問題 と 課題(2):具体的な4つの事例

「問題」と「課題」の定義などは↓↓↓

この記事では、「問題」「課題」「解決策」の違いを、4つの具体的な事例を通じて整理しています。
業務の中でこれらを使い分けようとしたときに、どこからが“問題”で、どこからが“課題”なのか、曖昧なまま進んでしまうことは少なくありません。

各事例では、まず「問題」に注目し、背景や視点を踏まえたうえで、それに対応する「課題」と「解決策」を並列で配置しています。
とくに「問題」については丁寧に整理し、「課題」と「解決策」は直感的に理解できる範囲にとどめることで、構造をシンプルに捉えやすくしています。

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目次

事例1:プラごみ問題 ― 規制だけで本当に解決できるのか?

【背景と問題設定の視点】

近年、プラスチックごみによる海洋汚染や自然環境への影響が深刻化するなか、日本でもレジ袋の有料化、リサイクル推進、素材転換の支援など、国・自治体を挙げての対応が進められています。

ところが、こうした動きの中で**“一見うまくいっているようで、どこか噛み合っていない”という現場の声が根強く残っています。
本事例では、そのずれが
どこから生じているのか**を明確にするため、次の3つの視点から問題を捉え直しました。

【問題(3つの視点からの観察)】

■ 行政の視点から見た問題:

数値目標(リサイクル率○%など)や法制度は整備されてきたものの、制度が“運用ベース”で定着しておらず、地域や業種間で温度差が大きい。

■ 産業界の視点から見た問題:

とくに中小企業では、対応に必要な技術的・財務的な余力が乏しく、「わかっていても動けない」状態が蔓延している。

■ 生活者の視点から見た問題:

意識は高まりつつあるが、実際の購買行動では「選択肢がない」「価格が高い」といった現実に直面し、**“環境配慮したくてもできない”**状況に置かれている。

→ このように、制度と現場のギャップが三者三様に存在しており、それぞれが「自分だけが取り残されている」感覚を抱えている。
これが、この問題における“根本的な構造”です。

【課題(見出された方向性)】

この複層的な問題に対し、単一の制度・施策ではなく、それぞれの立場に応じた課題の明確化と支援の再設計が必要です。

  • 行政においては、制度の形だけでなく、実施プロセスの支援策をどう設けるか
  • 産業界では、“実行可能性のある取り組み”を持続可能な形で提示する仕組み
  • 生活者には、環境配慮が「特別な行動」にならないような選択肢と情報提供の工夫

【解決策(例示)】

  • 行政: 地方自治体と連携した「地域別実装モデル」の創出、補助金の柔軟運用
  • 産業界: 中小企業向けの素材選定支援、共同利用インフラの整備
  • 生活者: 商品表示の明確化、価格と環境負荷の見える化、啓発ではなく“納得”を促す施策

📝 補足:なぜこの構造が「問題→課題」なのか?

この事例では、「プラスチックごみが出ること」自体を問題と捉えるのではなく、
“それぞれが解決を望んでいるのに、制度・意識・手段のズレによって動きが止まっている”という状態を問題と見なしています。
そこから「どこで何が止まっているか」を整理して、初めて「課題」が浮かび上がります。

事例2:首都直下地震 ― 被害想定の向こう側にある“真の問題”とは?

【背景と問題設定の視点】

東京都心部で大地震が発生した場合の被害想定は、国や自治体によって繰り返し公表されています。
建物倒壊や火災延焼、インフラの途絶などの直接的な被害だけでなく、交通機関のマヒ、物流の停止、帰宅困難者の発生など、都市機能全体が深刻な影響を受けるとされています。

防災訓練やBCP(事業継続計画)の策定も進んではいるものの、それでもどこか「機械的な想定にとどまり、実効性に乏しい」と感じられる現実があります。

そこで本事例では、行政・企業・市民という3つの視点から、このズレを「問題」として捉え直します。

【問題(3つの視点からの観察)】

■ 行政の視点から見た問題:

被害想定やハザードマップは整備されているが、それが「現場対応のための知識」として地域に定着しておらず、計画と行動が分離している
一部では「訓練のための訓練」になっており、想定自体が形骸化しているケースも。

■ 企業の視点から見た問題:

BCPの策定は義務化や推奨が進んでいるものの、実際の社員教育やサプライチェーン対応まで手が回っておらず、“作っただけ”の状態になっている
特に中小企業では、リスク分散や遠隔拠点化に手が出せない状況もある。

■ 市民(生活者)の視点から見た問題:

情報や防災グッズは手元にあっても、具体的に「地震直後にどう動くか」がイメージできていない人が多い
「防災は大切」と理解していても、行動に結びついていない。

→ このように、「備えの情報」が“持っている”ことで完結し、“使える状態”になっていないという点が、三者に共通する問題の本質です。

【課題(見出された方向性)】

この構造的な問題に対し、求められるのは**「備えのリアリティと日常性」をどう組み込めるか**という観点です。

  • 行政においては、机上の被害想定を“現場の訓練や生活習慣”に落とし込む体制整備
  • 企業では、サプライチェーンや従業員対応まで含めた“実行性あるBCP”への再構築
  • 市民には、「いざという時の行動」を“自分ごと”としてシミュレーションする機会と手段の提供

【解決策(例示)】

  • 行政: 地域コミュニティや学校と連携した「訓練→行動→振り返り」の仕組み化、災害時DX(デジタル防災)の活用
  • 企業: 拠点分散やクラウド活用、業務継続シナリオの多様化と、従業員教育の定着化支援
  • 市民: 「1分間訓練」など日常に溶け込む防災行動、地震発生時の個人行動モデルの提示

📝 補足:この事例での“問題と課題”の見え方

この事例の特徴は、「制度は整っているのに、なぜか行動に結びつかない」という**“備えの空洞化”が問題の核となっている点です。
それを前提にすると、「課題」は単なる“情報提供”や“訓練実施”ではなく、
“情報を使える状態に変えるしくみ”をどう作るか**に集約されます。

事例3:老舗繊維工場の挑戦 ― 技術の継承か、新市場への賭けか?

【背景と問題設定】

ある地方の老舗繊維工場は、長年にわたり高品質な天然素材の生産技術を守り続けてきました。
しかし市場のニーズは変化しつつあり、同社は生体技術(バイオテクノロジー)などを応用した新しい繊維素材の開発と事業化に踏み出そうとしていました。

ここにあるのは単なる「新製品開発の挑戦」ではなく、「守るべき伝統」と「変わるべき市場環境」が企業内部で衝突する構図です。
本事例では、この内在する構造的なズレを、経営と現場それぞれの視点から捉え直し、問題と課題を明確にします。

【問題(企業内部の2つの視点)】

■ 経営層の視点:

新規事業への挑戦は不可避だと認識しているが、既存の製品品質や顧客基盤を守るためには現行技術の継承も不可欠
同時に取り組むには人材・資金・意識のすべてが分断されており、社内合意も形成しづらい状況。

■ 現場の視点:

これまで培ってきた技術に誇りを持つ一方で、急速な技術転換に対して「ついていけない」「今の仕事がなくなるのでは」という不安を抱えており、前向きな協力が得にくい。

→ 組織の中で「何を守り、何を変えるのか」が明確に共有されないまま進んでいることで、両者の意識のギャップが拡大し、足踏み状態に陥っている。
これがこの事例における本質的な“問題”です。

【課題(見出された方向性)】

このような内部的な葛藤に対して必要なのは、**「伝統と変化を両立させるプロセス設計」**です。

  • 経営側にとっての課題は、“一気に変える”のではなく、段階的に新旧を橋渡しできるような移行戦略を描くこと
  • 現場側にとっての課題は、自らの技術が新しい文脈でも価値を持ちうることを実感できるような対話と体験の場の提供

【解決策(例示)】

  • 段階的移行モデルの構築:既存製品の一部ラインを活用し、試作・検証を小ロットで実施。徐々に現場を巻き込む
  • 技術の形式知化・可視化:属人的な技能をマニュアル・動画・社内講習などで明文化し、「技術が残る安心感」を醸成
  • “未来の製品”に既存技術を組み込む視点の提示:旧来技術が「基盤」となることをデザインに示すことで、技術者が“排除される”という誤解を解く

📝 補足:この事例での“問題と課題”の見え方

この事例では、「新しいことを始めること」自体が課題ではありません。
むしろ、**“伝統を否定せずに変化を取り入れるには、どういう順序と関係性が必要か”**が課題の核心です。

つまり、課題は「挑戦」ではなく「移行」の設計。
それをどう行動可能な形で描けるかが、企業全体の前進力を決定づけます。

AI時代の技術者 ― 仕事は奪われるのか、再定義されるのか?

【背景と問題設定】

近年、建設業や製造業などの技術分野においても、AIや自動化技術の導入が急速に進んでいます。
設計・解析・計測・監視といった各領域でAIが活用されはじめ、「人が行ってきた判断や計算をAIが担う時代」が現実になりつつあります。

このような変化の中で、多くの技術者が次のような思いを抱えています:

  • 「自分のスキルが陳腐化してしまうのではないか」
  • 「自分の役割はどこに残されているのか」
  • 「AIが判断するなら、自分の責任はどうなるのか」

“技術者の立場が見えなくなる”という不安こそが、現場における本質的な問題です。
本事例では、企業側と技術者個人の双方からその問題を捉え直し、「課題」として再構成していきます。

【問題(2つの視点からの観察)】

■ 企業・組織の視点:

AI導入による効率化は進めたいが、現場の技術者が“使う側”として適応できておらず、AI導入が現場で空回りしている
また、「従来の経験則」から脱却しきれず、AIと共存する業務設計が描けていない。

■ 技術者個人の視点:

これまでの業務が“代替される対象”として扱われる中で、自分の価値や役割が分からなくなっている
再学習の機会が十分でないまま、AIによる判断を現場で「受け入れるだけ」の立場に追いやられている。

→ このように、AIの導入が“進んでいるようで進んでいない”背景には、役割の再定義がなされていないまま、形だけの技術更新が進んでいるという構造的な問題があります。

【課題(見出された方向性)】

この問題に対して求められる課題は、AIに業務を奪わせるのではなく、“AIと協働できる技術者”としての役割を再定義し、育成する仕組みを構築することです。

  • 企業側にとっての課題:
     AI活用前提の業務設計・教育体制の整備、「使える環境」の提供と「使える人材」の両立
  • 技術者個人にとっての課題:
     これまでの専門性を土台にしながら、AIを活かす“翻訳者”“判断の補助者”としての新たな視点を得ること

【解決策(例示)】

  • 企業:
     - AI導入を“ツール導入”で終わらせず、業務設計そのものを見直す(役割分担、裁量の設計)
     - 技術者を対象にした再スキル化プログラム(AI活用のためのデータリテラシー・判断補助能力)を整備
  • 技術者個人:
     - 「判断基準を構造化する」「経験則をモデル化する」など、AIと人間の役割分担を意識したスキルアップ
     - 過去の経験値を言語化・共有化し、AIに“補わせる”力を身につける

📝 補足:この事例での“問題と課題”の見え方

この事例では、単に「AIが人の仕事を奪う」ことが問題なのではなく、**“人の役割が再設計されないまま技術だけが先行している”**ことが問題です。
それを踏まえた課題は、技術者を「置き換える」対象ではなく、「変化する現場の一部として位置づけ直す」視点の導入にあります。

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