるだけ。
果たしてそれは本当に公平な仕組みといえるのでしょうか。

技術が進展する一方で、判断過程の説明性個人の権利の保護といった観点が、社会的な課題として急浮上しています。

キーワードで整理する

ここで注目すべきキーワードは、AI利活用ガイドラインにおける「AIによる判断」とその透明性・信頼性です。

AI利活用ガイドラインとは、内閣府の「ネットワーク社会推進会議」によって策定された指針であり、AI技術の社会実装に際し、倫理・法制度・社会的影響に配慮しながら活用を進めるための基本的枠組みを示しています。

特に重要なのは以下の視点です:

  • AIによる判断は、結果に重大な影響を及ぼす可能性があるため、「説明可能性(Explainability)」が求められる。
  • 想定される権利侵害のスケールや頻度を踏まえ、基準や透明な手続きをあらかじめ設けておくことが必要。
  • 判断の自動化においても、最終責任の所在を曖昧にしないことが原則とされている。

このガイドラインでは、「AIによる判断は、事後的に権利が損なわれたり、低下する恐れがあるため、あらかじめ基準等を整備する必要がある」と明記されています。

実際の問われ方

この問題は、AI利活用ガイドラインの趣旨を前提にした「最も不適切な記述」を選ぶ形式です。

  • 各選択肢は、ガイドラインで示された懸念点や方向性を踏まえた内容で構成されています。
  • 正解肢②では、「AIによる判断は、すべて問題がないと考えられている」かのような記述があり、ガイドラインのリスク重視姿勢と反するため、誤りとされています。

つまり、「AIが使われるほど正確・公平」といった過信に対する注意喚起が、この設問の本質です。

試験での留意点

  • AI=正確・効率的=安全といった直感的な理解では誤答につながりやすく、倫理的・制度的な側面を含めて読む力が問われます。
  • 「判断の自動化」と「責任の所在」「説明可能性」はセットで考える必要があります。機能と倫理の接続的理解が重要です。
  • 用語としての「AIガバナンス」や「説明責任」「バイアス」「プライバシー」なども関連概念として整理しておくと理解が深まります。

このテーマは、今後の技術動向や政策形成に直結する重要領域であり、単なる技術的知識だけでなく、社会的影響を踏まえた思考が求められます。

Ⅰ-1-30:契約不適合責任と買主の救済手段(2020年民法改正)

背景にある問い

設備や資材を購入した際、「数量が足りない」「仕様と違う」「傷があった」といったトラブルは、日常的に発生し得ます。
そのようなとき、購入者側が「代替品を要求できるのか」「損害賠償を請求できるのか」「返品できるのか」など、対応の可否や範囲が曖昧で、紛争に発展するケースもあります。

従来の「瑕疵担保責任」は、買主保護が不十分で、かつ用語もわかりづらいものでした。
この課題に対応するため、2020年4月の民法改正により「契約不適合責任」という新しい仕組みが導入されました。
契約内容に適合しない目的物が引き渡された場合の売主の責任と買主の権利が、より明確に整理されたのです。

キーワードで整理する

この問題で重要なキーワードは 契約不適合責任買主の救済手段 です。

契約不適合責任とは、売主が契約内容と異なる目的物(例:数量不足、品質不良、性能違いなど)を引き渡した場合に負う責任のことです。
2020年の民法改正で「瑕疵担保責任」が廃止され、代わりにこの概念が導入されました。

買主には以下のような救済手段が認められています:

救済手段売主に責任がある場合買主も原因に関与している場合買主のみに責任がある場合
損害賠償請求できるできる(ただし過失相殺あり)できない
契約解除できるできるできない
追完請求できるできるできない
代金減額請求できるできるできない

また、買主が「不適合」に気づいた場合は、1年以内に通知する義務(通知義務)があります。

実際の問われ方

この設問では、民法改正後の契約不適合責任において、「売主・買主の帰責事由の有無」に応じて、どの救済手段が可能かを問う形式です。
3つの条件(売主に帰責、双方に帰責、買主に帰責)における可否を整理する思考力が求められます。

選択肢は以下のように構成されます:

救済手段売主に責任あり双方に責任あり買主に責任あり
損害賠償できるできるできない
解除できるできるできない
追完請求できるできるできない
減額請求できるできるできない

この表を基にすれば、正解肢(①)のような正確な分類が可能となります。

試験での留意点

  • 「契約不適合責任」は瑕疵担保責任と置き換えられた制度であり、名称だけでなく範囲も拡大している点を理解しておく必要があります。
  • 「買主にのみ責任がある場合」は全ての救済手段が不可となる点が直感と逆になりやすく注意が必要です。
  • **「通知期間は1年」**という要件も周辺知識として押さえておくと、関連問題での対応力が高まります。

このテーマは、取引リスク・契約交渉・コンプライアンスなど複数分野と関係する重要領域であり、法務的リスク管理にも通じる視点が問われます。

Ⅰ-1-31:労働安全衛生法に基づく安全配慮と関係者の責任

背景にある問い

新しい装置や設備を導入する際、「安全対策は使用者側でやるもの」「納品する側には関係ない」といった空気が職場に漂うことがあります。
しかし、実際にはその設備を使う作業者の安全が確保されていなければ、労災のリスクは誰の立場であっても現実化します。
設計者・製造者・輸入業者・発注者・施工者など、どの立場にあっても「自分の役割は終わった」と言い切れる環境では、安全文化は育ちません。

**「誰の責任か?」ではなく、「誰が何を防げるか?」**という視点の切り替えが、現代の安全管理では問われています。

キーワードで整理する

この問題で重要となるキーワードは 労働安全衛生法の関係者責任 です。

労働安全衛生法(安衛法)は、労働災害を防止し、労働者の安全と健康を確保するための基本的な法律です。
この法律では、単に事業者だけでなく、関連する設計者・輸入業者・建設発注者などにも安全配慮の努力義務や実施責任
が定められています。

例えば以下のような条文構造が存在します:

  • 第3条:事業者に対する安全・健康確保義務(最低基準にとどまらず、向上の努力も求められる)
  • 第2条第2項:機械・設備の設計・輸入業者等に対して、安全性の確保に努める義務
  • 第3条の2:建設工事発注者に対して、安全に配慮した条件整備の義務
  • 第59条:教育の実施義務(ただし機械製造業者には該当せず、事業者側の義務)

本問の②の記述(「機械設計者・製造者・輸入者に対し、定期的に安全又は衛生のための教育を行う義務がある」)は、条文にはない義務を記載しており、誤りです。

実際の問われ方

この問題は、安衛法における誰に、どのような責任があるかを正確に理解しているかを問うものです。
選択肢はすべて一見もっともらしく記述されていますが、条文の有無を確認できるかがポイントです。

  • ①③④⑤は安衛法に明記されているか、条文に準じた記述である
  • ②は教育義務を過剰に拡大解釈しており、法文と不整合

試験での留意点

  • 条文にあるかのような記述であっても、対象者や義務内容の誤りが出題されることがあります。
  • 教育義務(第59条)は使用者側の責務であり、設計者・輸入業者に直接課されているわけではありません。ここを誤ると典型的なミスとなります。
  • 「努力義務」と「法的義務(実施義務)」の混同にも注意が必要です。

この論点は、設計段階からのリスク低減や製品安全マネジメントとも深く関わっており、設計・調達・建設等の各工程における責任分担の理解が総監的視点として求められます。

Ⅰ-1-32:JIS Q 31000に基づくリスクマネジメントの構成要素

背景にある問い

ある設備の設計において、工程途中での変更を判断する際、担当者の経験だけでリスク判断をしてしまい、最終的に品質不良や工程遅延につながった──。
あるいは、新事業を開始するにあたって、外部環境やサプライチェーンの変動が軽視され、開始直後に中断を余儀なくされた──。
このように、「リスクへの対応」は特定の専門部署の仕事ではなく、組織全体の意思決定やマネジメントプロセスと密接に関係しています。

つまり、リスクマネジメントは「何かあったときの備え」ではなく、日常的に戦略や業務と統合されているべき機能だという発想が求められています。

キーワードで整理する

この設問で問われているキーワードは JIS Q 31000:2019(リスクマネジメント指針) における主要概念です。

JIS Q 31000 は、リスクマネジメントを組織全体の意思決定に組み込むための枠組みを示した国際標準(ISO 31000の日本語版)であり、以下のようなキーワードが軸になります。

  • リーダーシップ:組織のトップが、リスクマネジメントの方針や文化を主導する役割を果たす。
  • マネジメントシステム:リスクマネジメントを他の経営管理と統合的に運用するための仕組み。PDCAとの連動が基本。
  • ステークホルダ:リスク判断や対応が影響を及ぼす関係者。利害関係者の視点を組み込むことが不可欠。
  • 戦略:組織の目的や長期方針に沿った意思決定を行う上で、リスク対応は計画の根幹に位置付けられる。

本問では、これらの概念を文脈に合わせて適切に選び取ることが求められています。

実際の問われ方

本問は、JIS Q 31000の「序文」に記載されている文章の穴埋め型であり、以下のような構造で問われます:

  • 【ア】:リーダーシップ(「意思決定」との結びつき)
  • 【イ】:マネジメントシステム(「組織統治」と統合される枠組み)
  • 【ウ】:ステークホルダ(「改善」に資する視点)
  • 【エ】:戦略(「すべての活動とのやり取り」への対応)

これらを文脈に照らし合わせ、総合的に最も適切な選択肢(①)を選びます。

試験での留意点

  • キーワードの定義ではなく「配置文脈」が問われる形式では、意味を理解していても使われ方に慣れていないと誤答しやすくなります。
  • リーダーシップとマネジメントシステムの混同が起こりがちですが、前者は「方向性・決定の担保」、後者は「仕組みと連携」の意味で出てくる点に注意が必要です。
  • ステークホルダの位置づけは、「価値創造」「情報共有」「説明責任」に関係しやすいため、改善や相互理解と絡めて整理すると定着しやすくなります。

この論点は、リスク管理を「防衛的対応」ではなく「組織価値の一部」として統合する考え方を象徴しており、技術系・非技術系を問わず、総監での重要項目といえます。

社会環境管理

Ⅰ-1-33:コンパクトシティと地球温暖化対策

背景にある問い

都市政策やインフラ整備を議論しているとき、
「分散型社会の方が災害時に強いのではないか」
「地方の活性化のためには拠点を増やした方がよい」といった意見が出ることがあります。
しかし一方で、CO2削減やエネルギー効率を考えると、分散は本当に合理的な選択なのでしょうか。
勤務先が郊外に分散していることで通勤時間が増加し、物流コストやインフラ維持費がかさむ。
これに疑問を持つ技術者も少なくありません。
では、「都市機能の分散」と「温暖化対策」との関係をどう理解すべきでしょうか。

キーワードで整理する

この背景にあるのが コンパクトシティ です。

都市機能を集約することで移動距離を短縮し、公共交通やエネルギー利用の効率を高める都市計画の考え方です。
日本の多くの自治体で採用が進められており、環境負荷軽減、少子高齢化への対応、まちづくりの効率化といった複数の政策目的に資する施策とされています。

  • コンパクトシティ:都市機能を集約し、移動やインフラの効率化を図る都市構造
  • ネットワーク型コンパクトシティ:集約した都市を交通ネットワークで接続し、全体の効率と利便性を確保する考え方
  • 集約型 vs 分散型:エネルギー効率や環境負荷の観点では集約型が有利とされる傾向がある

実際の問われ方

本問題では、「温暖化対策として都市機能の分散化を進める」との記述①が誤りであることを問われています。
これは、コンパクトシティの理念と真逆の方向であり、温暖化対策としては適切でないことが問われています。

選択肢を通じて、以下の観点が問われました:

観点内容
交通・物流の効率化トラック輸送のCO2削減、モーダルシフト等
住宅性能ZEH、断熱住宅の普及による省エネ
道路政策環状道路・立体交差による渋滞緩和
海運政策国際的なCO2規制対応と技術開発

都市政策における「分散化」と「集約化」の違いを把握していないと、①のような誤認をしやすくなります。

試験での留意点

  • 分散化=災害対策や地方創生の文脈と混同しないこと
    地方分散が必ずしも温暖化対策にはならない点に注意が必要です。
  • コンパクトシティはCO2削減に寄与する施策であることを押さえておく
    とくに、都市政策と環境政策の交差領域で頻出のテーマです。
  • 「物流効率化」「エネルギーマネジメント」「モーダルシフト」など、交通インフラや都市構造に関する周辺キーワードも合わせて整理しておくと、他の問題にも応用が利きます。

必要であれば、他の選択肢の背景にあるキーワード(モーダルシフト、ZEH、スマートインフラなど)も別途解説可能です。ご希望あればお知らせください。

Ⅰ-1-34:再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT制度)

背景にある問い

電力コストが年々上昇するなか、「再エネ導入が電気料金を押し上げているのではないか」という声を耳にすることがあります。
一方で、事業者側からは「導入の初期投資が大きく、採算が取れる仕組みがないと参入できない」という現実もあります。
このように、再生可能エネルギーを促進しつつ、費用負担を誰がどのように担うのかという点で、制度設計は極めて重要です。
現場で「再エネ賦課金って何?」「価格って誰が決めてるの?」と聞かれたときに、技術者として制度のしくみをどう説明できるかが問われます。

キーワードで整理する

この制度は 固定価格買取制度(FIT制度) と呼ばれています。

  • FIT制度(Feed-in Tariff):再生可能エネルギーで発電された電力を、一定期間・一定価格で電気事業者が買い取ることを義務づける制度
  • 対象となるエネルギー源:太陽光、風力、水力、バイオマス、地熱など
  • 買取費用の原資:国民が電気料金とともに負担する 賦課金
  • この賦課金は「再エネ賦課金」として全国一律に設定され、電気料金に上乗せされる形で回収されている

価格(単価)は発電の種類や設備の規模などに応じて 経済産業大臣 によって 毎年度定められる価格(調達価格) が決定されます。

実際の問われ方

本問では、FIT制度の構成要素である用語を正確に組み合わせる設問形式です。

空欄意味するもの正答(③)
買取の契約方式一定価格
回収手段賦課金
負担範囲全国
単価の形式種類ごと
調整・決定権者経済産業大臣

ポイントは「全国一律」「種類ごとの単価」「毎年価格改定」「負担は国民全体」「所管は経産省」という制度設計にあります。

試験での留意点

  • 税ではなく賦課金
     税金と誤解されやすいが、あくまで「電気料金への上乗せ」であり、法的には賦課金という独立した形態で徴収されています。
  • 全国一律の価格設定
     地域ごとに価格が異なるわけではなく、全国共通です。例外的に地熱などでは柔軟な設計もありますが、基本は全国一律。
  • 環境大臣ではなく経産大臣が主導
     再エネ推進といえば環境省と思われがちだが、制度設計・価格決定は経産省の所管です。ここを混同しないよう注意が必要です。
  • 単価は「発電種別」で異なるが、ユーザー負担は一律
     太陽光とバイオマスではコスト構造が異なるため単価も異なりますが、一般家庭が支払う賦課金にはそれらの差は反映されません。

他のエネルギー制度(FIP制度や容量市場など)とあわせて整理しておくと、制度間の比較問題にも対応しやすくなります。必要があればそちらもご案内可能です。

Ⅰ-1-35:特定外来生物法と生態系リスク管理

背景にある問い

業務で自然環境やインフラ開発に携わっていると、
「この植物、外来種らしいけど伐っていいのか」
「外来魚が繁殖して漁業に影響が出ている」といった場面に直面することがあります。
外来生物は景観や水質、生態系だけでなく、農林水産業や人の健康にも影響を及ぼすことがあり、放置すれば社会的・経済的コストが大きくなります。
しかし一方で、
「外来生物すべてが規制対象なのか?」
「愛玩動物として飼育している個体はどうなるのか?」といった誤解も多く、規制の全体像を知っておく必要があります。

キーワードで整理する

ここで押さえておくべき制度は 特定外来生物法(外来生物法) です。

これは、外来生物のうち特に生態系・人の生命・農林水産業等に被害を及ぼす恐れのある生物を「特定外来生物」として指定し、以下の行為を規制する法律です。

  • 特定外来生物:外来種の中でも、侵略性や被害実績に基づき政令で指定されたもの
  • 規制対象行為:
    • 飼養・栽培(ペット・観賞用含む)
    • 保管・運搬・譲渡・販売
    • 輸入・野外への放出
  • 例外的に許可制で飼育等が認められることもあるが、放流は禁止
  • 対象は基本的に動物・植物であり、病原体やウイルス等の微生物は対象外

また、外来生物法では「交雑種」や「国内繁殖個体」であっても特定外来生物に含まれる場合があり、輸入経路にかかわらず規制対象となる点も注意が必要です。

実際の問われ方

本問では、特定外来生物に関する具体的な運用の記述について、もっとも不適切な選択肢を選ばせる形式です。

以下のようなポイントが押さえられています:

選択肢内容正誤
① 交雑種は対象外である誤(対象になる)
② 非意図的に輸入された個体は指定外である誤(経路にかかわらず対象)
③ 特定水域での生存は放流扱いに該当しうる
④ 飼育は原則禁止だが個体ごとに許可可能
⑤ ウイルス・菌類も特定外来生物に含む誤(法の対象外)

とくに⑤の記述が明確に誤りであり、病原微生物は感染症法等の別制度で管理されていることを知っていれば、見抜きやすい選択肢です。

試験での留意点

  • 外来種=すべて規制対象ではない
     あくまで「特定外来生物」として指定されたものだけが規制対象です。
  • 経路に関係なく規制対象になる点に注意
     意図的輸入でなくとも、貨物等に紛れて侵入した場合も規制の対象です。
  • 微生物は含まれない
     細菌・ウイルス・寄生虫などの微生物はこの法律では扱われません。混同に注意が必要です。
  • 許可制の存在を正確に理解しておく
     特定外来生物でも、学術研究や展示目的で許可を受けて飼養・展示が行われている事例があります(例:動物園など)。

外来生物に関する法規制は、環境保全と社会的影響の両面に関わるため、総監的視点からも重要な領域といえます。他の環境法(例えば外来種被害防止行動計画や生物多様性基本法)との接点を意識しておくと理解が深まります。

Ⅰ-1-36:バーゼル条約と有害廃棄物の国際移動規制

背景にある問い

近年、国内で処理しきれないプラスチックや電子廃棄物が海外に輸出され、現地で不適切に野積みや焼却処理されている問題が国際的に報道されるようになりました。
一方で企業側からは、
「リサイクル可能な資源なのに輸出できないのか」
「相手国が受け入れると言っているのになぜ規制があるのか」といった声も聞かれます。
資源の循環と環境保全のバランスをどう取るか。
こうした疑問の背後には、国際的な取り決めに基づくルールとその現状への理解が求められます。

キーワードで整理する

ここで押さえるべきキーワードは バーゼル条約 です。

  • バーゼル条約:1989年採択、1992年発効。正式名称は「有害廃棄物の国境を越える移動及びその処分の規制に関するバーゼル条約」
  • 背景:先進国からの有害廃棄物が途上国に無通告で持ち込まれ、健康被害・環境汚染が深刻化したことを契機として設立
  • 主な規定:
    • 輸出には 相手国の事前同意(PIC) が必要
    • 不適切処理を防ぐため、最終処分責任の明確化
    • 処分施設を有する国における自国処理の原則(発生国責任)
  • 日本ではこの条約に基づき、バーゼル法(特定有害廃棄物等の輸出入等の規制に関する法律)が制定されている

また、プラスチック廃棄物のような「資源にも廃棄物にもなる」物質に関しても、環境保護の観点から近年は規制対象とされてきています。

実際の問われ方

この問題では、条約の規定内容としてもっとも不適切な記述(④)を選ばせる形式です。

選択肢内容評価
① 条約の背景と責任所在正しい
② 処分困難な国への持ち込み規制正しい
③ 条約の柔軟性(非締約国含む)正しい
④ 輸入量と輸出量の均衡誤り(現実とは逆)
⑤ プラ廃棄物と相手国の同意正しい(2019年改正による)

④のように「近年は輸出量が輸入量を下回っている」とする記述は誤りです。日本を含む先進国では、国内の処理能力不足やコストの問題から、リサイクル名目で大量の廃棄物が東南アジア諸国などへ輸出されており、輸出超過が現実となっています。

試験での留意点

  • バーゼル条約=輸出規制条約ではなく、移動と処分の包括的管理
     輸出・輸入どちらかに偏った理解では不十分です。
  • 資源物と廃棄物のあいまいな境界に注意
     金属スクラップ、プラスチック、電気電子機器などは特にグレーゾーンとなりやすく、条約上は「環境上適正に管理されるか否か」が判断基準です。
  • 相手国の同意(PIC)なしに出すのは条約違反
     「受け入れてくれるなら問題ない」といった安易な判断は通用しません。
  • 条文ベースではなく、運用実態との乖離に注意した記述が誤答となりやすい
     今回のように「日本の輸出が抑制されている」といった実態と逆の選択肢は要注意です。

このテーマは、資源循環、国際条約、環境マネジメントの交点に位置しており、今後も廃プラ問題、e-waste(電子廃棄物)、リサイクル政策の動向と合わせて注視すべき分野といえます。

Ⅰ-1-37:防災情報の5段階レベルと避難行動

背景にある問い

豪雨のたびに「避難指示」「警戒レベル3」「全員避難」などの情報が飛び交うが、実際に「いつ・どこに・どう避難すべきか」が判断できずに戸惑う人が多いのが現実です。
特に災害対策に関わる技術者や管理者の立場では、「気象警報=避難開始」と早合点せず、避難情報の段階性や発令主体を理解しておく必要があります。
現場の混乱を避け、冷静な対応をとるには、その制度と用語の意味を正確に把握しておくことが重要です。

キーワードで整理する

この問題の根幹には、警戒レベルと避難情報の体系があります。

  • 警戒レベル:住民が避難行動を取る際の判断基準を明確にするため、内閣府が導入した5段階の情報区分(2019年に整備)
  • 発令の内容と意味は以下の通り:
警戒レベル行動発令内容(例)
レベル5命を守る行動災害発生(緊急安全確保)
レベル4全員避難避難指示(旧 避難勧告+避難指示)
レベル3高齢者等避難高齢者や要支援者の避難を促す
レベル2避難行動の確認大雨注意報等
レベル1災害への備え気象情報など早期注意喚起
  • 避難情報の発令主体は市区町村であり、気象庁が発表する情報(例:大雨特別警報、線状降水帯発生情報など)を基に判断されることが多い

実際の問われ方

本問では、異常気象や防災に関する記述のうち、制度上の正誤理解が問われています。
とくに不適切だったのは、選択肢⑤の「警戒レベル4では『危険な場所から全員避難』と『避難指示』である」という記述。

これは正しいがレベル設定が逆で、レベル4は「避難指示」単体であり、「全員避難」行動とセットで定義されます。
一方、「危険な場所からの避難」+「高齢者等避難」はレベル3に該当します。

試験での留意点

  • 避難勧告は廃止済み
     2021年の制度改正で「避難勧告」は廃止され、「避難指示」に一本化されました。過去問では旧制度の記述も見かけるため注意が必要です。
  • 気象庁と自治体の役割分担を混同しない
     気象庁は「予測・警報等の提供」、避難指示などの発令は自治体の責務です。
  • 数値情報と防災情報は独立に管理されている
     例えば「1時間50mm以上の雨」というような数値と、避難行動情報(レベル区分)は直接は結びつかず、相互に判断材料を提供する関係です。
  • レベル5は避難ではなく「命を守る行動」
     すでに災害が発生している状況で、避難行動では間に合わない段階である点に注意が必要です。

この分野は、防災・減災分野の重要テーマであり、近年の気象災害の激甚化に伴って出題の機会が増えています。避難情報の体系、都市の防災計画、ハザードマップの活用など、実務との接点を踏まえた理解が求められます。

Ⅰ-1-38:自動車排ガス規制と大気汚染物質の種類

背景にある問い

業務で都市インフラや建築物の設計・解体に関わっていると、
「この地域は排ガス規制対象だからディーゼル車は入れないでください」
「騒音と振動は基準内ですか」といった行政側からの指摘を受けることがあります。
また、最近では微小粒子状物質(PM2.5)や黄砂、光化学オキシダントなど、目に見えにくい環境リスクへの配慮が求められています。
これらは工事計画や車両運用だけでなく、都市空間そのものの設計や評価にも影響を及ぼします。

キーワードで整理する

この問題の根幹には、自動車排ガス規制と大気汚染物質の分類があります。

  • NOx・PM法(自動車NOx・PM法):ディーゼル車を中心に、窒素酸化物(NOx)粒子状物質(PM) の排出を抑制するための法律。一定地域内で基準を満たさない車両の使用を制限。
    • 対象:首都圏・近畿圏・中京圏の特定地域
    • 適用対象:ディーゼル乗用車および貨物車
    • ガソリン車、LPG車は対象外
  • PM2.5(微小粒子状物質)
    • 大気中に浮遊する粒径2.5μm以下の極めて小さな粒子
    • 直接排出もあれば、大気中で化学反応により生成されるものもある(例:SOx、NOx、VOCなどの前駆体)
    • 健康影響:呼吸器・循環器への負荷が大きく、長期暴露により疾患リスクが増加
  • VOC(揮発性有機化合物)
    • 有機溶剤、塗料、燃料等から蒸発する気体
    • 光化学スモッグの原因物質の一つ
  • 環境基本法に基づく大気汚染規制
    • 一般環境に対する影響を防ぐため、国が設定した環境基準に基づき、各種法令が施行されている

実際の問われ方

この問題では、大気汚染に関する記述のうち、不適切なもの(①)を選ばせる設問です。

選択肢内容ポイント
① 騒音規制地域と車両区分の誤解×:LPG車はNOx・PM法の対象外
② 建物解体時の石綿事前調査義務
③ PM2.5とガス状前駆物質の関係
④ NOx・PM法の対象範囲○:ガソリン車・LPG車は対象外
⑤ 土壌汚染対策法の汚染分類

選択肢①のように、「全車両が一律に規制される」と誤解していると、不正解に導かれてしまいます。

試験での留意点

  • ディーゼル車だけが対象となる規制がある
     ガソリン車やLPG車は一部の規制対象外となるケースが多い(特にNOx・PM法)
  • PM2.5は一次排出と二次生成の両面を持つ
     直接排出(一次粒子)と、ガス状物質からの変換(硝酸塩・硫酸塩など)という二重性を意識しておくと理解が深まる
  • SOx・NOx・VOCは気体であることに注意
     PMとは性状が異なるが、PM2.5の前駆体となる点で結びついている
  • 環境法令は“規制の対象”“対象物質”“法的根拠”の三点セットで覚えると混同を避けやすい

環境問題は、技術的な知識と制度的な理解が交差する領域です。感覚的な知識では不十分であり、法令や基準、対象の正確な整理が問われることが多いため、構造的な学習を意識して臨む必要があります。

Ⅰ-1-39:環境影響評価(環境アセスメント)の手続と義務

背景にある問い

大規模開発を計画しているとき、
事業者の立場として
「環境アセスってどこから必要なんだっけ?」
「説明会っていつやればいいの?」
「知事との調整が必要になるのはどの段階?」といった疑問が生じます。

アセスメントは単なるチェックリストではなく、地域社会への説明責任と環境保全の調整手段である以上、形式的ではない理解が求められます。
とくに近年は住民参加や計画段階配慮が重視されており、義務的手続との区別が曖昧なまま手続きを進めると、後々トラブルや訴訟につながるリスクもあります。

キーワードで整理する

ここで押さえておくべき制度は 環境影響評価法(環境アセスメント法) です。

  • 第一種事業・第二種事業
    • 第一種事業:対象規模が大きく、法定的にアセスメントが義務づけられる(例:空港、ダム、大規模道路など)
    • 第二種事業:地方公共団体が個別に判断し、必要と認めた場合にアセスメント対象となる
  • アセスメント手続の流れ(第一種事業):
手続段階主な行為事業者の義務
スクリーニング必要性の判断必須(知事等との調整)
評価方法書の作成調査・予測・評価の方法を提示公告・縦覧・意見聴取
準備書の作成調査結果と環境保全措置をまとめる住民説明会は努力義務(必須ではない)
評価書の作成最終確定文書知事等への提出、事後調査へ進む
  • 住民説明会は準備書の段階で任意的(努力義務)
  • スクリーニングの際には市町村長等の意見聴取が必須
  • 評価書作成後は、必要に応じて事後調査・環境保全措置報告が求められる

実際の問われ方

この問題では、環境アセス法における事業者の義務について、最も不適切なもの(③)を選ばせる形式です。
問題となった③は、「準備書を作成したときに説明会を開いて意見を求めなければならない」と記載していますが、これは義務ではなく努力義務にすぎません。

選択肢内容ポイント
① スクリーニング対象範囲の検討○:法的義務
② 方法書段階での意見聴取○:義務
③ 準備書段階での説明会開催が必須と誤認×:努力義務
④ 評価書提出後の手続○:適切
⑤ 事後調査結果の報告義務○:法に定めあり(環境保全措置評価等)

試験での留意点

  • 義務と努力義務の違いに敏感になること
     準備書段階での説明会開催は「望ましい」措置であり、法的強制ではありません。
  • 第一種と第二種の区別を明確に
     スクリーニングが必要かどうか、どの手続に入るかを誤解しやすい。
  • 用語の混同に注意
     準備書=計画段階の成果物、評価書=最終報告文書。評価書を出したら一連のアセス手続が完了するという誤解も生じやすいため注意が必要です。
  • 知事、市町村長、関係行政機関の意見聴取の義務タイミングを押さえること

このテーマは都市開発、インフラ計画、エネルギー事業などの実務と密接に関わっており、制度の構造と社会的背景の両面から整理しておくと、複雑な選択肢にも対応しやすくなります。

Ⅰ-1-40:ESG投資と投資手法の多様性

背景にある問い

企業活動において「脱炭素への対応」「ダイバーシティの推進」「ガバナンスの強化」などが求められる中で、「こうした活動は企業価値とどう結びつくのか」「投資家は実際にどのような判断で資金を動かしているのか」という疑問が生じます。
実務に携わる立場としては、単なるイメージでの“社会貢献”と、本質的な“価値創造”との区別を意識する必要があります。
とくに、ESG投資はその両者を橋渡しする動きであり、資金の流れが企業経営そのものに影響を与える点で重要です。

キーワードで整理する

ここで押さえておくべきのは ESG投資 です。

  • ESG投資(Environmental, Social, Governance):環境(E)、社会(S)、ガバナンス(G)という非財務情報を考慮して行われる投資のこと。企業の長期的な持続可能性やリスク管理能力を評価対象に含める。
  • 主な投資手法:
手法名概要
ネガティブ・スクリーニング特定の業種・行動(例:タバコ、武器)を基準に除外する
ポジティブ・スクリーニングESG評価が高い企業を選定して投資する
インパクト投資社会的・環境的インパクトを意図して行う投資(リターンも追求)
エンゲージメント企業に対し建設的な対話や提案を通じて改善を促す
ESGインテグレーション財務指標とESG要素を総合的に分析して投資判断に反映
  • ネガティブ・スクリーニングは企業との対話によって改善を促す手法ではなく、「投資除外」を目的としたフィルターです。一方、エンゲージメントは保有しながら改善提案を行う手法であり、両者は混同されやすいため注意が必要です。

実際の問われ方

本問題では、ESG投資の定義・目的・手法について問われ、不適切な記述(⑤)を選ばせる形式です。
⑤では、「ネガティブ・スクリーニングは企業に改善を促す手法」と誤解して記載されていますが、これは本来“投資対象から除外”する手法であり、改善促進を意図するエンゲージメントとは目的が異なります。

手法投資対象主な目的
ネガティブ・スクリーニング除外社会的・倫理的リスクの回避
エンゲージメント継続保有企業の行動変革を促す

試験での留意点

  • スクリーニングとエンゲージメントは目的が異なる
     「選別して除外する」のか「保有して改善を促す」のかを混同しないことが重要です。
  • ESG投資は単なる倫理的投資ではなく、リスク管理と収益確保が両立される仕組み
     投資家の視点では、ESGは“リスク低減”と“長期的収益源”の両方を兼ね備えた判断軸です。
  • ESGインテグレーション=情報加味型の主流手法
     特定のテーマに偏る投資ではなく、すべての分析プロセスにESGを織り込むという点で現在の主流です。
  • グリーンボンド・ソーシャルボンドといった金融商品との関連性も押さえておくと応用が利きます。

ESG投資は、単なる倫理投資の延長ではなく、今や企業評価の重要基準となっています。投資家側だけでなく、事業者側もこれに対応する情報開示やマネジメント体制を問われる時代であることを、理解しておく必要があります。

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